2009年11月09日

意識のある植物状態

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                             ガマズミの実と紅葉

 生きていることの辛さは人それぞれで、その人にとっての辛さの軽重を傍から見て判断することは難しい。 それでもどんなにか辛いことだろうと想像するに難くないのは、「意識のある植物状態」だ。

 脳の機能は正常で意識も感情もあるのに、それを伝える機能が働かない。 筋肉を動かせなくなれば、手足は勿論、口もきけず瞬きすることも眼球を動かすことも出来ない。 直ぐ傍にいる家族に気持を伝える手段がない。 

 つい先日、某所でそのことに触れ、
「一番厳しいのは、頭はしっかりしているのに伝える機能が不自由になることでしょうか。 脳波を言葉に変えられるとか、テレパシー的技術が進歩すれば救われますが…」
などと書いた直ぐ後、日経新聞の夕刊(2009年11月6日(金)付)に「植物状態での意思疎通(日立製作所フェロー 小泉英明氏)」というコラムが掲載されて驚いた。

 小泉氏はMRI(磁気共鳴画像装置)の開発途上でALS(筋萎縮性側索硬化症)という、脳から筋肉へ信号を伝える神経が徐々に蝕まれていく病気の患者さんに出会った。 身体中の筋肉が麻痺すれば、見た目には植物状態に陥る。 患者さん方は小泉氏に訴えた。

 「やがて植物状態になった時、もし意識があったら怖い…。」

 その時、小泉氏は、『その時でも、家族と意思疎通が可能な方法を考えてみます。』と約束し、この程その約束を果たす為、ここ2年半植物状態であるALS患者さん宅に、近赤外光トポグラフィ装置を運び入れ脳機能の画像化を試みた。

 結果、一時記憶など、計測した5種類の脳機能が全て正常であることが判明し、ご家族、研究者ともども感動…そして、小泉氏らが玄関を出ようとした時、患者さんの部屋から飛び出してきたご主人に、こう呼び止められた。

 「紅潮している家内の顔をみてやって下さい!」

 自律神経の働きにより、患者さんご自身の感動、【究極の疎外感からの開放された喜び】がほんのりと頬を赤く染めたのだった。 その喜びを感じ、小泉氏は目頭を熱くされた…。



 たとえ満足に動かせる筋肉への伝達機能があっても、自分の気持を伝えることは難しい。 そしてそのもどかしさから、思わず思いもしない表現方法をとってしまうことさえある。 人はつくづく、

 「自分を分かって欲しい生き物」

なのだと思う。 分かって欲しいけれど、その表現力の拙さから誤解されることをまた恐れ、殻に閉じこもってしまうこともある。 

 そのような自ら意識のある植物状態に陥らない為にも、人が人として学ばなければいけない、教えなければいけない一番大切なことは、

 「人に気持を伝える術(すべ)」

そして、それがまたなんと一番難しいことか。


 私がこうして、時に挫折しつつブログを書き続けているのもまた、この気持を誰かに伝えたいからに他ならない。 伝わらないと諦めることなく、亀のように蟻のようにでも歩み続けたいと思う。


Seesaa Blog エコロジー・ブログ 4位 

 


ラベル:日経新聞
posted by 山桜 at 08:51| Comment(20) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久しく覚えがなかった感銘を受けました。

 意思を伝えることの困難と、言葉の難しさをつうかんなさってきた方の、こころの絵画を見せて頂きました。
Posted by kazimodo at 2009年11月09日 11:42
◆kazimodoさんへ
 小泉氏が患者さんに意思疎通を可能にする方法を考えますと
約束した時、その患者さんは、

 「装置を夢見るだけで心がやすまります」

と、やすらかな顔になって仰ったそうです。

 機能する装置を持っていながら使い方も知らず使えないでいることは、
なんと勿体無い宝の持ち腐れでしょう。 話すのも書くのも苦手なら、
絵を描いてもお料理をしても、何か得意なことで伝える方法もあるのに…。

 ただ気持を込めて相手の眼を見つめる、いえ、はにかみながらも
少しニコッとするだけで伝わることもありますね^^
Posted by 山桜 at 2009年11月09日 13:36
 人が何かを信じ、諦めない力は絶大で、なんて尊いのでしょう。
生きてゆく行為自体、私達は無意識のうちにも自分を表現し続け、
誰かと何処かで繋がっていたいと願っているのかもしれませんね?

 「人に気持を伝える術(すべ)」・・・一生を掛けての難行苦行です><;

 
Posted by メダカの目 at 2009年11月09日 15:33
親戚に、やはり同じ状況の方がいて、いつも
意識があるのに、植物状態になったら。。。と
考えていました。

同じ事を考えている方がたくさんいらして
そして、それにこたえようとする方がいて。。
諦めないという事につながっているのかな〜って
思いましたo(⌒▽⌒)oでっす♪♪
Posted by やゆよ at 2009年11月09日 17:14
こうして
意識があるものでも
何らかの意図や
考えを伝えるのは
とても難しい

そんな難しいことじゃなくて
単に嬉しい悲しい面白い恐い痛い苦しい
寂しい楽しいってことだけでも
伝えたいのに伝えられないとしたら…

Posted by 幽黙 at 2009年11月09日 23:27
◆メダカの目さんへ
 こうだったらいいのになぁ…と思い描くだけの私ですが、
世の中にはそれを実現する為に日々努力を重ねていらっしゃる
方々が大勢いらっしゃる。 尊敬すると共に何もせぬ己が姿が
恥ずかしく、せめて少しでも多くの方にお伝えしようと思いました。

 この数週間「ロンバケ」の再放送を見ていて、相手を思いやる
あまりに伝えたいのに伝えられない、今の関係を壊したくない為に
その先に進めない、そのもどかしさその切なさに涙してしまう日々です^^; 
 「ピアノって上手く言葉で伝えられない人の為にあるんだね」
Posted by 山桜 at 2009年11月10日 09:47
◆やゆよんへ
 私は前世か何処かでそういう体験をしたの?という程、
何故かこの状態に自分の身を置き換えて考えてしまうんだ。
包帯でがんじがらめのミイラが棺の中で意識だけが残って
ずーっとずーっと長い時を一人で過ごしているような…

 そういう人の意識の脳波を受け止めて外に表しすことが
出来る世の中になったんだね。 すごく嬉しいよ! 

 伝える術と受け止める術、両方あって成り立つんだもの。
Posted by 山桜 at 2009年11月10日 09:58
◆幽黙さんへ
 幽黙さんのように、ライターという言葉を用いるお仕事の
プロでいらっしゃっても、いえ、それ故に更に、伝えることの
難しさを痛感されるのでしょうね。

 植物状態とされている人が、時に一筋の涙を流される…
その訳を知りたいと願われたご家族の思いが通じた。
画像で証明される以前に、既に心と心は通じ合っていたのではと
思います。 分かり合いたいと向き合うことが大切なのですね。
Posted by 山桜 at 2009年11月10日 10:12
お・お・お・・・綺麗な葉っぱと実って思ってみた映像が急に怖く見えてきました。表現次第で、自分自身も周囲も変わってしまうのが怖いです。身近に、表現に問題を持ってるなあって感じる人もいます。一生懸命やってるのに対人関係が結果として上手くいかない人もいます。今、私自身は至って良好!!!これだけ言いたいように言って、したいようにしてるのに、本当に皆様に支えられて感謝感謝です。
 「暗闇症候群」って言うのがあるそうです。主人、もう10年以上も前に脳内出血になりました。1ヶ月入院して完治。脳幹より5ミリ離れた所に5ミリの出血だったんですって。もう、5ミリずれて脳幹に出血したら、目だけが動かせて、ほかは動かせない「暗闇症候群」という状態になっ多かもしれないんですって。
Posted by 山口ももり at 2009年11月10日 10:31
◆ももりさんへ
 時として、心の中の思いと外へ出る表現の不一致に苦しみます。
そんな積もりじゃないのに、正反対のことしてしまうのって
どれだけ天邪鬼が住み着いているのだろうと我ながら…
心のどこかにそういう思いもあるから外で出てしまうのなら、
それもまた自分の心の一面と認めないといけないのでしょうね。

 ももりさんに書を習い始めて、自分の書いた文字を見ると
心の中が映し出されているようで恥ずかしくなりますが、
そうして形になって見ることが出来るって新鮮なことでした。
落ち着き無くて芯がふらついて歪んでいるなぁ…
一体どういう風に書きたいんやろか(苦笑)

 一寸先は闇って本当ですよね。 経験して怖さを知りました。
「生きてるだけでまるもうけ」なんておどけている人いますが、
幸運の積み重ねの上で生かされているんだなぁと思います。
Posted by 山桜 at 2009年11月10日 13:51
心が熱くなりました。
心動かされる記事、ありがとう。
Posted by ナナ at 2009年11月10日 15:45
◆ナナさんへ
 共鳴して下さり、コメントお寄せ下さり嬉しいです。
ありがとうございます。

 今ふと思ったのですが、以前は「植物人間」という表現に違和感を
持っていました。 しかし、表現手段を持たない故に、表面的には
無感情に見え、内実確固たる感情の動きがあるという観点からすれば、
寧ろ言い得ているのかも…と。
Posted by 山桜 at 2009年11月11日 19:00
「落ち着き無くて芯がふらついて歪んでいるなぁ…」ですって???トンでもない!!!!とてもしっかり書けて、構えが大きいのが素晴らしいですよ。構えって、目の前のその人がいなくても見えるんです。姿勢と筆の角度、脇の上がり方・・・・呼吸までね。ゆったりとお過ごしなさい。何にも怖がることありません。生きてるだけでまるもうけ「いまる」ちゃんのことですか???は・は・は・・・・

Posted by 山口ももり at 2009年11月12日 10:54
◆ももりさんへ
 わぁ! そんなに褒めて下さってありがとうございます〜(ToT)ノ
この歳になると、もう滅多に褒められもせず怒られもせず…
先生について教えて戴けるというのは幸せなことですね!

