2009年06月24日

郭公と書いてホトトギス(改定)

*文献(鳥名の由来辞典・柏書房)確認の上、一部改定を加えました。(赤字の部分)
                              (2009-06-29)


     hototogisu.jpgkakkou.jpg
          ホトトギス       カッコウ

上掲2枚の写真は「デジタル野鳥図鑑」よりの引用です。

ホトトギス http://www.digital-dictionary.net/wildbird/wb_6_029.html
カッコウ  http://www.digital-dictionary.net/wildbird/wb_2_049.html

今年のホトトギスの初音を聞いたのは、6月3日の早朝でした。

 キョキョキョッキョッキョ キョキョキョッキョッキョ キョキョキョ…

 以来、雨さえ降らねば高い木のテッペンで家々のアンテナの上で、けたたましく正に喉から血を吐きそうな勢いで啼き続けています。 ホトトギスは、何故にあれ程悲壮に啼き続けるのでしょう…。

 思えばホトトギスは未だ卵の時に母親に産み捨てられ、托された巣の中でいち早く孵化し、育ての母の産んだ卵兄弟等を蹴落とし、すり替わらねば生きていけない哀れな運命。

 「どこどこどこ、おかあさ〜ん!」
 「ごめんよごめんよ、みんな許しておくれ〜!」

 声を限りに啼き叫ばなければ、とてもいたたまれない…。
あれは、ホトトギスの唱える供養の念仏なのかもしれません。

 
 今日の稽古の茶杓の銘は「郭公」と書いて「ホトトギス」。

 ホトトギスには、不如帰・杜鵑・時鳥・子規などの漢字がありますが、郭公を「カッコウ」と一般に読むようになったのは、郭公=ホトトギスと読ませることが誤りであることが認識された江戸時代以降のことで、古い和歌の世界では、殆ど「郭公」「霍公」と書いて「ホトトギス」と読ませています。  下記に時代ごとの表記の変化を記載。

 奈良〜 : 霍公/霍公鳥(万葉集のみ)、保登等芸(伎)須 など
 平安〜 : 郭公、時鳥 など
 鎌倉〜 : 杜鵑
 室町〜 : 子規
 江戸中期〜 : 不如帰
 

 古に恋ふらむ鳥は霍公けだしや鳴きし吾が思へる如 
                        額田王(万葉集)
  
 五月こば鳴きもふりなむ郭公まだしきほどの声を聞かばや
                         (古今和歌集)


 今、郭公の文字を見れば、「カッコウ」と読むのが普通ですが、和歌を嗜むような古え人にとっては、森林の鳥カッコウはあまり身近な鳥ではなく、鳴き声は全く違うものの同じ科で姿・生態は似通っており身近に見聞き出来たホトトギスと混同してしまったのも無理はありません。

 大陸から伝来した動植物の図録と漢名を見て、似通ったものを日本の動植物に当て嵌めて、元々呼んでいた和名に漢名を当てて表記するようにした為に誤ってしまった例は山ほどあります。

 このいい加減さに怒った牧野博士が、
 「和名は全てカナ表記でヨシ!」
と決められて、現代に至っているようです。 

漢字で書かれた名前の方の由来が分かって覚えやすいことも多いのですが、きちんと種を同定したい牧野博士のお気持もよ〜く分かるので、痛し痒しであります



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posted by 山桜 at 21:21| Comment(20) | TrackBack(0) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
声の仏法僧
姿の仏法僧
なんてのもありますね

昔の人は
鶯と目白は間違えていなかったようですが
鶯豆とか鶯餅なんて
あの色は目白色としか思われません…
Posted by 幽黙 at 2009年06月24日 22:11
ホーホケキョと鳴くウグイスの卵を蹴落とし(笑)
Posted by とく at 2009年06月25日 00:40
おはようございます。
そのホトトギスの声でいきなり起こされて、この時間に書き込むわたしです。
不如帰・杜鵑・時鳥・子規・郭公・・・
牧野博士の気持ちもよくわかりますが、最近はどちらもステキ、と思ったりします。

それにしても字面のイメージが全て違います。
・不如帰・・・悲恋の物語。(泣いて血を吐く)
・杜鵑・・・月下の剣士。(杜鵑一声など)
・時鳥・・・芝居の可哀想な腰元。(時鳥殺し)
・子規・・・俳句をひねらぬといかんぞな。
カッコウもカッコー表示がありますし、ニホンゴはやっぱり難しいですね。
・カッコウ・・・宮沢賢治風。
・カッコー・・・ジャック・ニコルソン。「カッコーの巣の上で」

