どんなことがあって、ふいに甦ってきたのかは書きませんけれど、この機会に私の宝物のお話の一つを聞いて下さい。
悲しみの小鳥 〜中国の諺より〜
エリナー・ファージョン作
周郷 博 訳
お金持ちのワンさんのお家に赤ちゃんが生まれました。
リカちゃんという名前をつけました。 お祝いに来たお友達がみんな、
「この子はきっと、誰よりも幸せになるよ。
こんないよいお家にうまれたのだから。」
と、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて寝ているお母さんの所へ来て言いました。 けれども、お母さんはどんな人だって、何もかにも幸せなんていうことは無い、ということを知っていました。
その晩、お母さんがウトウトしてベッドに寝ていると、悲しみの女神様と喜びの女神様とが、手に小鳥を乗せて入って来るのを見ました。 二人の女神様は、ベッドのそばに来て、赤ちゃんの頭に手を置いて、先ず、喜びの女神様が言いました。
「悲しい時には、二つの手でパチパチと手を打つのよ」
それから、悲しみの女神様が言いました。
「嬉しい時は、静かに静かにしているのよ…」
そう言って、二人の女神様は手に乗せて来た小鳥を放して部屋を出て行きました。
リカちゃんは段々大きくなって、嬉しい日や悲しい日が、交じり合って続きました。 リカちゃんの頭の周りには、目に見えない悲しみの小鳥と喜びの小鳥が飛び回ります。 ある時には、悲しみの小鳥の羽の音が、また、別の時には、喜びの小鳥の羽の音が…。
「おかあさん、私は本当に幸せですよ!」
と、リカちゃんは嬉しくてたまらないというふうに叫びました。 するとお母さんは、よく覚えていて、リカちゃんの頭に手を置いて、こういうのでした。
「リカちゃん、幸せな時には、静かに静かにしているのよ。
そうすれば、喜びの小鳥があなたの髪の毛の中に巣を作るからね」
けれども、もしリカちゃんがおいおい泣いて、お母さんの所へかけて来て、
「お母さん、私は悲しい!」
とでも言えば、お母さんは、
「リカちゃん、手をパチパチと打ちなさい。
そうすれば悲しみの小鳥は飛んでいってしまうから。
悲しみの小鳥があなたの髪の毛の間を飛ぶのをとめることは
できないことだけれど、悲しみの小鳥が、そこへ巣を作らない
ようにしましょうね。」
と、言ってあげるのでした。
(おしまい)
このお話しの元になった「中国の諺」って何でしょう?
少し探してみたのですが、そのものずばりはみつかりませんでした。
次のものは半分は近いのではと思います。
性躁心粗者 一事無成
心和気平者 百福自集 (菜根譚209)
ラベル:ファージョン