2006年05月11日

燕子花図と藤花図(根津美術館)

 数年間の修復を終え昨年遂に蘇った国宝「燕子花図」(尾形光琳)
重文「藤花図」(円山応挙)が揃って展示されていると聞き、4月の末、
今は既に(5月8日から)改築の為の3年半の長期休館に入ってしまった
根津美術館にGW中の混雑覚悟、降雨高確立中、向った。

 根津美術館公式HP http://www.nezu-muse.or.jp/

国宝「燕子花(かきつばた)図」 尾形光琳・筆
(図版の無断転載は禁じられていますので下記公式HP内の画像参照)
 http://www.nezu-muse.or.jp/syuuzou/kaiga/10301.html

 先ず上のURLの画像(修復前)とは大違いの色鮮やかさに驚いた。
まばゆい金箔の上に浮かび上がる、群れ飛ぶ青い燕型の花と
燕尾のように颯爽とした緑の線描の揺らぎ・・・。

 一双の屏風の右図では、中央を花の群れがリズミカルな曲線を
描いて横断し、左図では左上から右下への対角線左下側に花の群れ、
右上側には金箔の空間が広がるという大胆な構図…というよりも
これは光琳得意の意匠−デザインの世界だ。

 ある一部分だけを見るのも、一方の図だけを見るのも一興では
あろうが、やはりこれは両方を並べ、しかも屏風として立てた時の
折れの山谷を加えてこそ、光琳の意図を受け止めることが出来る
のではないだろうか。

重文「藤花(ふじはな)図」円山応挙・筆
 http://www.nezu-muse.or.jp/syuuzou/kaiga/10323.html

 「これって新しいの?」と怪訝そうに燕子花図を眺めた後、
同行した我が子は、藤花図の前で動かなくなった。
 「藤、スゴイ。こっちの方が好き。」
 分かる。ああだこうだと言うよりも、好きな絵は好きなのだ。
好きと嫌いとどうでもいいの3種類しかないのかもしれない。

 そしてもう一つ、ぽそっと・・・
 「なんで金色の所は□の模様になってるの?」
どうやらこの子の学校では、美術で金箔のことは教えないらしい。
脂とり紙は使っていても、金箔のことは知らないのだ。
今までちゃんと教えてやらないでいた私も悪かった。
そんなことを知らないでいたということも知らなかった。
やはり、時間をみつけては一緒に過ごす時間をもっと作らねば・・・。

 またやはり子供の目から、藤棚か巻きついている筈の寄り木が
省略されていることにも気付かされた。のたうつ樹や蔓の面白さ
さえも花を引き立てる為の花器、朧な背景の風情に思えてくる。

 枯れ枝のような蔓から、季節を知って萌え出でた繊細な若葉の彩と
零れる紫の濃淡重なる小花の穂。ここに応挙は夢中で心を注いだ。
その気持ちに引き寄せられて動けなくなったのではないだろうか。

 この他には、
 八重桜の花びらや紅葉の重なりが盛り上がるような濃絵手法の
「吉野龍田図」
 高く蹴上げた鞠の桃のような下部だけを描いたり、蹴鞠に興じる
お公家さんの付き人が幕の後で欠伸をして寛ぐ姿を描いたりと妙に
リアルな描写が面白い「蹴鞠図」
 http://www.nezu-muse.or.jp/syuuzou/kaiga/10302.html
 全てが平面的な風景の中、蛇行する急流だけが生き物のように
立体的な鈴木其一「夏秋渓流図」
 http://www.nezu-muse.or.jp/syuuzou/kaiga/10348.html
 季節の花々を一堂に集めて描いた鶴沢探鯨「草花図」
尾形光琳「夏草図」には花好き仲間の親近感。 
私も写真ばかりでなく絵を描こう!

 2階の青銅器展示では「ハウルの動く城」?を発見。
茶器の展示は、お庭の茶席からの流れの方々が多くて降参した。

 お庭に出ると、春雨に洗われた新緑の中に、デジャブの世界が・・・
画像 097.jpg 画像 115.jpg 
         画像 117.jpg 
さらに雨露光る苔の道を下っていくと・・・
画像 106.jpg
池に浮かぶ一艘の小舟型茶室?休憩所?
この中で、今までにどんな物語が生まれたのだろうか?

