2009年04月22日

稽古日誌「茶カフキ」「廻り花」

 先生は、天然忌や利休忌に関連する稽古の中で、供茶と共に七事式の中より幾つかを取り上げて下さるのが常で、春は毎年「茶カフキ」の稽古が定例のようですが、昨年私はスペイン旅行に重なって已む無く欠席してしまい、今回が初の「茶カフキ」「廻り花」体験でした。

 何事においても初めてというのは心躍るもので、廻り花用に花も少し持って来てねと頼まれたこともあり、朝からウキウキそわそわと落ち着かずにおりました。 嗚呼それなのに、今日の占いときたら、
 「やることなすこと裏目に出ます。 ラッキーワード=謙虚な心。」
ですって。 余計にドキドキしてしまいました…。

【茶カフキ*】

 茶カフキ(カブキ)とは、利き酒のお茶版のようなもので、

 上林(かんばやし)   竹田(たけだ)   客(きゃく)
 
の3種類の用意されたお茶(濃茶)を当てていきます。
 
@試茶・上林を戴く
A試茶・竹田を戴く
B本茶1番の茶を戴く→一の折居*の中に名の書かれた札*を入れる。
C本茶2番の茶を戴く→二の折居の中に名の書かれた札を入れる。
D先に三の折居に残りの札を入れて執筆*(ししつしひつ)に送る。
E本茶3番の茶を戴く

*カフキ: 「歌舞伎」と同じく「傾奇」を語源とすると思われ、数寄の
  上を行く数寄な行い、という程の意味でしょうか。 
  今風に言えば「オタク」的行い? 
  ともあれ、敢えて「カフキ」とカナで書く所に「傾奇」に走るな
  という戒めがあるようにも思えます。

*折居(おりすえ):厚紙で折られた香入。香道の大の折居を用いる。

*札:上林・竹田・客 の三枚にそれぞれ自分の名が書かれている。

*執筆(ししつ): 記録・判定の役をする人
          その場で墨をすり、筆で書く
          (皆中の客にその書が手渡される) 

<覚書>
 ・茶カフキで用いる自分の名は姓名の名の方。
 ・出帛紗は試茶、本茶 共に一服め茶のみに添える。
 ・拝見、お尋ねなどはしない。
 ・折居は、両の下辺の谷折目に親指を入れるようにして開く。

 ・無学和尚が七事式の根本を説き遺した偈頌(げしょう)の一つ、

   茶カフキ 千古千今截断舌頭始可知真味

  遠き古より今も舌先の感覚を截って初めて真味を知ることが出来る


  「古い経験も知識も味覚も要らぬ、今この時、
       心のままに即断即決、札を投じるべし」

…そんな風にも自分なりに解釈してみました。 私のようにお喋りな人間は、味覚と共に舌禍も截つべきなのでした。 
今日のキーワード「謙虚な心」でした。 反省です。

廻(まわ)り花】

 ・床には、掛物と竹三重切の花入
 ・杉木地花台(綴目向こう)に、且座と時と同様に季節の花々を用意。

 ・正客から順に七事式の方式で入席(扇子は無用)
 ・亭主、茶道口で花台を膝前に礼(総礼)
 ・亭主、花台を花入下辺りに置いてから一番下に座り、花所望。
 ・正客から順に花を入れていく(普通下の段(窓)から)
 (前の客の花との調和(色合い・枝ぶり・向き等)も考えて入れる)
 ・自分の番で全ての窓に既に花がある時、一番長く見た花を揚げ、
  その窓に入れる。(その窓に入れた客に揚げ礼をしてから。)
  又は、揚げずに枝を加えて変化させても良い。
 ・いずれにしても花入の修練の場であるので、余り長く迷ったり
  弄ったりせず、ここでも潔く即断即決。


 いつもの茶室の侘びた花の風情とは趣が異なり、色とりどりの華やいだ雰囲気となりました。 しかし、その華やぎは浮ついた飾り立て等ではなく、一人ひとりの客が、花入だけでなく場の調和、主客の心の調和を図りながら心を込めて入れ繋いだことから生まれた結晶なのだと思うと、より一層美しく心清められる気持が致しました。


