2012年05月26日

ボストン美術館「日本美術の至宝」

 金環食に日本中が沸き立った翌朝、上野の国立博物館・特別展「ボストン美術館・日本の至宝」へ、何かを清め流すように激しく降る雨を受けながら、行って参りました。 雨の日の平日にも関わらず結構な人出、里帰りした日本の至宝への歓迎の思いの強さでしょうか。 日本人が日本文化を愛する心の高まりが嬉しいです。

 何といっても、日本にあれば国宝級の至宝が明治維新や大震災や大恐慌の中、異国へ脱出し保存状態よく現在まで生き延び里帰りが叶ったのも、審美眼に優れたフェノロサやビゲローや岡倉天心のお蔭で、人がその生きた時代に成すべき使命・ご縁の連鎖=運命の奇跡を考えました。

 先ず、至宝の恩人、ビゲローの肖像(伝小林永濯筆)や岡倉覚三(天心)像(平櫛田中作)がお出迎え。
天心先生のお顔って、拝見するたびに誰かに似てる…と思うのですが、誰かがビシッと浮かんでこなくてモヤっとします。 今回、遊行七恵さんのブログで「現在のジュリー説」に、『確かに〜(笑)』とハタと膝を打ちましたが私の中の「あの人」ではないのです。 誰だったかな〜??

 パンフ掲載の注目作品が目白押しの中、一番最初に強く心に留まったのは、まるで昨日の「金環食」が仏の姿へと昇華・化身したかのような「一字金輪像」でした。 画像は「文化遺産オンライン」でみつけましたので、興味のある方は下のURLをクリックし、リンク先ページへ飛んでご覧ください。

【一字金輪像:鎌倉時代】「文化遺産オンライン」より
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=38241&imageNum=1
 光の中に浮かぶ透明感のある美しい仏様です。 日食というと、何か不吉な予兆のように感じられてぞわぞわしていた心が、この仏様の像を拝見できたことですうっと和らぎ救われました。 ぜひ、画像を大きくしてご覧ください。

普賢延命菩薩像.jpg
【普賢延命菩薩像:平安時代 12世紀中頃 】
 病を消し生命力を増すという菩薩さまへ…切なる祈りを込めて。
 三頭の象さんが片っ端から病根を引き抜いてくれそうな…。

【吉備大臣入唐(にっとう)絵巻:平安時代 12世紀後半】
http://www.boston-nippon.jp/highlight/02.html
(↑ 展覧会HPのこのページで、柱の陰からこそこそ覗き見やら、お空をひとっ飛びやらのオモシロシーンを垣間見られます。 本当に日本人ってオモシロ好き・笑い好きですよね〜♪)

 遣唐使・吉備真備が入唐直後に幽閉された楼閣で、以前唐で客死し今は幽鬼となった阿倍仲麻呂に会い、その霊力の助けを得て、唐人の出す難問に立ち向かっていくという物語絵巻。 大河ドラマ「平清盛」で活躍中、山桜贔屓の松田翔太さん演ずる後白河法皇が制作させた絵巻コレクションの一つだそうです。 
<若狭国松永庄(現在の福井県小浜市)の新八幡宮⇒酒井家に伝来⇒大正12年(1923)売りに出されるが、大震災や大恐慌で9年間買い手つかず⇒昭和7年(1932)ボストン美術館所蔵>
 
絵巻平治物語.jpg
【絵巻平治物語・三条殿夜討巻:鎌倉時代 13世紀後半】
 こちらはその後白河法皇が絡んだ「保元の乱」の三年後、源平争乱の幕開けとなった「平治の乱(1159)」での藤原信頼・源義朝軍による後白河法皇拉致と三条殿焼打の様子。 その約100年後の制作でもとは15巻近い大作が、現在は3巻と切断された色紙状態の数葉のみ現存。 
<三河国西端(しばた 現在の愛知県碧南市)の本多家に伝来?⇒美術市場に放出⇒フェノロサの手を経てボストン美術館の所蔵>