画像 112.jpg


<<追記 2006-05-23>>
 TBを戴いたTakさんのサイトでは、前期展示「烏図」や絢爛豪華
「吉野龍田図」などが、松風さんのサイトでは、光琳がここの花を
描いたのではとの説がある京都・大田の沢のカキツバタがご覧戴けます!
皆さま、是非クリックして飛んでみてくださいませ。


posted by 山桜 at 00:00| Comment(21) | TrackBack(2) | 美術・書画・工芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは

記事もさることながら、お嬢さんとの関わりがなんだか素敵です。
そして藤の写真のきれいさ。最後の舟。
描かれたものが形としてそこに現れたようですね。
その中を逍遥する・・・うっとりします♪
Posted by 遊行七恵 at 2006年05月11日 18:47
なんてすてきな一日。。。
根津美術館が三年間も休館とは知りませんでした。
情報をありがとうございます。
山桜さんのものの見方はとてもきめ細やかですね。
娘さんどころか私もいろいろと教わっていますよ(^^)
Posted by アンズ at 2006年05月11日 22:58
こんばんは。
コメント&TBありがとうございました。

カラスは飛んで行ってしまいましたが
こちらのブログを拝見させていただくと
藤の花や杜若の花がまさにデジャブの如く
咲き誇っていますね。
丁度お湿り程度の雨も効果的だったのでは?
見納めの日最高の演出でしたね。
羨ましいです。
Posted by Tak at 2006年05月11日 23:30
いつもながら
心が癒されます♪
涙が出てきそう(^^;
素敵な親子されてますね!
Posted by じゅんぺい at 2006年05月12日 02:30
すばらしいお書き込みですね。
根津美術館はしばらく行っておりませんでしたが、休館ですか。

しかし、いつも感じることですが、昔の人が出来たことが、なぜ 今の人が出来ないのでしょう。

文化でも 芸術でも 生き方でも・・・。
Posted by 鎌倉とんぼ at 2006年05月12日 07:37
☆遊行七恵さん、おはようございます。
 いつの間にやら母の元より友達と一緒の方が楽しい年頃に・・・(゜―Å)
この日も、「原宿でお買い物」という餌で釣って高くつきましたが、
きっと来て良かったと思っていてくれると思います^^

 お庭の小道は諸事の都合により、時折通行止めの柵が閉じられ、
娘は小舟の庭に入り込んで出られなくなり、しんとした空間で
一人貴重な彷徨のひと時を得られたようです。
Posted by 山桜 at 2006年05月12日 09:42
☆アンズさん、おはようございます。
 どうも最近もの忘れが多くて、いろいろ思った事感じた事を
書き留めておけるブログの存在はとてもありがたいです。
暫くして検索で自分の書いた記事がヒットして、アレこんな事書いてた?
なんてことも・・・。ですから、これは自分の覚書であり娘への遺書。
読んでくれるかは分かりませんが・・・(苦笑)
Posted by 山桜 at 2006年05月12日 09:50
☆Takさん、おはようございます。
 これもみんなTakさんからの情報のお蔭です。
本当にタイムリーに教えて戴きましてありがとうございました。

 この日は時折激しい雨が降って、何度も傘を買おうとお店に入りましたが、
その度に小止みになって、結局原宿から美術館まで大して濡れずに歩き、
展示を見終わった頃には薄日が差し、雨露に輝く絵画そのものの風景が
目の前に広がり最高でした♪
Posted by 山桜 at 2006年05月12日 09:57
☆じゅんぺいさん、おはようございます。
 そう言って戴けて、私こそ癒されます。ありがとうございます。
子供はどんどん大きくなり、手元から離れていくのが当然なのですが、
その成長の様子を見ているだけで、涙が出てくることもあります。
子供からすれば、鬱陶しいでしょうねぇ・・・(苦笑)
Posted by 山桜 at 2006年05月12日 10:02
☆鎌倉とんぼさん、おはようございます。
>昔の人が出来たことが、なぜ 今の人が出来ないのでしょう。

 物が溢れ、何でも便利・簡単になって、感性も技も鈍るばかりでは
悲しいですね。

 私はすぐに興味が湧いて首を突っ込んでしまう性質ですが、
何倍広く手を染めるより、一つの濃密な集中力の方が
好ましいのではと、最近特に感じております。
非凡な才のあるお方はこの範疇ではありませんが・・・。
Posted by 山桜 at 2006年05月12日 10:19
小船の茶室ですか・・
昔子供が小さい時、味噌樽を茶室に改造したもの?を気に入り、買ってくれとせがみ、お店の方も“お安くしておきますので・・”と、話が進みそうになって困ったのを思い出しました。
Posted by 酒徒善人 at 2006年05月12日 17:46
わ〜o(⌒▽⌒)ノ♪♪
さくらん、いつものことながら
素晴らしい記事に感動したよ(*^^*)

なんかね、最後の最後に小船の画像を掲載した所で
ほんと、ツボにはまったの!!
今までは自然の図なんだけれど、
それは次第に鑑賞をする親子の心の中へと入っていき、
デジャブという見えない世界へ飛び
最後に小船という、侘びた世界。
まさか最後にもののあはれの世界が展開するなんて!!

