2021年07月04日

エゴノキの虫こぶ たち

 エゴノキの鈴なりの花をうっとりと観察していると、奇妙な形のもの(虫コブ=虫えい=ゴール gall [gɔ:l])を発見することがあります。中には、こういうものに拒絶反応を起こす方もいらっしゃるかと思いますので、見たくない方は飛ばして下さいね。

 虫コブを作る虫には好みの木があって、エゴノキを選んで虫コブを作る虫と虫コブには、エゴノ・・・又は、エゴノキ・・・と言う名前が付けられています。

 以前にも書きましたが、虫コブの命名には、珍しくきちんとしたルールがあります。

植物名+植物の部位+虫コブの形+フシ(虫コブの意、五倍子、附子)

 エゴノキは果実に毒があるというのに、虫には大人気で色々な虫コブが作られていました。

エゴノネコアシフシ(エゴの猫足附子)形成者 エゴノネコアシアブラムシ(エゴの猫足油虫)
エゴノネコアシフシP5241836.JPG
 この青いバナナのような中にアブラムシが詰まっています。エゴノネコアシフシの断面 

エゴノネコアシフシP5241834.JPG
 むさしの自然観察園で初めて間近で観察できましたが、今回は自然の中で手に取って観ることが出来ラッキーでした。

エゴノネコアシフシP5241848.JPG
 果実が変形したものと思われがちですが、冬芽に卵が産み付けられ芽に形成されたものということです。この写真の状態を見ると成程です。

エゴノキハツボフシ?(エゴの木葉壺附子)形成者 エゴノキニセハリオタマバエ?
エゴノキハツボフシP5241879.JPG
 今回初めて見つけて名前を調べましたが、ソックリそのままのものはみつからず、出来ている場所と似た形から、恐らくこれかな?と思いました。若し、正しい名称がお分かりの方はお知らせ下さい。

エゴノキハツボフシP5241854.JPG
 葉の主脈や側脈、葉柄、花柄などにも出来るようです。これは側脈に作られたもの。

エゴノキハツボフシP5241837.JPG
 こちらは主脈に作られたもの。正に「壺」です。


エゴノキハヒラタマルフシ(エゴの木葉平た丸附子)形成者 エゴタマバエ
エゴノキハヒラタマルフシP4060597.JPG
 この平たい丸形タイプは、他の葉でも見られるので「あぁ、これ見たことある!」と仰る方も多いことでしょう。

エゴノキハヒラタマルフシP5091560.JPG
 先の状態ですと何かの卵?と思いそうですが、ここまで来ると??になりますね。

 異形のものは、気持が悪いと敬遠されがちですが、私も含めて虫コブ好きは結構存在します。私的には、植物が異物を取り込んで折り合いを付けた姿という意味で、「植物の真珠」と思っています。


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posted by 山桜 at 11:40| Comment(10) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月03日

コブシの実

 春先一番に清楚な白い花で楽しませてくれたコブシ、今年は一際、実りが良く、花からは想像も付かないような例の奇妙な実が沢山ぶら下がっていました。

コブシ(辛夷)モクレン科モクレン属 2021.06.28
コブシP6282350.JPG
 陽当たりの良い所では、早くも赤く色づき始めていました。 コブシの名前の由来は、この実の形が拳に似ているから説がありますが、私は、膨らんだ冬芽や蕾の方が、ずっと拳に似ていると思っています。

コブシP6282356.JPG
 咲いた花が殆ど漏れなく実った?と思うほどギッシリと押し合いへし合いしながら、ブドウの房のように垂れ下がっています。

コブシP6282354.JPG
 中には均等に実らず、面白い形になったものも。これは羽繕いをするアヒルさんにも見えませんか?

 さて、この先、どんな風に変化していくか、楽しみ楽しみ。見逃さないように注視していきますね。


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posted by 山桜 at 19:04| Comment(0) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月02日

リョウブ(令法)の花

 ナポレオン・ハットのような冬芽からずっと追いかけてきたリョウブ、やっと開花しだしたと思ったら雨続き、手許で撮れる高さで観察してきた株では、最高に綺麗な状態では撮れずに残念でした。毎日のように見ていても、自然相手ではこんな結果も待っています。

リョウブ(令法)リョウブ科リョウブ属 2021.06.24
リョウブP6242273.JPG

 狭山丘陵では、好みの環境と見えて沢山の株が見られます。その割に名前も知られず、花を楽しむ人も多くないのは、梅雨時の花で傷みやすく、比較的目に入りづらい高い梢で咲くことが多いからでしょうか。これがアジサイのような高さで咲けば人気が出るでしょうに。

2021.06.28
リョウブP6282345.JPG

リョウブP6282344.JPG

2021.06.30
リョウブP6302415.JPG
 一つ一つを見れば、端正で繊細な造りに惚れ惚れします。花序全体がブラシの様に見えるのは、この長い雄しべが目立つから。
リョウブP6302416.JPG
 雌しべの先が3つに分かれているのも確認できました。

