「仏像 一木に込められた祈り」展 を拝観して参りました。
会期限定かと思いますが、詳しくは↓HPをご参照下さい。
東京国立博物館HP(写真は「絵葉書より」以外はこのHP内のものです)
http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=A01&processId=02&event_id=3460
読売新聞HP
http://event.yomiuri.co.jp/2006/butsuzo/works.htm
第一章 檀像(だんぞう)の世界 (唐7世紀〜奈良9世紀)
インドで最初の木の仏像は「白檀」を使用。
白檀の自生がない中国では「栢木(はくぼく)」を代用、栢木の自生がない日本では「栢(かや)」を代用したとのこと。
白檀、栢木、栢の共通点は、材が緻密で良い香りがすること。少しでも仏像の香りがきけはしないかと鼻を研ぎ澄ましましたが、香水を身につけられたご婦人の背後ではそれも徒労。それでも微かにしたようなしないような…。
この時代の仏像は頭が大きく手も長いのに脚は短く足もとても小さいという不思議なバランスでした。重要と思われる部分に力が注がれた結果なのでしょうか。
重要文化財 十一面観音菩薩立像
唐時代・7世紀 像高42.1cm 東京国立博物館蔵
第二章 一木彫(いちぼくちょう)の世紀 (奈良8〜平安9世紀前半)
(絵葉書より)
国宝 十一面観音菩薩立像
平安時代・9世紀 像高194.0cm
滋賀・向源寺蔵(渡岸寺観音堂所在)
中国伝来の緻密な香木仏像への憧憬と日本古来の信仰、神様の依代
としてのご神木への信仰が相まり、日本での一木彫文化が花開いた
時代のようです。
木に宿る神性を木の中から彫り出そうとするような、仏師があたかも
ノミではなく心で彫り研ぎ上げたような崇高な魂の触れ合いを感じます。
頭上に浮かぶ様々な面ざしも、違和感なくそこに存在しています。
額の上には仏の化身でしょうか、小さな僧の姿が浮かんでいます。
今回は寺外初公開とのことで、360度ぐるりと拝観できるように
ライトアップされつつ、私達に慈愛の眼差しを注いで下さっています。
第三章 鉈彫(なたぼり) (平安10〜11世紀)
最初拝見した時には、仕上げ前の途中のものかとも思われましたが、わざわざこのノミ跡を残しているということは、ご神木からゆらゆらと仏様が姿を立ち上らせるような、光の表現をしたかったのかもしれないと思いました。
言うなれば、彫刻の印象派でしょうか…なんとなくスーラ、シニャック達のような点描画を思い浮かべてしまいました。
重要文化財 十一面観音菩薩立像
平安時代・11世紀 像高180・7cm
神奈川・弘明寺蔵
そんな風に木漏れ日の降り注ぐ中を歩いている気分をガーンと
打ち払ったのは、こちらのピカソもびっくりの顔面脱皮です!
重要文化財 宝誌和尚立像 京都・西往寺(絵葉書より)
…衝撃で言葉を失いました。
この他にも、正面から見れば確かに柔和に微笑んでいるのに、
側面からは憤怒の表情を浮かべて見える仏様もいらっしゃいました。
これらは立体キュビズム? 日本の彫刻家恐るべしです。
第4章 円空と木喰(もくじき) (江戸17〜19世紀)
最後は対照的な作風の庶民派仏師、円空(1632−1695)と木喰
(1718?−1810)の作です。 生きた年代は違いますが、二人とも
日本中を旅して沢山の独自のスタイルを持った仏像を造りました。
解説には「江戸時代の村の人々の祈りに寄り添った像」とあります。
円空の像はナタで割った木の断面、ノミの跡も残したままです。
この3体の像も背面は木の肌が残ったままで合わせると、元の丸太の形になるのだそうです。
龍王と名付けられた像はもとより、中央の観音菩薩も龍体のように思えます。 水を勢い良く吸い上げる高木は龍神様として崇められることが多いですから、正にご神木から仏の姿が生まれ出ずる瞬間を捉えたかのようです。
善女龍王立像175.6cm・十一面観音菩薩立像
221.2cm・善財童子立像174.6cm
円空作 江戸(17世紀)岐阜・高賀神社蔵
ずっと十一面観音菩薩像に注目して見てきましたが、時代による
お姿の変遷が面白いですね。 その時の人の心を映すのだとしたら、
現代の十一面観音様はどのようなお姿に映るのでしょう…。
一方、木喰の像の表面はなめらかで、頬っぺたが盛り上がりふっくらと丸っこい姿をしているものが多いです。
私は木喰の群像の前に来て、なんだか外国の旅から戻り、急に日本の素朴な村の人々に巡り会ったような気持になりました。(木喰さんがお好きな幽黙さんが手を振りながら迎えに出て下さったようにも感じましたよ^^)
ついでに、私の勝手なイメージだとこのお二人、作風からして「円空・木喰」の名前は逆なんじゃないかなぁ…こういうのって試験で間違えやすいんですよねぇ…^^;
2006年11月14日
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Tracked: 2007-10-01 05:57
やっぱりご近所のは素晴らしい・・・
春になれば、滋賀県北部にある観音を巡ってみたいと考えています。
仏像が大好きです!
