
ガマズミの実と紅葉
生きていることの辛さは人それぞれで、その人にとっての辛さの軽重を傍から見て判断することは難しい。 それでもどんなにか辛いことだろうと想像するに難くないのは、「意識のある植物状態」だ。
脳の機能は正常で意識も感情もあるのに、それを伝える機能が働かない。 筋肉を動かせなくなれば、手足は勿論、口もきけず瞬きすることも眼球を動かすことも出来ない。 直ぐ傍にいる家族に気持を伝える手段がない。
つい先日、某所でそのことに触れ、
「一番厳しいのは、頭はしっかりしているのに伝える機能が不自由になることでしょうか。 脳波を言葉に変えられるとか、テレパシー的技術が進歩すれば救われますが…」
などと書いた直ぐ後、日経新聞の夕刊(2009年11月6日(金)付)に「植物状態での意思疎通(日立製作所フェロー 小泉英明氏)」というコラムが掲載されて驚いた。
小泉氏はMRI(磁気共鳴画像装置)の開発途上でALS(筋萎縮性側索硬化症)という、脳から筋肉へ信号を伝える神経が徐々に蝕まれていく病気の患者さんに出会った。 身体中の筋肉が麻痺すれば、見た目には植物状態に陥る。 患者さん方は小泉氏に訴えた。
「やがて植物状態になった時、もし意識があったら怖い…。」
その時、小泉氏は、『その時でも、家族と意思疎通が可能な方法を考えてみます。』と約束し、この程その約束を果たす為、ここ2年半植物状態であるALS患者さん宅に、近赤外光トポグラフィ装置を運び入れ脳機能の画像化を試みた。
結果、一時記憶など、計測した5種類の脳機能が全て正常であることが判明し、ご家族、研究者ともども感動…そして、小泉氏らが玄関を出ようとした時、患者さんの部屋から飛び出してきたご主人に、こう呼び止められた。
「紅潮している家内の顔をみてやって下さい!」
自律神経の働きにより、患者さんご自身の感動、【究極の疎外感からの開放された喜び】がほんのりと頬を赤く染めたのだった。 その喜びを感じ、小泉氏は目頭を熱くされた…。
たとえ満足に動かせる筋肉への伝達機能があっても、自分の気持を伝えることは難しい。 そしてそのもどかしさから、思わず思いもしない表現方法をとってしまうことさえある。 人はつくづく、
「自分を分かって欲しい生き物」
なのだと思う。 分かって欲しいけれど、その表現力の拙さから誤解されることをまた恐れ、殻に閉じこもってしまうこともある。
そのような自ら意識のある植物状態に陥らない為にも、人が人として学ばなければいけない、教えなければいけない一番大切なことは、
「人に気持を伝える術(すべ)」
そして、それがまたなんと一番難しいことか。
私がこうして、時に挫折しつつブログを書き続けているのもまた、この気持を誰かに伝えたいからに他ならない。 伝わらないと諦めることなく、亀のように蟻のようにでも歩み続けたいと思う。
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