 武士の雄叫び、刀と刀のぶつかり、馬の嘶き、炎のメラメラまで聞こえてくるような活写絵巻です。 吉備真備の絵巻のような妄想力満載ものとは違い、とても想像では描けそうにありません。 

屏風松島図.jpg
【屏風松島図:尾形光琳 江戸時代 18世紀後半】
 静謐に浮かぶ松島の島々と逆巻く荒波。 光琳らしく図案化された中にもなお生き生きとした躍動感があります。 津波もこのように絵の中に封じ込められたら、少しは大人しくしていてくれるでしょうか。 

鸚鵡図.jpg
【鸚鵡図:伊藤若冲 江戸時代 18世紀後半】
 はっきりとした色合いや精緻に描き込まれた若冲の絵は苦手だけれど、この初期の作品は絞り込まれた構図で、鮮やかな止まり木?に真っ白な鸚鵡が清楚に浮かび上がり、撫で撫でしてヒマワリの種でもやりたくなる愛らしさです。 

虎渓三笑図屏風.jpg
【虎渓三笑図屏風:曽我蕭白 18世紀後半】
 廬山に隠棲した東晋の僧・慧遠(えおん)を尋ねた陶淵明と陸修静。 三人で話に夢中になっているうちに、慧遠が渡らぬと決めていた俗世への架け橋をうっかり越えてしまったことに気付いて大笑している場面だそうで、見ているこちらまで思わず噴出してワハハな気持ちになってしまいます(笑)

雲竜図.jpg
【雲竜図(襖絵):曽我蕭白 18世紀後半】
 襖から剥がされた状態でボストン美術館に渡り、このたび修復され公開が叶った作品。 本来は頭と尾の間に胴体部分があったらしい。 それが欠けた為に却って迫力が増しているように思えるのはミロのヴィーナス的効果でしょうか。 蕭白の描くものには、それぞれの個性や思いが表情として良く表されているようで、この龍もどこか自分の持つ破壊的な力を持て余し困惑しているようにも見えました。 

小袖白綸子地松葉梅唐草竹輪模様.jpg
【模様小袖白綸子地松葉梅唐草竹輪:江戸時代 18世紀】
 他の作品にも言えますが、恐らくボストンに渡らないでいたら、このような美しさでは現存していなかったことでしょう。 日本の美を愛し完璧に保存していてくれた彼の国の人々に感謝です。 



posted by 山桜 at 12:27| Comment(11) | TrackBack(0) | 美術・書画・工芸 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 先日、日曜美術館で拝見しましたが、本当に有難い事ですね-☆♪ 
感謝感謝です! 一字金輪像もUPして下さり有難うございましたm(_ _)m
 確か今回は、珍しく九州の福岡にも巡回するそうなので、山桜さんの
感激を、私も直に味わえると思うと今からワクワク楽しみです-☆
Posted by メダカの目 at 2012年05月28日 22:56
此の絵巻平治物語・三条殿夜討・・・此の炎と煙の描写は世界に例を見ませんね。凄い!!!ホンモノは見たことがないと思いますが。書道をやっていますとある程度は古い絵巻とかも読めるようになりますよ。尤も、ほとんどが漢文なので、難しいですけど・・・少しでも読めると嬉しいものです。
Posted by 山口ももり at 2012年05月29日 09:44
◆メダカの目さんへ
夏の団キャンプの実踏に富士山麓へ行って戻ってきたら、家人の具合が思わしくなく…お返事遅れてすみません。 やっと少し快方に向かっています。

かなりの人出ですので、お時間が許されるなら、ベンチで休み休み、空いた作品からゆったりご覧になられるのがお勧めです冷や汗
Posted by 山桜 at 2012年05月30日 17:19
◆ももりさんへ
炎や煙を絵に留めようとした画家のそれこそ炎のような執念と燃える眼を感じました。 良く見れば、どこが火元でどう燃え広がっているのかまで分かります。(山桜の勝手な妄想ですが)