確かにS寺の観音様は素晴らしいですね! 今回その面差しに
似ている仏像がいらしたのですが、何も控えて来ず残念。
今見られる範囲を探すと、橘寺の伝日羅立像かなぁ…
博物館で見た時はもっと「似てる!」と思ったんです。
違う仏像だったかもしれません…。
あ、紅茶の書き込みを見てくださったのですね〜♪
京都にお住まいなんて、本当にうらやましいです。
燃え上がる紅葉、素晴らしく綺麗でしょうね〜いいなぁ…
でも、東京にも未だ知らない良い所、良いものが沢山あると
思うので、もっと足元も見ないといけないなと、最近やっと
気付き始めました。 いつか東京へ行ってみたいという方も
沢山いるのですものね。
コメント拝見させていただきました。
はい、ハエという魚ははそちらでいうところの
ヤマベのことです。
それから、この写真は単に母が逆さ向けで撮影しただけです。
イナバウアー盛りなんてことはこちらでも
しないですので安心してください(なにを?)。
ほんまに里人が守って
ここまで生き延びてきはった観音さんばかり
お寺の扉は閉まっているけれど
電話したら当番の人が開けにきてくれる
みんなニコニコ
よううちの観音さん拝みに来てくれはったなあ
そんな温かいお迎えをしてくれはります
居ながらにして、これだけのものを目に出来るとは、、、。
勿論実際に拝む事が出来たなら、これ以上の喜びはありませんが、
山桜さんが、貴重なお写真を紹介して下さる事で、込められた祈り
まで伝わってくる様で、ただただ感謝です。m(__)m
実際に群像の前に立つと、鳥肌が立ち、心が安らいでくるような気が致します。
いやぁ。すごいです。カッコイイというか!
Picassoもびっくり!太郎さんもびっくり!って感じ
でしょうか(笑) 他のもいろいろよかったけど
すべてぶっ飛びましたね〜。写真買ったけど
どこに飾るんだぁ??
それにしても同じ日に同じ空間にいたなんて
それにもびっくりです!
今日は汐留で重森三玲の庭展をみてきたけど
これまたすごいぶっ飛びでしたぁ!
日本美術って、日本の美術家ってカッコイイ!
祈りの対象なる仏像なれど
昨今は予も鑑賞の対象となりぬ
一つ一つの仏像に込められたる人々を救はんとする仏への熱きおもひと信仰の深きを くはえて極まりたる彫刻が技術を 合掌しつつ味はいたるあかひとなり
数多の仏像の紹介 いと有難し
顔面脱皮す仏像に予も強き衝撃を受けたる
以前 いずれの御方かの武露倶に紹介されしちひさき画像にて知識もてれども 姫が紹介せる画像の大きくして鮮明なるに 予 合掌しつつ その異次元の世界に浸りぬ
ようこそお越しくださいました!<( _ _ )>
なるほど、お写真を逆から撮影されたんですね、あれ、
でもそれだと、頭が右だったことになりませんか〜?
ヤマベは父がよく釣っては、川岸に作った小さな池に泳がせ
見せてくれたので、懐かしい魚です。天ぷらでしか食べたこと
が無かったような…甘露煮も美味しそうですね^^
また時々HP拝見させて戴きに参りますね。 コメントを書く
欄が見つからなかったのですが、どこかにありましたか??
