2013年08月30日

小さくて大きな喜び

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 「コ…クン」
 生々しいガーゼの下で、貴方の喉は、生まれたての赤ちゃんが初めての母乳を飲みこような初々しさで、ゆっくりと上下しました。 見間違えではありません。 微かな音も聞きました。 確かに動きました。

 それだけではありません。
 
 「あ・い・う・え・お」
 「か・き・く・け・こ」
 「さ・し・す・せ・そ」
 「た・ち・つ・て・と」

 ゆっくりと確かめるように口を動かしているので、耳を近づけると、なんと、微かながら聞き分けられる声が出ているではありませんか! 喉に穴が開いていて声は出ない筈なのに…。 

 『飲みこめる! 話せる!』

 ごく普通に自然に出来るようなことが出来たことがこんなにも嬉しい。 私たちですらバンザイして飛び上がりたい程ですから、本人はどれだけ嬉しかったことか…。 8時間以上の手術から目覚めたばかり、疲れるから、もう身体を休めるようにと言っても、次から次へと話そうとします。 喜びが込み上げ溢れてくるのでしょう。 

 ああ、神様、仏様、ご先祖様、いつもいつもお守り下さり、ありがとうございます。

 難しい手術を執刀してくださった先生方、看護師の皆さま、ありがとうございます。 

 術後はもう、ゴクリと飲み込むことは難しいでしょうと言われていた喉でした。 発声も難しくなるかもしれないと覚悟の上の手術でした。 勿論まだまだ油断はできませんし、これからまた一歩一歩の努力を積み重ねてゆかねばなりませんが、『最悪のシナリオだ…』と寂しそうに呟いていた貴方の口から再びこぼれた喜びの声を、私は一生忘れません。 
 
posted by 山桜 at 00:00| Comment(10) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年08月21日

岡倉天心・六角堂

盆参りの折、北茨城市まで足を伸ばし、「東洋のバルビゾン」五浦(いづら)の岡倉天心記念館・天心邸・六角堂などが保存されている茨城大学・五浦美術文化研究所を訪ねて来ました。 横山大観・菱田春草・下村観山・木村武山ら気鋭の画家たちを集め五浦で天心先生の目指された「東洋のバルビゾン」、今の五浦にはちょっと気恥ずかしい呼称に感じられますけれど、少し先の丘にある茨城県天心記念五浦美術館はいつも楽しみな企画展を繰り広げて下さり、その名に恥じない芸術の息吹があります。

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復元された「六角堂」

幾度か訪れた馴染みの場所でしたので、2011年3月11日の東日本大震災の大津波による六角堂流出のニュースには大きな衝撃を受けましたが、多くの方々の尽力により、翌2012年4月17日、以下の様に流失前より一層創建時に近い姿に復元されていました。(復元なので残念ながら登録有形文化財としての認定は抹消)

・昭和38年の改修工事で撤去されていた堂の中心にあった六角形の炉を復元
・天辺の宝珠を破片を基に復元、海底より発見された水晶(六角柱)を納める
・同改修で変更されていた南側出窓を記録を検証し創建時の姿に復元
・同改修で葺き替えられていた瓦を創建時の桟瓦(8寸巾)に復元
・窓ガラス製法を当時のものに再現(イギリスに特注)
・塗装を創建時のベンガラ彩色に復元


入り江の磯に波濤砕け、先は広い世界へと通じる太平洋を望み、天心先生は思索を巡らせ、時にこの六角形の炉(上の写真で半分覗いているのが見えます)で湯を沸かし茶を点て過ごされたのでしょうか…同じ場に立ち、海を眺め、感慨深いものがあります。

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こちら(上)は、荒廃・放置されていた元料亭「観浦楼(かんぽろう)」の古材を用いてと伝わる、天心設計により改築して実際に住まわれていた天心邸です。 (登録有形文化財)

 
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天心邸跡の長屋門(登録有形文化財)を出て道を隔てた階段を上った所にある天心のお墓です。 六角堂や記念館に比べると訪れる人も少なめでひっそりとしていましたが、木漏れ日の中で穏やかに眠られて…いや、今の現世(うつしよ)を常世(とこよ)からご覧であれば、とても心穏やかではないでしょう。 岡倉天心先生に学び直さねばなりません。

復興支援・岡倉天心生誕150年/没後100年記念の映画「天心」のロがあったらしく、ポスターが随所に掲げてありました。 天心役が個人的には余り好きでない役者さんなのが…う〜ん。 

そうそう、有名なエピソードですが、ボストンの街角で弟子の横山大観・菱田春草らを伴い、羽織袴で歩いている時、アメリカ人に、
"What sort of nese are you people?  
 Are you Chinese, or Japanese, or Javanese?"
と問われた時、
"We are Japanese gentlemen.
 But what kind of key are you?
 Are you a Yankee, or a donkey, or a monkey?"
とユーモアも交え、すかさず切り返したとは、その余裕…流石、「カッケー!」です。


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巻末に横浜で英語塾に通い9才にして既にネィティブ並み、フェノロサの通訳も務めた天心先生が英語で書かれた原文“THE BOOK OF TEA" が付いています。
posted by 山桜 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅・山歩き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする