2009年08月28日
陽水とディラン
(冒頭から広告で申し訳ありません。
写真使用問題の無い広告の中での選択上どうかご容赦を。)
8月24(月)〜27(木)とNHK教育で井上陽水の特集があった。
最終夜のキーワードの中に「Dylan」とあって驚いた。 陽水は好きで曲も殆ど知っていると思う。 しかし熱狂的なファンとまではいかず、創作に纏わるエピソード等も詳しくない。 一方Bob Dylanと言えば、家人が思春期以降、誰よりも惚れ込んできたアーティストであり、私も此れまで数々の薀蓄を聞かされて来た。
甘く美しく透明な陽水の声で歌われれば、荒々しいロックもどこか洗練された上品さを帯びる。 くぐもりしゃがれ押しつぶされたようなディランの声で歌われれば、美しいバラードもさすらうHOBOの呟きのように聞こえる。 そこがいいのだ。(事故の後、一時的に美声になってビックリのこともあった。)
そんな二人に今まで共通点があるとは気づかずにいたが、陽水がディランの影響を大きく受けたと聞いた時、頭の中で一つの鍵の暗証がガチッ!と合わさり、大きく「あぁ!」と頷けた。
「陽水の意味不明・音先行の作詞はディランの影響だったのか」
ディランの歌詞は難解で、時にアメリカ人でも理解不能とさえ言われる。 しかし、それが彼によってあの声で歌われ出した時、不思議な力を得て忘れられないインパクトで人々の脳裏に刻み込まれる。 歌詞を見れば、言葉の意味自体よりも音韻を踏むこと、言葉に出して歌ったときに曲ノリがいいことが優先されたではと思う所が多々ある。
彼の言いたいことはキメのフレーズにあって、そこへ到達するまでの数多の言葉は混沌とした彼の頭の中のスケッチそのままのようでいて、実に周到に散りばめられている。 中でも陽水が衝撃を受けたのは、歌詞を紙に書いて次々めくっては投げ捨てていく映像と共に有名な"Subterranean Homesick Blues" 畳み掛けるような韻を踏んだキレのいい歌詞の羅列が小気味いいが、意味となると「?」だらけ。
もう一つ、比較的易しい歌詞の例も挙がっていた。
I Want You
The guilty undertaker sighs,
The lonesome organ grinder cries,
The silver saxophones say I should refuse you.
The cracked bells and washed-out horns
Blow into my face with scorn,
But it's not that way,
I wasn't born to lose you.
I want you, I want you,
I want you so bad,
Honey, I want you.
悪どい葬儀屋は溜め息をつき
孤独な手回しオルガン弾きは咽び泣く
銀のサクソフォンは君なんかやめちまえと言い
ひび割れベルや錆びれホルンが
あざ笑いを浴びせかける
そうじゃない
君を失うために生まれてきたんじゃないんだ
君が欲しい 君が欲しい
苦しい程に
ねぇ、君が欲しいよ (山桜 訳)
陽水はこのようなディランの歌詞に出会って、今まで彼が書いてきたような「ストーリーのある歌詞」でなくとも「もっと思いつくまま自由に、書いてもいいんだ」と、まさに音を楽しむ世界へと開放されたように思う。
パフィのデビュー曲で陽水が作詞・奥田民生が作曲した「アジアの純真」の歌詞などは、音を楽しんで書いたであろう典型だ。
♪ペキン ベルリン ダブリン リベリア
束になって 輪になって
イラン アフガン 聴かせて バラライカ
こんな歌詞の意味を考えても意味がない(笑) 歌って聞いて踊って楽しめばいいのだ。 強いて言えばこのめちゃくちゃな混沌が「アジアの純真」なのかもしれないが、最初につけたタイトルが「熊猫深山」だと聞けば、それさえもアヤシイ。(そういえば、これは「ランチの女王」の中で歌われていた「森花処女林」というタイトルを連想させる。)
そしてまた、どこからか風に乗って聞こえてきただけでも涙がこみあげてしまう名曲「少年時代」の中で意味不明として話題になった歌詞、
♪夏が過ぎ「風あざみ」
についても、この番組のインタビューの中で、
「"鬼あざみ"があるんなら
"風あざみ"があったっていいんじゃない?」
という発言をしていた。 しかし、これは照れ隠しか後付けの理由だと思いたい。 私の中での解釈は、
「夏が過ぎ、風がアザミ色(に染まった)」
だったので、こんな理由は聞かなかったことにしたい(苦笑)
最後に宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を元に書かれた「ワカンナイ」が紹介されたが、これはディランの「Blowin' in the wind(風に吹かれて)」と重なる。
「ワカンナイ」歌詞はこちら
「Blowin' in the wind(風に吹かれて)」歌詞はこちら
ワカンナイ=答えは風の中…
ということか。
(思わず熱く長くなりました。 随分と削ったのですが…)
この記事へのトラックバック
ボブ・ディランは中学生の時
に初めて聞いて胸が震えました。
意味なんかわからなくくとも来ちゃうんだなあと
思ったんですよね。その時。
井上陽水の世界も大好きです。
そのあと、サザンですから
歌詞の一言一句がどうというのではなく
一曲を一枚の絵のように楽しんでいるような気持で聞いています。
>「風あざみ」
絶対に固有名詞として書いたんじゃないでしょ〜?