どちらにしろ、もう一度寝直します。
Posted by 遊行七恵 at 2009年06月25日 05:07
◆幽黙さん
 ♪ブッポウソウ〜と鳴かないあの鳥を何故「仏法僧」だと
思ったのか…、そこの所が疑問です。 
コノハズク(声のブッポウソウ)が鳴くのは夜で、その時
昼間の鳥で黒っぽい仏法僧の姿は見えない筈なのに…。

 鶯と目白は、結構間違えていたんじゃないでしょうか〜?
鶯って目白が派手に動き回っている場所の直ぐ近くの藪の中で
囀りますし、実際の鶯はほんのり緑かなぁという薄茶色で目立ち
ませんものね。 ただメジロの囀りも可愛いい声で特徴もあって
分かりやすいので、きちんと区別していた人は今よりは多かったかな〜
Posted by 山桜 at 2009年06月25日 17:27
◆とくさん
 以前、ホトトギスの鳴き声は、蹴落とされた鶯の子の
未だ上手く鳴けない時の声に似ているようで、ちょっと
祟りのような…なんてことを書きました。
こういう印象って、その時々の自分の心を映すんですねぇ

 最近は特定外来種指定の「ガビチョウ」ものさばって来て、
ウグイスの縄張りを荒らしているそうです。
Posted by 山桜 at 2009年06月25日 17:31
◆遊行七恵さん
 うんうん、同感ですよ〜(*´∀`)人(´∀`*)ナカーマ!

 牧野センセの分類学的には、混乱させて邪魔臭いだけの
漢名ですけれど、何故に我等が同胞はそれだけの種類の漢名を
混在させつつ使い分けてきたか…それぞれの名前に物語がある、
そこの所が面白くってたまらないんですよねっ♪♪♪

 目下格闘中の万葉仮名も、何故にあそこではこの字で、
同じ名詞なのにここではこの字を使うの???のメジロ押し^^;
 「だって、ここはこの字の方がカッコいいんだも〜ん」
みたいな軽いノリなのか、それとも他に意味があるのか??
Posted by 山桜 at 2009年06月25日 17:40
     
 >あれは、ホトトギスの唱える供養の念仏なのかもしれません。
<そう・・・私もそう感じて仕舞いますーー;   だから聞きなしも、
「本尊 かけたか  本尊 かけたか」と聴こえるのかも知れません。 
Posted by メダカの目 at 2009年06月26日 00:22
きのう、「剣岳 点の記」を見てきました。最近、こんなに感動した映画はありません。ゼヒゼヒ・・・何しろ映像がうつくしいんです。実際の山歩きなら、ずーっと立ち止まって見てられるのに・・・だから・・・もう何回か、見にいきましょう。
Posted by 山口ももり at 2009年06月26日 07:59
◆メダカの目さん
 あれほど高らかに鳴き続けるのに、どこか哀しげで
誰かに呼びかけているように聞こえますよね。
そのように感じてしまうのは、万葉の歌人も今の人も変わら
ないようですね。
Posted by 山桜 at 2009年06月26日 21:29
◆ももりさん
 「剣岳 点の記」見ようと思っていました!
ももりさん、さすがに行動が早いですね〜
槍には登りましたが、剣は未踏です。 見たら絶対に
登りたくなってしまうでしょうね〜 

 今日は、夏のキャンプの実地踏査に行って参りました。
暑さでちょっとぐったり中です。。。
Posted by 山桜 at 2009年06月26日 21:33
カッコウとホトトギス。
どちらも言葉でしか知らない(><)

でも、鳥は結構すきだな♪
時々、すずめになりたいな〜o(⌒▽⌒)o
って思うことがあるよ☆

あ、エサは虫だからいやだけど(笑)

鳥の名前も色々と探っていると
面白そう。。。
Posted by やゆよ at 2009年06月26日 22:31
私もこの6月にホトトギスについて書きました。
http://syutozennin.blog.ocn.ne.jp/e411y/2009/06/post_c7e6.html
先日読んだ柳田国男「日本の昔話」(新潮文庫)では,越中に伝わる昔話として「時鳥の兄弟」というタイトルでホトトギスは男の兄弟として書かれていました。
越中と遠野では話の内容は殆ど同じなのに,兄弟と姉妹が違うようなのです。
Posted by 酒徒善人 at 2009年06月27日 16:56
◆やゆよん
 ホトトギスは夏に来る渡り鳥なんだけど、調べてみると、
九州と北海道には渡来数が少ないみたい。 何でも東京基準の
ことしか分からなくて、ごめんね。 やゆよんが知らないのは
無理ないよ〜 こちらでも鳴き声は知っていても姿まで
分かっている人は少ないと思うよ^^