わけわかめだよねo( ̄▽ ̄)oごめ〜ん(笑)
Posted by やゆよ at 2006年05月13日 02:05
最後の一文、私のコメントが訳わかめでごめんね、って意味だよ(^^;)
ま、もうちょっというと、最後は偉大な宇宙に漕ぎ出す、
小さな船、小さな命。
でも、何だか明るいあたたかい世界なの。
母から子へと流れる、小さくて、でも尊いもの。
それを一言で侘びというのかどうかはわからないけれどさ(^^*)
Posted by やゆよ at 2006年05月13日 02:07
☆酒徒善人さん、おはようございます。
 味噌樽の茶室。。。何だか○○桶みたいじゃ・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
子供って狭い空間に入り込むのが好きですよね。
ダンボールで家を作っやった時、大喜びしてたのを思い出しました。
子宮回帰願望…なんて言う人もいますね^^
Posted by 山桜 at 2006年05月13日 07:45
☆やゆよん、おはよう。
 展示といいそれに合わせたようなお庭の風情といい、何だか完璧・・・
自分とはかけ離れた世界に迷い込んじゃったかと溜息がでそうな所に、
ぽかりとこの小舟が現れて、その豊かな遊びの心にホッとしたの♪

 お庭を逍遥している間にいつの間にか離れ離れになってしまった娘が、
道に閉じ込められて、この小舟のある空間で暫し呆然としてたと思うと、
必然的なご縁を感じて、この日の思い出のラストに是非載せたくて。

 きっと二人とも、一生忘れない光景だと思うから。
Posted by 山桜 at 2006年05月13日 07:57
味噌樽、○○桶より私は酒樽が一番いいです。
でもその茶室、かなり大きくて運送料がかなりかかるってことでした。あの時思い切って買っとけばよかったって今そう思います。
飲兵衛が幻を見たので心配をお掛けしたことお詫び申し上げます。でも嬉しかったです!
Posted by 酒徒善人 at 2006年05月13日 20:49
根津美術館、しばらくお別れ〜ですね。
美しいお庭の様子、名残おしみました。
いい美術館で気に入っています。
Posted by m-tamago at 2006年05月14日 22:04
☆酒徒善人さん、おはようございます。
 そうでした!味噌樽とか酒樽は梯子を掛けて上る程大きいのでしたね。
私の想像はちょっとスケールが小さすぎでした(^▽^;)>
底面積は何畳位あるのかしら? お味噌の匂いは無いのかしら?
今もどこかのお宅にあるのでしたら、一度覗かせて戴きたいです。
 若し、今度、酒樽の茶室が出たら買いですね♪
あ、お酒とお茶はマズイのかな・・・?
Posted by 山桜 at 2006年05月15日 06:48
☆m-tamagoさん、おはようございます。
 季節の貴重なお茶道具の展示が素敵でした。
m-tamagoさんは、このお庭のお茶席に参加されたこともあるのでしょうか?
外からではなく、中から経験されたことのある方がとても羨ましいです。
Posted by 山桜 at 2006年05月15日 06:58
根津美術館、休館してしまったのですね。
しばらく訪れていなかったけど、さくらんの
紹介文をみて、とっても行きたくなりました。
素敵な連休をすごしたのね。
いつもながら素敵な文章に感動します。
本当にその感性を少し分けて欲しいです^_^;
Posted by そら at 2006年05月16日 19:56
☆そらっち、こんにちは。
 折角のこちらのコメントに気付くのが遅れてごめんなさい!
 根津美術館の休館はかなり長くて残念だね。
でも、その期間、収蔵品があちこちに展示される機会が増えるかも?

 拙文を読んで感動して戴けたなんて、恥ずかしいけど嬉しいな。
実はこのレポ、連休後半に出掛ける前に一度9割方書き上げて、
写真を貼り付けようとした時に、ミスって消しちゃったの。
だから、最初に書いたときとはかなり違っているんだ。
娘とのことが増えたかも・・・それはそれで、思い出になって
よかったかもしれないと、今は思うよ(*^^*)
Posted by 山桜 at 2006年05月17日 12:05
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