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posted by 山桜 at 00:00| Comment(8) | TrackBack(0) | 茶の湯 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
皐月晴れの連休最終日です
私どもも茶カフキは利休忌に行います。今年も執筆を午前中に務め午後の客では大外れでした。
先日の稽古は『炭所望』を久方ぶりに行い忘れている事だらけで次回は主客を替え再チャレンジです。
気づけばまもなく風炉の季節です。
我が家の庭も春の花から少しずつ夏の花たちに変わりつつあります。
紅山アジサイが咲けば嬉しいなぁと願っています。
Posted by 九州男(くすお) at 2009年05月06日 15:37
◆九州男さん
 こちらは連休後半雨続きで肌寒い日が続いています。
お蔭で緑は潤って嬉しそう…紫陽花の蕾も一層大きくなりました。
紅山アジサイと山アジサイ「紅(くれない)」は別の品種でしょうか?
 我が家には「くれない」があって、今年は沢山の蕾をつけています。
「冨士の白瀧」「剣の舞」も小さいながら蕾を覗かせていて楽しみです♪

 茶カフキは、三服戴いた後ならば的中も叶いそう…?でも、
そこを二服の時点で即断する所に妙味があるように思いました。
疑えばキリが無く、思っていたより判断が難しく困りました。
(第一印象に従えば皆中…ということはハズレです^^;)

 来週は風炉…頭の中が空っぽです! どうしましょ〜
Posted by 山桜 at 2009年05月07日 19:55
自分で本を開いて確認しようという気がなくて申し訳ないのですが、執筆を「ししつ」と読むのですか? 私は何も考えずに、「しひつ」と思ってましたが。何か情報があれば、お願いします。

で、結果はどうでしたか?
皆さん当てられましたか?
Posted by 多聞 at 2009年05月11日 19:43
◆多聞さん
 そ、そうですよね、「しひつ」が自然と思います。
いつも的確なご指摘(ツッコミ☆)ありがとうございます^^
江戸っ子なんで、ウッカリ自分の発音のまま書いておりました〜<( _ _ )>

 見事皆中の方がお一人いらっしゃいました☆
Posted by 山桜 at 2009年05月11日 22:39
またいらざることを書いてしまった事を
後悔しています。
いろいろな方のいろいろな発音がある事
は当然で、間違いとかおかしいということ
はこの世にないはずです。
勿論明らかな間違いの話しは別ですけど。
且坐だって、サザではなく、シャザと発音
する流派もあります。江戸博はそうだった
ですが。
つまり、こんな事を書いてしまった私が
問われてしまいますね。
お恥ずかしい。
Posted by 多聞 at 2009年05月12日 21:45
新しいことを経験するってわくわくしますよね。
それにしても、こんなにきちんと復習なさって記録するとはすばらしいですね。私はそんなことは全くせず、今になって色々真剣にやっているところです。
茶カブキ、やりたくなりました〜。おいしいお茶がたくさん飲めて、楽しかった思い出が。
Posted by m-tamago at 2009年05月13日 15:11
◆多聞さん
 どうかそんなことを仰らないで下さいませ…
文字にする以上、標準的な読みの表記をするのは当然ですし、
私もそうしていた積りなのに間違って打っていたのですから、
教えて戴けて本当に感謝しています。
サザがシャザと発音されるのは、サケとシャケと言うのと
同様ですが、筆(ひつ)を(しつ)と表記するのは「明らかな
間違い」なのですから…

 お茶では人前で恥をかかせぬように慮って敢えて指摘して
下さらないこともあるようですけれど、私は日々の稽古の中
では、気付いたら注意して下さる方がずっと嬉しいのです。

 多聞さんがいつもこうしてきちんと読んでいて下さるのが
とても嬉しく、私などに声を掛けて教えて戴けること光栄に
思っております。(これは社交辞令などではありません^^)
Posted by 山桜 at 2009年05月13日 22:06
◆m-tanagoさん
 若い頃は記憶力も多少はあって、書き留めておく必要も
なかったのですが、今はもう時間が経つごとに砂の城が
崩れるように記憶が失われ… もう10年早く始められたら
と思いますが、現状を受け止めて精一杯出来ることをするしか
ありませんよね^^;

 濃茶を五服はかなり身体に負担になると伺っていましたが
私にとっての初回はとても美味しく戴けて、楽しく過ごせました^^
Posted by 山桜 at 2009年05月13日 22:23
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