>ゆったりとお過ごしなさい。何にも怖がることありません。

 大船に乗ったような気持に安堵いたしました^^♪
言葉の力ってすごいですね! ももりさんの言葉だからこそ
一層の言霊が伝わってきます。 ありがとうございます!
Posted by 山桜 at 2009年11月12日 22:03
>その人にとっての辛さの軽重を傍から見て判断することは難しい。
口内炎で苦しんでいるのも,このあたりからくるストレスなのでしょうか?
他人が私のことを,かなり違う評価をしている時があるのです。
Posted by 酒徒善人 at 2009年11月14日 14:38
◆酒徒善人さんへ
 善人さんはきっとお辛いことがあってもその辛さを外に
出さず、表面は明るく振舞って過ごされているのでは…と
想像しますが、これも違っていたらまたストレス増加!?
ごめんなさい(><) 

 中学生の頃から胃潰瘍持ちだった私。 やっとこの頃は、
自分にとって大事な人が自分のこと分かっていてさえくれれば、
他のどうでもいい人にどう思われても構わないか〜って割り切る
ことが少しは出来るようになりました。
Posted by 山桜 at 2009年11月15日 19:32
永く付き合っている人には以心伝心で目だけでもわかってもらえますし また外に出た言葉の裏まで理解してくれる気がします。
でも 最近は言えばよかったと後悔しないよう 感情をぶつけるようにしていますが。(歳ですね)

母は呼吸器をつけられ一ヶ月以上指一本動かせない状態でしたが 最後会いにきてくれた人がいたとき涙を流していました。

また 記憶がわからなくなってしまった祖母が入院中 その時期に亡くなった人の話を突然していました。何年も会っていなかったのに どうも
亡くなったかたが 祖母に会いにきたようです。

意識、心 魂 まだまだ 表に出なくても伝わり方 いろいろあるように思っています。
だからこそ 祈りも届くような気がします。
Posted by チャチャ at 2009年11月17日 12:37
◆チャチャさんへ
 わぁ、お忙しい最中にコメント下さり、ありがとうございます!

 結婚する時、以心伝心なんて境地になれるのは遠い未来のこと、
それまでは言わなくては分からない事のほうが多いのだから、
何でも言い合おうって約束だったのに、やっぱり疲れていれば、
黙っていても許される一番楽な相手の前では言葉数減りますね〜
黙っていれば平穏ならば、わざわざ荒立てなくていいかな〜
とも思いますし…(苦笑) 偶に溜まった感情が一気に噴出する
こともありますが、すごく困った顔をされるので気の毒になって…

 目に見える情報だけでは計り知れない心の動きがありますね。
亡くなった方が会いに来たこと、私も何度もあるので信じます。

 祈りも通じること信じます。 毎日神仏ご先祖さまに
お祈りしていて、守られてると実感します。 私だって
絶対にあの世へいったら、残した家族を全力で守りますもの^^
Posted by 山桜 at 2009年11月18日 21:11
あなたはちょっと頑張りすぎてるんじゃないかしら???人間って、ホント、無力なものですよ。自分も人も、無力、小さなもんです。ありのまま・・・・ソウ、それでいきましょう。つらい日々はトンネルの中にいるようなもの。トンネルの中には逃げ道がないんです。でもお・・・いつかは抜け出る・・・そう、いつかは明るい太陽の下に出ます。しばらく・・・しばらく・・・待ってね。
Posted by 山口ももり at 2009年11月20日 08:50
◆ももりさんへ
 ネットへの接続不良でお返事遅れてしまい、余計にご心配
お掛けしてしまったのではないでしょうか…申し訳ありません。

 ブログ更新より現実の生活を優先しようと思い出したら、
全然書けなくなってしまいました(苦笑) 優先順位付って
難しいですね〜 やらなきゃならないことの間に遊びもチョコ
チョコ入れて上手く出来るようになりたいな〜と思うのですが…

 飾らず見栄も張らず無理もせず、ありのまま…でいきます^^
ちょいと背伸びはしていたいんですけど〜☆
Posted by 山桜 at 2009年11月24日 11:15
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