2021.05.28 蕾に気付いたのは5月の終わりでした。
リョウブP5281885.JPG

リョウブP5281886.JPG
 よく観ると、小さな蕾はクルリと折りたたまれています。

2021.06.02
リョウブP6021999.JPG
 次第に花序も蕾も伸び上がって・・・

2021.06.14
リョウブP6142122.JPG
 やっと真っ直ぐに伸びきり、明日は咲くか咲くかと通い続けて、なんと開花まで7日も掛かりました。

 リョウブは、冬芽も面白く、新緑の展開も瑞々しくて美しく大好きな木のひとつです。

 その冬芽や新緑の様子は、こちらをどうぞ。「リョウブの芽吹き」 その他のリョウブの記事は、下のラベルから「リョウブ」をクリックしてください。

<追記>
 リョウブは、日本在来種では一属一種ですが、似たような雰囲気を持ち植栽されているものに、ズイナ(在来種)、コバノズイナ(北米原産)共にズイナ科ズイナ属があります。コバノズイナはヒメリョウブとも呼ばれ、茶席や生け花では、こちらをリョウブと呼び習わされていて紛らわしいのです。(花序の軸に赤味があり、穂は短く花の形も葉の大きさも違います。)

 先生やお茶席の主人の仰ったことはそのまま受け止める文化ですので改まりません。真実を知る方はこの世界ではこう呼ばれると折り合いを付ければ良いし、知らないままの方はそれで良いのでしょう。


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posted by 山桜 at 22:04| Comment(0) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月01日

オカトラノオ(岡虎の尾)

 「岡」と付く名前の通り、先にご紹介したイヌヌマトラノオより少し高い丘陵の陽当たりの良い場所に生えています。ただ、私のフィールドの群生地では、周囲の木が大きくなり日照不足気味で、健全な状態ではなくなりつつあるように見えます。

オカトラノオ(岡虎の尾)サクラソウ科オカトラノオ属 2021.06.30
オカトラノオP6302378.JPG

2021.06.21 午後には木陰となり薄暗くなってしまいます。
オカトラノオP6212174.JPG

オカトラノオP6302383.JPG
 ご覧のように群生はしているものの、今年は花序の出が少なく寂しい風景です。健全であれば花序は、もっと長く、しな垂れた先がまた少し上を向くような見事な「虎の尾」になるのですが、何となく尻切れで短いものばかり。

オカトラノオP6302385.JPG
 未だ出たばかりの小さな花序が初々しい。

オカトラノオP6242251.JPG
 蕾は実に規則正しく並ぶ幾何学模様。これぞ「天地の理(あめつちのことわり)」、神様の意匠には科学的法則が潜んでいます。

オカトラノオP6242247.JPG
 花は下から咲き始めます。飛んでいる箇所は陽当たりが悪いのでしょう。

 さて、ちょっとずつ寄ってみましょうか。
オカトラノオP6242255.JPG
 真っ白では無く、淡いピンク色がかっていて、ソメイヨシノのような色合いです。
オカトラノオP6302380.JPG
 これは、特に雌しべの赤味が強く美しい個体でした。
オカトラノオP6302384.JPG

オカトラノオP6212217.JPG
 このように寄って見てみると、本家のサクラソウよりも桜の花に似た雰囲気が感じられませんか。花弁(花冠の裂片)の真ん中に雄しべがある(花弁と雄しべが対生)のが、サクラソウ科の一つの特徴。

オカトラノオの花(最初の1枚)と 離れた別の2箇所のイヌトラノオの花(後の2枚)
オカトラノオ小P6302426.JPGイヌヌマトラノオ小P6262334.JPG
イヌヌマトラノオ小P6302363.JPG
 最初の2つを比べると、確かにイヌヌマトラノオの花弁(1枚ずつ分かれていないので花冠の裂片というのが正しい表記*)の方が幅広ですが、立ち入り禁止の水道用地内に咲いていたイヌトラノオ(多分)を柵越しに撮った3枚目は、却って細いようです。イヌヌマトラノオはオカトラノオとヌマトラノオの交雑種ということなので、どちらの形質がより多く出ているかによるのではないでしょうか。

 *以前にも書きましたが、ある刑事ドラマで「サクラソウの花びらが1枚落ちていた」という台詞がありました。サクラソウ科は漏斗状に花冠の下はくっついていて、花は丸ごと落ちるので、花びら1枚というのはちぎらない限りあり得ない筈なのです。


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posted by 山桜 at 13:59| Comment(4) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏越しの大祓

 6月30日、一年の半分が過ぎ「夏越しの大祓」となりました。今年は茅の輪のある神社まではとても歩いて行けず、鎌倉とんぼさんのお祓いも受けられず、大掃除も出来ず・・・で、鍋の汚れを落としてピカピカにしながら半年分の穢れを落としておりました。

 お陰様で、夜半から午前中にかけての大雨の被害はなく、辺りはすっかり清められたようで、小鳥の声も猫の声も聞こえず、怖いくらい静かです。嵐の前の静けさでないことを祈ります。

 幸いというか、私のように満足に夏越しの大祓が出来なかった方も、日本には「旧暦」というものがあります。夏越しの大祓を7月末にする地域もありますので、焦らずとも、あと一月の間になんとか半年分の穢れを落として、今年の後半を迎えましょう。


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ラベル:夏越しの大祓
posted by 山桜 at 10:55| Comment(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする