2006年11月15日
炉開き・初茶事稽古(三)
◆懐石
香合の拝見が終わると、次は懐石です。
「懐石」とは、茶事の主である濃茶をより美味しく戴く為、また 胃への刺激を少なくする為にすすめられる軽いお食事のこと。 元々は禅僧が空腹をしのぐ為に懐(ふところ)に温めた石を抱いたという話から発生した言葉ということです。
丁度お昼前の時間でもあり、静かな中、お腹の音が響きそうで困っていた所…亭主の「粗飯を差し上げます」の声は天の助けです!
正客から順に運ばれてくるお膳を、
・一膝前に出て受け取り一礼、膝前、敷居の向こうに置きます。
・一膝後に下がり、次客へ「お先に」のご挨拶をします。
・お膳を膝前に取り込みます。
最初のお膳には、少量のご飯、汁物、向付。 この最初の少量のご飯は、先ずは炊き立てをどうぞとのおもてなしなので、待ってましたとばかりパクリと戴かずに、後で飯次(飯器)が回ってくるまで、一口分ほど残しておきます。
これは日常のおかわりの時と同じですね。 お茶碗を空っぽにしてしまうと『お腹が空いてるのにおかわりは未だ?』と催促しているようで卑しいと子供の頃に教わりましたが、今はどうなのでしょう? 少なくとも懐石の中では残っているお作法のようで安堵致しました。
お碗の蓋の開け方、置き方、お箸の取り方、置き方…細々した所作が色々ありますけれど、今回は書ききれないので省略致します。
お献立: 向付 柿膾(なます)(柿をくり貫いた器で)
御飯 むかご御飯
汁 鯛 大根 青菜
お酒
焼物 鮭 アスパラガス
強肴 カジキ鮪? 里芋 椎茸
吸物 切昆布 鰹節
香の物 小茄子 蕪 野沢菜
これらのお料理は香の物まで、全て先生の手作りの品々です。 御飯はホカホカ、お汁は熱々、焼物も煮物も一番美味しい頃合を見計らって出され、どれもこれも温かな優しい先生のお心が籠もり、本当にしみじみ美味しゅうございました。 どんな料亭の高級なお料理も適うものではありません。 私は涙が出そうでした…。
付記:思い出したので忘れぬうちに書いて置きます。
銘々のお膳に用意された杯はまるで茶碗の雛形そのもの、
楽・志野・織部・黄瀬戸・・・ととりどりに揃えられていて
嬉しくなりました。
さて終いには、お湯次が回り、おかわりの後もまた一口残しておいた御飯をお湯漬けにして戴くと共に、汁椀も湯ですすぎ清めます。
最後に客は各自、懐紙で器、箸先、お膳などの汚れを拭き、残し等があれば包んで持ち帰り、お膳の上を綺麗に片付けます。 (私はこのことを知りませんでしたが、先輩方が拭き終えた懐紙などの濡れ物を入れるビニール袋を予め分けていて下さっていたので、本当に助かりました^^;)
全員の片づけが済むと、客一同で軽く音がするようにお箸をお膳に落とし、食事が終わった合図とします。
◆主菓子
お膳が下げられると、今度は濃茶をさらに美味しく戴く為の主菓子(生菓子)が出されます。 炉開きのお菓子は「亥の子餅」。 漉し餡を包むお餅にも少し小豆が搗きこまれ、まだらな亥模様、そこに肉桂(シナモン)?の香りの黄な粉がまぶされて…それは八橋よりずっと控えめでほんのりとした香りでした。
亥(いのしし)は多産で良く育ち縁起が良いのであやかった、これから寒さが一層増してくる、旧暦亥(十)の月亥の日亥の刻に亥の子餅を戴き無病息災を願う行事と、立冬と、茶事に限らず炉を開く頃が大体一致することから、炉開きに亥の子餅が用いられるようになったようです。
また亥は五行では「水」にあたるとされ、家の中で火を熾し始める際の火厄除けにもなるとも考えられていたようです。
◆中立ち
お菓子を戴き終わると、正客から順にもう一度、床、炉、道具を拝見してから茶席を退出し、亭主が後座の支度を整えて下さる間、腰掛で休憩します。
やがて喚鐘(鳴り物)の合図で後座が整ったことが知らされますと、客は腰掛を出て、つくばって最後の一打まで聞き、鐘の余韻の中で再びつくばいで手水を使い手・口を清め、席入りとなります。(つづく…)
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全部を美味しい頃合に出すなんて♪♪
お茶ってもともと修行なのかな?
だとしたら戴き方も全て決まりがあるのは
当たり前かあ〜(@@)きびし〜な〜☆
その際に亥の子餅を載せていた高坏のような菓子器を
やがて玄猪と呼ぶようになっていけばなの立華で
もちいる器の玄猪に似た花器を御玄猪と呼ぶようになって
なんか言葉って面白いです
私も明日は先生のお伴でお詰めをさせていただきますが、毎回反省点がありますよ。
本当は膝にハンカチをかけないで懐石をいただくのでしょうが<美しく食べる>って難しいですね。
一口のご飯・・・全部食べると終わりの印なので途中の場合は一口残して置くように母に教わりましたよ(笑う、本当かどうか知りませんが、旅館に泊まる時に言われました)
詳しく書いてくださり感動が伝わってきます。
シーンとして味わうものでなく、思わず笑いがーーー。
先日、“もうこの森”の近くの方から“しし肉”をたくさん頂きました。
憎き“しし”をどのように食べようかと思案中です。
きっと牛肉の方が美味しいからって、
食べずに誰かにあげることになるでしょう。
お茶はあくまで風流な楽しみの文化だと思うけれど、
無駄な動きを削ぎ、洗練された形に磨き上げられているから
こそ、そこに日々の生き方が出てしまうように思うのね…。
未熟者の私には、お茶が修行というよりも日常の一つ一つが
修行かなぁ(^▽^;)
皆が気持ちよく過ごす為の礼儀作法だから、やはりきちんと
身につけたいよね。 あぁ、おっちょこちょいを直したい!
私は今回初めて亥の子餅を戴き、調べて玄猪の儀を知った
のですが、関西では今もそういう行事やお祭が残っている
のですか?
おおっ、御玄猪の語源はそこでしたか! そう言えばお菓子を
盛り付けるのに良さそうな形でした。 皆さんが色んなことを
教えて下さって、コツコツ書く甲斐がありま〜す!ヽ(^◇^*)/
あ、「お詰め」さんが正しいのですね! 良かった〜
早速(一)の中の誤った方の記述を消して置きますね。
ありがとうございます。
お茶碗の御飯の一口残しには、そういう意味も!
洋食のスプーン&フォークの端揃えのサインのようで面白いですね。
それぞれのご家庭でも違うのでしょうか? 他の方のお話も
聞いてみたいなぁ…。
そう言えば最近では、一口残してのおかわりを行儀が悪い
と叱られたという話も聞きます。時代につれ色々ですね^^;
タライをグワ〜ンってドリフのコントを思い出して笑って
しまいました。 無いものを工夫して楽しまれたチャチャさん
のお茶会、楽しかったでしょうね! その場に居たように
楽しい気持になれました〜ありがとうございます^^
ええ〜っ、猪肉勿体無い! 牡丹鍋ってすご〜く温まるし
とても美味しいですよ。 関西では牛の方が好まれる?
肉じゃがも牛肉って本当ですか? 私は断然豚ジャガの方が
好きです^^
今日、めでたく山口ももりさんに東京でお会いできました!
想像通り大きな目がキラキラ、溌剌とした素敵な女性でした♪
早く今日の日記が書けるよう、溜まった日記を書き上げねば!
関西で“お肉”と言えば普通は牛肉です。
豚肉のことは“豚肉”と豚をつけて表現します。
関東との食文化の違いなのでしょう。
たまに東京方面へ行くと感じるときがあります。
ももりさんは今日から東京でしたよね!
きっと素敵な方なのでしょうね。
その日記を早く書き上げて下さい。
私はNHK土曜日夜の「ウォーカーズ」を見て、四国遍路の続きに行きたくてしょうがありません。
関西では「お肉」と言えば「牛肉」のことなのですか!
そんなにとは…( ̄口 ̄;)…知りませんでした。
こちらでは熊や猪や鳥(雉など)は狩の獲物、牛馬は大切な家畜
もしくは家族のイメージだからでしょうか、祖母は亡くなるまで
牛肉は口にせず、お蔭で我が家ではすき焼きも豚さん、牛肉の
ステーキを初めて食べたのは高校生?位になってからだと思います。
ですから牛肉は美味しいとは思いますが、未だに滅多に戴きません。
子供の頃に染み込んだ食文化ってしぶといものですね^^;
私も早くももりさんのことを書きたい! でもその前にも
書きたいことがいっぱいなんですよ〜ウワ〜ン・゚・(つД`)・゚・
ドイツ南部からスイスだったのですが、
牛は可能な限りミルクを絞るので、その後の肉は美味しく食べれるようなものではないとのコトでした。
だからその地でも肉は豚だそうです。
私ここ最近、豚を食べていないのでは?
松阪牛、近江牛、神戸牛・・・美味しいのになぁ〜
茶事の話の中で、何故にここだけ肉食の話題??(爆笑)
私が加入している生協では、乳牛もあまり疲れないうちに
お肉になって戴く流れになっています。命を無駄なくっていうこと
なのでしょう。一度買ってみましたが、確かにあまり美味しくは・・・
そう言えば、お肉屋さんやレストランで豚さんや牛さんの
可愛いイラストが「美味しいよ〜♪」とか言ってる図って
オカシクないですか。 結構シュールですよね・・・^^;