普段はこういう風に話されておいでなのでしょうか…
何度も読み返して、柔らかな調べにうっとりしていました。
仏様は本来こういうところに一堂に集めて拝観するべき
ではないのでしょうね。 ずっとよくぞ旅をされてこちらに
お出で下さいましたと、そっと合掌しながら回り
ました。
私の好きなものを一緒に喜んで戴けてとても嬉しいです^^
ブログがあるお蔭で怠け者の私でも、こうして見て来た
ことを忘れないように、またじっくりと背景などを確かめ
ながら記録を残すことが出来、ありがたいことだと思います。
何しろ、記憶装置がかなり傷んできておりますので、すぐに
忘却の彼方に…嗚呼!
西洋の芸術家と発想や目指すものが似ていても、日本人は
その表現方法に調和がとれているよね。 何と言おうか…
上品で破綻がない。 そこがつまらないと感じる人も
いるだろうけど、私はそこが好き^^;
ほとばしる情熱も美へと昇華していく境地、憧れるなぁ…
まさかそらっちが平日空いていたなんて、思ってもみず、
声も掛けずにいてごめんね。 時間も一致してたのかな?
ホント、ビックリ(@@;)ノノだったね〜!
昨日はすっごく寒かったね。冷え冷えだったでしょ…
重森三玲のお庭ってどうやって展示してるの? お写真で?
まさか再現してるの?
宝誌和尚像は、今回の展示のテーマ「一木彫」の精神を
具現してらっしゃるかのように思いました。
一木に向いて、木の中、そして同時に自分の中の仏性を
具体的な形に結晶させていく過程と、木の中から和尚、
和尚の中から仏様の姿と生まれ出でる過程が、私の中では綺麗に
一致しました。
「宝誌和尚立像」
フランスの言語学者ロラン・バルトは、
日本文化論『表徴の帝国』の
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480083073/sr=8-1/qid=1164841827/ref=sr_1_1/250-2216540-8735439?ie=UTF8&s=books
“包み”の章で、
表徴とは裂け目である。
そのあいだから覗いているものは、ほかならぬ
もう一つの表徴の顔である。
と、この図版とその意味をいっていました。
わたしは、言語学を専門に勉強していないし、仏像美術にも詳しくないのですが、
このように解体して鑑賞してみるのも楽しいかも。と思いました。
他の章も、とても興味深い本です。
山桜さんは、表千家でお稽古されているのですね。
わたしも表千家です。
最近、お茶道関係のブログを綴っていらっしゃる方がたくさん居られる事を知り、
あちこち、興味深く拝見させていただいている次第です。
もう少しいろ上達したら、わたしもお茶道日記を綴ってみようかな。
さすが、m-tamagoさまのお友達、造詣が深くていらっ
しゃいます。 ご紹介の本、書評を拝見するとなかなか
私などには読み解きが難しそうですが、日本を知って日が
浅い外国の方の目から見た日本がどのように映ったのか、
興味深く、読んでみたい気持になりました。
ありがとうございます。<( _ _ )>
お茶道日記、始められる時にはぜひご一報下さいませ。
私としてはあまり上達されていない時のことも伺えると非常に
心強いのですが・・・^^;
「宝誌和尚立像」の画像を見たときに、
お〜っと思い、勢いで書いてしまいましたものでして・・・
もしも、押し付けのように感じられてしまったなら、ごめんなさい。
>お茶道日記、始められる時にはぜひご一報下さいませ。
はい。ブログを立ち上げたおりには、お知らせ致します。
山桜さんの「天地に遊ぶ」というコンセプト、とても素敵ですね。
はてさて、わたしはどのようなコンセプトで書こうかしら・・・。とても勇気が要ります!
それではまた、おじゃまさせていただきます。どうぞよろしくお願い致します。
>もしも、押し付けのように感じられて・・・
とんでもない! こうして自分の興味があって取り上げた
事柄に関連して、他の方から知らなかったことを教えて戴け
る幸せを感じておりました。 本の表紙がこの和尚さんの
アップなんですもの、私だって知ってたらお〜っと思います!
本当に教えて下さってありがとうございました。又いつでも
情報お待ちしております^^
いきなりブログを公開するのに勇気が要るようでしたら、最初は
「非公開」を選択することもできるので(Seesaaブログでは)
暫く練習されてから公開されるのも一つの手かもしれません。
こちらこそどうぞよろしくお願いします。
心強いお仲間がまた一人増えてとても嬉しいです!