 雀は雑食だけれど、甘い蜜や果物が好きな鳥もいるよ♪

 鳥はね〜神様の化身だったりお遣いだったりだから、
昔から物語には事欠かなくて、秘密もいっぱいそうだよね☆
Posted by 山桜 at 2009年06月27日 20:01
◆酒徒善人さん
 その兄弟と姉妹の話、私も書いたような気がして探せども
みつかりませんでした。 カッコウと思ってたけれど、
ホットキスギテ書かなかったのかもしれませんね〜(苦しい)

 昔話の地方色も調べたり比べたりしたら面白いこといっぱい
ありますよね〜 民俗学って絶対に楽しいと思うけれど、
地道に歩き回らねばならない大変さの割に、食べてはいけない
学問なのでしょうか… 
Posted by 山桜 at 2009年06月27日 20:14
 えっと〜、横レス すみません><; 九州の山林は5月の終わり頃から
鳴き始め、今は良〜く耳にします^^¥ 大分、福岡、長崎の山の近くでは、
夏いっぱい鳴いています。他県は存じませんが、九州には多いと聞きます。
きっと街の中心にお住まいだと、聴く機会が少ないのかも知れませんね?
Posted by めだかの目 at 2009年06月27日 20:39
えっo(⌒▽⌒)o
甘い蜜や果物が好きな鳥。。。

それになる〜♪♪(⌒▽⌒)♪♪

今の人間も大好きで幸せだけれど
一日くらい、鳥になって
空を本能に任せて飛びたい☆
そして楽しくおしゃべりするんだ☆

熊本の街中の楠には
夕方から雀が帰宅して
夜中もさえずっているんだよ〜

やんきーすずめたち。。。

めだかの目様の情報によると、
九州にもいるってことだから
他の鳥の声もきっと
聞き逃しているのかもね(><)
Posted by やゆよ at 2009年06月28日 00:56
◆めだかの目さん
 今日は、団の子らと公園の花壇の植替えをしてきました〜♪
ちょうど植え終わった頃に雨が降ってきたので、ラッキー!
私はちょ〜っと濡れてしまいましたけど。。。^^;

>九州の山林は5月の終わり頃から鳴き始め、
>今は良〜く耳にします^^¥ 
>大分、福岡、長崎の山の近くでは、夏いっぱい鳴いています。

 そうでしたか〜こうして生の地域情報を得られるのも
ネット交流のすごい所ですね〜! ありがとうございます。
 
 図鑑情報も、最近の地球規模の気候変動による変化には、とても
追いついていないのかもしれませんね。(私も日本野鳥の会を脱退して
しまったので、最新情報が分かりませ〜ん。(><)) 
 この辺りでも10年程前くらいはカッコウが主流で、ホトトギスは
少数派だったのですが、気候変動の所為なのか、今はカッコウの
声が聞こえず、ホトトギスばかりになってしまいました。
Posted by 山桜 at 2009年06月28日 15:33
◆やゆよん
 私はお魚も好きだから、鷺なんかもいいかな〜♪
あ、でもあの妖しい目つきはちょっと。。。(笑)
いつもみんなと一緒で楽しそうに囀りながら甘いものを
探しているメジロなんて、姿も可愛いしいいかもね〜^^

 街中に楠が…あ〜そう言えばあった気がする〜熊本ってどこか
力強い魅力的な街だったなぁ もう一度言ってみたい☆
こちらでは雀の数が減っていて心配なの…ヤンキームクドリなら、
都会の街路樹の中で夜中も騒いでいるよ〜

 一度あの声が○○の鳴き声って分かってしまえば耳が追う
けれど、分からないうちはただ何かの鳥が鳴いてるな〜って
思う位なのは仕方がないよ。 じゃぁ、今年はホトトギスの
鳴き声を覚えてみる?http://www.bird-research.jp/1_katsudo/kisetu/nakigoe_hototogisu.mp3
ちょっと音が高い気がするけど、大体こんな感じだよ。
(最初から聞こえるピチュピチュ系の声じゃなくて、
 キョキョキョッキョキョ…
って聞こえる声の方ね。 東京特許許可局なんて聞きなしもあるよ^^)
Posted by 山桜 at 2009年06月28日 16:10
ホトトギスって「テッペン カケタカ」って鳴くんでしょう???たしか???国語の教科書で読んだなあ
Posted by 山口ももり at 2009年07月01日 09:08
◆ももりさんへ

>ホトトギスって「テッペン カケタカ」って鳴くんでしょう???

 その「聞きなし」は有名なのですけれど、どうも私には
そのように聞こえなくて…(苦笑) それならば、
メダカの目さんが仰るように「本尊 かけたか」の方が
ちかいような気がします。 人それぞれの思いいれにも
よりますよね。 ももりさんにはどう聞こえますでしょうか〜??
Posted by 山桜 at 2009年07月01日 15:46
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