って陽水に問い詰めたいです(笑)番組の中で「アザミは春では?」
って言われて、「しまった〜」と思ったのかも^^;
確かに野アザミは春咲きですけど、他の殆どのアザミは秋咲き、
私の中のでもアザミは秋のイメージです。
ディランは沁みますね。 私は何故かディランを聴くと
深い眠りに落ちてしまいます。 最早子守唄代わりです−☆
サザンも訳ワカだけど、日本語を西洋的メロディに違和感なく
乗せるという偉業を遂げましたか…。 嫌いじゃないけれど、
とても私には歌えませ〜ん♪(^▽^;)
思えば「祝詞」だって「お経」だって意味なんて良く
分からないけれど、言霊・音霊で感じるのですよね!
大好きという訳ではないけれど、陽水はその時々の時代を象徴している存在だと思います。
とっても素敵なおじさまになっておられましたね。
ライブの姿も、若いもんには負けない色気があって*^^*
話を聞いていて、そこ此処に文学の香りとこだわりを感じるものの、行き着いた先がいい加減さや適当さ、白黒を付けないとこが、共感できました。
それでも、そのいい加減さは、高いレベルを持った適当さでもあるのですよね。
この年代の人たちの背景にある泥臭い望郷感や日本の姿、それでていて洗練された感性がない交ぜになっていて、今の若い人たちには二度と生み出せない濃密さを醸し出しているように思います。
最終話に隠されていたのですね? マイミクさんの日記にも陽水の事
触れていました。私は2話目の途中と3話を観たのに、肝心の最終夜を
見逃してしまいました@@; でも山桜さんのブログで、なんとな〜く
理解できた気がします。五味太朗の言葉遊びの様に意味がなくても、
雰囲気で何とも心地よく歌えて仕舞います。
既成の概念を壊して何処か飛んで仕舞ってるところがあるのに、多くの人の心深くに
いつの間にか沁み込んでいる陽水の世界・・・ あらためて凄いです-☆
私は1・2夜を見損ないまして…てっきりBSだと思っていて
チャンネル合わせていたのにやらないので「??」のまま
BSの番組も面白かったのでつい見てしまいました^^;
今まで気づいていませんでしたが、思えば風体までディランに
似せているのかも? 二人とも、偶々シャイを隠すサングラス
なのかもしれませんけど^^
「人生が2度あれば」って曲、若い頃は両親のことを思って泣き、
今は「コタツで二人、夢見るように昔の話をする」老夫婦の姿が
うらやましくて涙が出ます。 それまで二人揃って元気で
いられますようにと…。
実は高校の時の彼が作ってくれたセレクション・テープに
忘れられない陽水の曲がありまして…何か気恥ずかしくて
切なくて、大きな声でファンと言えないままに来てしまいました。
「愛は君」「帰れない二人」「冷たい部屋の世界地図」だったんですもの…。
そんな甘い思い出も悲しいお別れの思い出もありましたっけ〜
音楽って、一瞬にしてその時の思いに連れて行ってくれますね^^
NHKは好評だと大体どこかで再放送してくれますので、目を光らせて
待っていましょう! 私も見つけたらお知らせしますねっ−☆
陽水といえば,「こころもよう」をギターで練習したのを思い出します。
この季節,カラオケに行けば「夏の終わりのハーモニー」を歌っている私です。
陽水や小椋桂は声が良すぎて、初めて実像を知った時は
愕然としませんでしたか? 今まで伺ってきた善人さんの
カラオケレパートリー等からプロファイリングした、私の中の
善人さん像と実像が一致する日が楽しみです♪
山桜さんのプロファイリングは,恐ろしいほどバッチシ当たっています!
でも,それは山桜さんも同じでは?
登録ワードが消えてしまったので酒・徒・善人さんと
入れないと首都善人さんに〜o(><)o
そ、そ〜ですか!? 私の頭の中を覗ける善人さんは
やはり、あちら系の能力をお持ちの種族でいらっしゃる??
善人さんの頭の中の山桜像は…見るのが怖い気持ちが勝って
見えませ〜ん!
私もLP一枚買って聴いていましたけど、、、歌詞を翻訳しようという気にはならなかったです(笑)
声とか歌い方、メロディーが好きだったんですけど・・・
ディランと言えば岡林や拓郎というイメージで陽水までは
思い浮かべることありませんでした。(私、この世代では
ないですよ〜念の為(笑) ずっと年上の家人のその又兄が
丁度その辺りの世代です^^;)
訳したからって分かる訳じゃないって見本のような歌詞
だらけですもの〜(笑) ディラン大好きの家人も歌詞には
全く興味が無くて、私が意味を聞くのを「分かってないな〜」
ってな感じで呆れて無視してました。
ディランの曲をPPMやジョーン・バエズ等がきれいな声で
滑らかに歌うと、全然違うシロモノになってしまうんですよね。
陽水は昔から好きで、星を見るときは「帰れない二人」が、
そういえばスキーでは「氷の世界」が頭に流れるときも・・・
ディランとの関係は私も初耳でした。
ディランはあんまり聞いてこなかったので、詳しくないです。
「ライク・ア・ローリング・ストーン」はノリがいいので、今でも時々聞きます。
NHKは、歴史的には偏向してて辟易すること多いけれど、
文化的にはなかなか面白い番組も作ってくれますね。
「帰れない二人」って高校時代の思い出の曲です♪
別に帰れなかったという思い出ではないんですけど^^;
"Like a rolling stone." と古風な「転石苔生さず」のイメージが
頭の中で入り混じってすごく衝撃的だったのを覚えています。