
「ナガミノヒナゲシ」と「ナガミヒナゲシ」どちらがこの花に
相応しい名前なのかと、多くの人にはどうでもいいようなことを
勝手に思い巡らしているうちに、植物の名前の中の「の」の字には、
何通りかの意味の違いがあることに気が付いた。
1.「野○○系」
野生の、野原の、野良の=人の役に立たない 等の意。
<例>
長実野雛芥子(ナガミ・ノヒナゲシ)
烏野豌豆(カラス・ノエンドウ)*1
烏野胡麻(カラス・ノゴマ)*1
雀野豌豆(スズメ・ノエンドウ)*2
狐野牡丹(キツネ・ノボタン)*3
鬼野芥子(オニ・ノゲシ)
*1:烏には野と同じく「役に立たない」の意もあるが、上記二つの
植物については、後にも野がついていることもあり、前者は実莢が
黒い、後者は茎が黒いなど「黒い」の意の方が強いと思われる。
*2:雀にも「役に立たない」の意があるが、ここでは烏より小型、
「小さい」の意の方が強いと思われる。カラスノエンドウとスズメノエンドウ
の間の大きさ故に「カスマ草」と名付けられた野豌豆もある。
*3:子供の頃、金平糖のような実が成るから狐の釦(ボタン)と
思ってた人いますよね? 私だけ?
ここで気付くのは、野を付けられた植物は、芥子・豌豆・胡麻・牡丹
と、皆人間にとって馴染みのある大切な植物であるということ。
つまり、似ているけど役に立たない野良ものを区別する意味が
あるということだ。
2.「所有格系」
○○のもの、○○の為のもの ○○地方の 等の意。
例: 犬の陰嚢(イヌのフグリ)
狐の剃刀(キツネのカミソリ)
継子の尻拭い(ママコのシリヌグイ)
雀の鉄砲(スズメのてっぽう)
蝦夷の立金花(エゾのリュウキンカ)
3.「形容詞系」
○○という特徴のある 等の意。
例: 白花の蛇苺(シロハナのヘビイチゴ)
秋の麒麟草(アキのキリンソウ)
卯の花(ウのハナ)
現の証拠(ゲンのショウコ)
小葉のガマズミ(コバのガマズミ)
2.3.の系統では、「の」抜きも多く見られる。 <例>
烏瓜(カラスウリ) 語源諸説あり、また場を改めて。
狐薊(キツネアザミ)
河原撫子(カワラナデシコ)
薩摩芋(サツマイモ)
語呂・語感の良さの問題か、命名者の好みの問題か。
ここで、はたと思い出したのは、相撲の醜名(四股名)。
「若乃花」「三重ノ海」「北の湖」・・・ の・ノ・乃の字があって
之の字が見当たらないのは何故?
何となく足が流れて縁起が悪そうだから?
話が横道にそれてしまったが、「の」の字が間に挟まると何となく
一呼吸の間ができて、ゆったりと和むような気持ちがする。
「の」が無くても意味が通じるなら、「の」抜きが合理的なのかも
しれないが、私は「畳にのの字を書く」ように、ひっそりと和な
「のの字あり」を支持していきたいと思っている。
<<追記 1>>
のの字といえば、宮崎駿監督のヒットアニメのタイトルには必ず
入っていることでも有名だ。
「風の谷のナウシカ」「となりのトトロ」「天空の城ラピュタ」
「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」等等。
(同じジブリでも高畑勲監督は、特にのの字にはこだわっていない。)
<<追記 2 2006-06-04>>
コメントを戴いてお返事を書く間に、のの字・音の言霊・音霊の
力を思うようになってきた。
祝詞ということば自体、「宣(の)ることば」であるし、のの音が
沢山使われている。
筑紫の 日向の 橘の小戸の 阿波岐原に・・・
また歌聖・柿本人麻呂も
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の・・・
と、まるでのの繰り返しを楽しむように歌っている。
【気になること思考の最新記事】
☆山桜さん へ
京都はやっと気温が上り、熱くなってきましたよ。
面白いレポートです、興味深く読みました。
山桜さん、いつもながら着眼点がユニークで不思議、本当にすごいです。
私は「の」の字を連発する文章を書く癖があります。
美辞ならべて悦に入るナルシストの典型の「形容詞型」人間かな。
体重とは反比例する精神の軽さ「野・烏型」かも…。
ヒナゲシの実を観察してみますね。
今年は関西の方が季節の訪れが遅くて、不思議な現象ですね。
どうでもいいようなことでも、一旦気になりだすと止まらなくて、
何をしててもつい考えてしまうのです。 困ったものです(笑)
のの字連発と言えば、祝詞もそうですね、「宣(の)る言」ですから。
「筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に・・・」
のの音が奏でる響きがとても心地よく思えます。
思いもつかなくてびっくりΣ( ̄□ ̄)ノ
の、を多様すると視点が絞られてくる感じだもんね♪
遠くの、山の、清水の湧き出る、
小さな小さな木陰の下の・・・
どんどん見る眼がマクロからミクロへ。。。
面白いね♪
うちの庭の一帯の(笑)
長実野雛芥子はもうぽつん、ぽつんになってるよ。
また来年楽しみにしてるんだo(⌒▽⌒)o
今日は家族が出払ってしまったので、余計ボーっと考えちゃった(笑)
あしびきの〜 やまどりの〜おの〜 しだりおの〜 って、
「の〜〜ぉ」を伸ばした音ってなんだかじ〜んと心にしみるよね。
「の」の言霊・音霊の力を感じるなぁ・・・
山桜さんは発想が豊かで、すばらしいなぁ。
>子供の頃、金平糖のような実が成るから狐の釦(ボタン)と思ってた人いますよね? 私だけ?
わたしの子ども時代は、みんな狐のボタンは毒があるって思っていて決して触らなかったんだけど、毒があるって本当だったのかな??
もっと何か人の役に立つような発想ならいいんですが・・・(^▽^;)
キツネノボタンはキンポウゲ科の有毒植物です。 皮膚の弱い人なら
触っただけでかぶれることもあります。しかも芽生えの頃の葉は
特に牡丹と言うよりも「芹」に似ているので、誤食しないように昔から用心して
「触らないように」と伝えられて来たのだと思います。
(誤食すると消化器系の粘膜がただれ、胃痛や下痢を起こす。)
プロトアネモニンというこの毒は、ラナンキュラス、クリスマス(レンテン)ローズ、
クレマチス等のポピュラーな園芸種にも含まれているので、知らずに触って
かぶれてしまっている方もいらっしゃるかもしれませんね・・・。
声に出して発音してみると、くぐもった中途半端な音ですが、まろやかで安心感のある音でもありますね。
きつねの釦、やっぱり毒だったんですね。
すっきりしました。
ありがとうございました(^^♪
一つ一つの音の奏でる響きがとても愛おしいですよね^^
「の」は他の音と他の音をつないで和ませるようないい子です。
また、「の」と短い発音だと鼻に掛かった優しく心地良い音ですが、
伸ばして「の〜〜ぉおお」と発音すると、力強さも沸いてきますね。