お蔭さまで最近、茶掛が大分読めるようになりました。 辞書上の知識としてでなく、自分で書いたことのある文字は、書家の個性的崩し書きでも、何となく分かるものなのですね! 目の前の靄が晴れ視界が広がっていくのが嬉しいです。
Posted by 山桜 at 2012年05月30日 17:32
さくらん、こちらの記事のコメントも拝見いたしました。
お体のお具合心配ですね。どうぞ、こちらのお返事はお気になさらずにお願いいたします。

先日はすてきなひとときをご一緒させていただけて(予定まで変更して下さって。。。本当にありがとうございました。
あの金環とそれらに連続する物語。。。
人生の不可思議さを改めて肌で感じることとなりました。

こちらでのご挨拶が遅くなってしまってごめんなさい!
富士山などへのお出かけもお忙しいご様子でしたのに、
三波伸介さんのブログにまであたたかいコメントを頂いて。。。(正直涙が出ました)
いろいろといつもいつも、有形、無形に頂いてばかりでお恥ずかしく思います。
これからもゆるーく末ながーく、こんな不出来な人間ですが、ご指導、ご鞭撻を兼ねて(笑)仲良くしてやって下さいませ。m(_ _)m

まずは御礼まで☆
Posted by やゆよ at 2012年06月01日 02:35
◆やゆよんへ
 心配かけてしまいごめんなさい。 一応風邪の診断で喉の痛みが酷くて水を飲むのも難儀し、とうとう一週間お休みして家で養生となりました。 やっと少し痛みが薄らいでお粥以外のものが食べられるようになり、ほっと一息です。

 こちらこそチケットまで頂戴し貴重な時間を共有できてラッキーでした♪ ありがとうございます。 本当にご縁の繋がりゆく物語のような展開にワクワクするね!

 二代目三波伸介さんのブログを初めて拝見してみたら、やゆよんとくまモンが一緒に登場しててビックリ! 思わずコメント書いてしまったよ^^ やゆよんの行動力すごいよ〜 今回特に頑張り過ぎててちょっと心配…大丈夫だったかなぁ?

 こちらこそ緩やかに末永く宜しくお願いしますね〜(^0^)ノシ
Posted by 山桜 at 2012年06月02日 22:45
こんにちは
「あのヒト」思い浮かびましたか?
やっぱり現在のジュリーでいきましょう〜

内覧会にお邪魔させていただいたとき、ラストの蕭白の龍のところに辻先生がおられ、そばの方とお話されてるのをそっと聞かせてもらいまして、龍の修復のことなど「おおおっ」でした。

この展覧会は本当にいいものが多かったですね。
Posted by 遊行七恵 at 2012年06月06日 17:02
◆遊行七恵さんへ
 う〜ん、今のところ一番似ているのは、太ってしまった昔の友達で、次点は一番太ってた時の中村雅俊、後は細川元総理とか…?? 今のジュリーは、見なかったことにして記憶から消去されてるので思い出せないんです。

あの作品群を選んでくれた彼等の審美眼に感謝ですね!
Posted by 山桜 at 2012年06月07日 16:36
◆七恵さん!

>岡倉天心先生が誰かに似ている…

 さっき、ピカッと思い出しました!
 特に銅像のお姿なんですけど、

 クレージー・キャッツのハナ肇さん

 もう亡くなられているし、七恵さんお若いのでご存じない?
Posted by 山桜 at 2012年06月08日 11:35
視界が広がっていく・・・うれしいなあ。ケロさん、今何処を歩いてらしゃる???
Posted by 山口ももり at 2012年07月10日 10:49
◆ももりさんへ
 気づくのが遅れて申し訳ありません!
ケロは先ほど無事一人旅より帰還しました。
京都のお菓子が美味しくて夕飯前にパクパク食べてしまいました。
Posted by 山桜「 at 2012年07月10日 18:58
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