
自然観察ランキング3月に入ったら恵みの雨が降って、土の中からツチグリの子たちがワラワラと湧き上がって来ました。 随分高尾山を歩き回っていますが、こんなにツチグリが大発生しているのは初めて見ました。
胞子が活動しやすい水分のある時に土の中から姿を現して、生き物のように動き始めます。
<2019-03-01>

斜面の表面が崩れかかったような場所に、ツチグリの丸い幼菌が次々と顔を出して・・・既に外皮が開きかけたものも見えます。


土の中の丸い幼菌をちょっと摘まみ出していました。
左が上部でやがて割れ開く方、右が下部で髭根状の菌糸束
この状態の時、収穫して塩茹ですると食べられるのだそうですが、日本では殆ど利用されず、東南アジアでは珍重されて缶詰が高値(現在日本では1,600円程で購入可能とか)で売られているそうです。 しかし、同じ仲間のニセショウロの仲間には軽い毒がありますので、きちんと区別できる方以外は口にされないように願います。


ミカンの皮のように外皮が裂けて袋状の内皮が現れます。内皮の中央には穴(項孔)があり、水滴や他の刺激で圧がかかると胞子を放出します。


生物のように、土の中からむっくりと這い出して・・・
ほぼ水平に開ききった処で止まるものもあれば、
ツチグリ(イグチ目ディプロシスジチア科ツチグリ属)


更にムクムクと外皮を下方に開き、土から全体を持ち上げて、
イザ、発進!

斜面をコロコロと転がって場所を移動する強者もあります。
出来るだけ他と離れた場所に胞子を放出したいのでしょう。


上手く落ち着けるものもあれば、こんな風に途中で引っかかって止まるものもあり。 右の個体は、私が観察の為に、ひっくり返して下側を見せたもの。 先程摘み上げた幼菌もこちらも、そっと元通りに戻して来ました。

バタバタせずに、生まれた場所でのんびり過ごすツチグリたち。
「慌てない慌てない」そんな風に話しているみたい。
それでもまた乾いた日が続けば、そんなことは言ってられなくなり・・・
<2017-12-27>

開いていた外皮をまたクルクルと閉じて丸まり、コロコロ転がって、より水気のある場所へと移動します。
外皮の内側のひび割れた白い部分(薄膜質)が水を吸って開き、渇くと閉じるという働きを担っているのだそうです。
<2018-06-08>

何度も開閉を繰り返し、すっかり白い部分(薄膜層)がくたびれて取れてしまうと、このツチグリの旅も終わりに近づきます。 この個体はもう内皮の中の胞子も空っぽのようですね。 長い放浪流転の旅、お疲れ様でした。
因みに姿が良く似ている、ヒメツチグリ属のヒメツチグリやフクロツチガキなどとは、目レベルで異なる種であり、白いひび割れ部分を持たないヒメツチグリ属は、外皮は開きっぱなしで閉じて移動する機能はありません。
<2015-10-22>
フクロツチガキ(ヒメツチグリ目ヒメツチグリ科ヒメツチグリ属)
エリマキツチグリ(ヒメツチグリ目ヒメツチグリ科ヒメツチグリ属)