2007年03月25日

能登の思い出(2)

 間断無く連続して頭からお湯をかけられるとどうなるか?
私はそれをAちゃんによって逆体験させて貰った。 間断無くと言っても、向こうがお湯を掬っている隙にサッと息ぐらいできるじゃないかと思われるかもしれないが、髪の毛を伝って滴るお湯というものはかなり粘っこいもので、うっかり息などしようものなら一緒にお湯も吸い込んでしまう。 ずっと長い間息を止めていた末に、お湯を吸い込んで咽ればどんな悲惨なことになるか、ああ、書いていて息苦しくなって来た。 皆さんはくれぐれも興味本位に真似をなさいませんように…。

 お寺のお風呂であわや窒息!という経験をして興奮気味の私達を迎えたのは、怪しげな一対の屏風の前に敷かれた2組の布団だった。既に他には一切の人の気配も無い。 その屏風の後には、何様が鎮座ましましておいでだったのだろう? 今となっては知る由もない。 しかし多分、屏風無しでは若い二人の女の子が眠ることも出来ないようなものが控えていたのは、間違いない?

 闇夜のサイクリングと風呂騒動でぐったりした私達は、今思えば意味深な屏風のことなど気にもせず、たちまち眠りに落ちた。それから何時間位たったろう…ふと、じっとりとした息苦しさを覚えて私は目を開けた。 が、体が動かない。 金縛り!? これが噂に聞く金縛りというものなのか! 半ばパニック状態になりながら、動かせる眼を頼りに辺りを見回すと…猫!猫!猫!猫!猫!! 

 白やら黒やら三毛やら、一体全体どこからこれだけの猫が集まって来たのか!?と思うほど沢山の猫が私達の布団の上に乗っていた。 布団の上だけでなく、回り中何匹もの猫に囲まれていた。
「Aちゃん! Aちゃん!!」
隣で眠る友を必死に起こそうとするが、口がパクパクするだけでちっとも声にならない。 屏風の前の白猫が大きな欠伸をしてニヤと笑った。 私は急に脱力して、その後の記憶が無い。

 布団を上げた記憶も朝食を戴いた記憶も無い。 あるのは、
 「すごく重たいお布団だったね〜 何だか肩が凝ったよ!」
と言う、友の言葉だけ。
 「そりゃぁね、重いよ、あれだけ乗っかってれば…。」
猫のことをAちゃんに教えたが、同じ様に夜中に目覚めたAちゃんは猫など一匹も見なかったと言う。 

 いや私は確かに猫に出会った。 記憶を消されているのが何よりの証拠である(笑)。 あの後、私は猫の世界へ招待されたのだろうか? 私の体のどこかには、猫の世界の何かが埋め込まれているのだろうか? 私は今でも月明かりの下の自分の影を見るのが、少し怖い。               (おわり)
 
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posted by 山桜 at 00:00| Comment(17) | TrackBack(0) | 旅・町歩き | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
屏風の翳には…
猫叉…
その昔書いていた猫ブログにも
猫の妖かしはあれこれ書いたな〜
http://blog.kansai.com/ChaiPaPa
Posted by 幽黙 at 2007年04月01日 16:38
◆幽黙さん、こんばんは。
 猫ブログもお持ちでしたか! 早速拝見。。。
こんな思い出書いた後に見るには刺激が強すぎますって! 
『油舐猫舌裏側』
『参百六拾度回転猫首』
勘弁して下さ〜い(((( ;゚Д゚)))アワワ!
Posted by 山桜 at 2007年04月01日 17:50
わわわぁ〜すすごい体験ですね〜
金縛り経験者の私は他人事とは思えませんよ><

怖かったでしょうね・・・
お寺1泊は無理だぁ〜><
Posted by さかもっちゃん at 2007年04月01日 19:34
間断なくお湯・・・した経験があります。
友人が入れない状態になったのが気の毒で、掛けたげるわ、と懸命に掛けたところ・・・ ねぇ!
好意がショウガイになるとは思いませんでしたよ、ははは。

猫屏風。猫による金縛り。猫に取り囲まれる美女って藤田の絵にありますね。(乗っかられてはいないけれど)
わたしや友人などは却って大喜びしてしまう可能性があります。
それで朝になってから「・・・あれ?」とやっとおかしいな、と気づくタイプです。(笑)
Posted by 遊行七恵 at 2007年04月01日 23:03
山桜さんも凡人にあらず!ってことでしょうか?
ここが凡人にとって居心地が良いのが何よりの証拠である(笑)
Posted by 凡人 at 2007年04月02日 00:01
◆さかもっちゃんさん、おはようございます。
隅まで見えないような広〜い部屋の真ん中で寝るのは( ̄口 ̄;)
だったのですが、不思議と猫の群れは怖くはなかったんですよ♪
可笑しいやら嬉しいやらでAちゃんに教えようと思ったんですが、
面白いもの好きの彼女に見せられなくて残念!
「猫の恩返し」というアニメを見た時は、何だかデジャヴ…(笑)
Posted by 山桜 at 2007年04月02日 08:14
◆遊行七恵さん、おはようございます。
 間断なくお湯…やりましたか〜(*´∀`)人(´∀`*)ナカーマ
好意でシャワーと同じように!って張り切ったんですけどね、
桶でかけると水の隙間が無いんですよね〜(^▽^;)

 屏風の絵はやはり猫だったのかな〜そうだと更に面白いのに!
猫宮城で飲めや歌えやの宴を味わったのではと妄想しています。
あれから猫の言葉が分かるような…♪
Posted by 山桜 at 2007年04月02日 08:21
◆凡人さん、おはようございます。
 平々凡々バカボンボンな私です…ぼんやりしてるから時々妖しが
入り込むのかなぁ…キリリとしていなくては!
でも、たまにはそういう世界で遊ぶのも楽しいですよねっ☆
居心地がイイだなんて、とても嬉しいで〜す♪ \(^O^)/♪
Posted by 山桜 at 2007年04月02日 08:27
お〜なんだか不思議な体験でしたね。
でも猫ちゃんだと、怖くないかも…。
青年部長の家がお寺さんなんですが
そこの本堂でで合宿したとき…
やっぱり怖かったです…。
Posted by 宗恵 at 2007年04月02日 11:13
事実は小説より奇なり…。ですね。
猫の集団はA子さんに対する、お詫びの念かもしれませんねえ。

先ほど食べたご飯のメニューを忘れることもあれば、遥か昔のことを、鮮明に記憶していることもある。
人の記憶と無意識は実に不思議なものです。

おもしろい、おはなしでした。
Posted by 普賢のゾウ at 2007年04月02日 14:00
 もしかして、闇夜に光る猫の目になってたりなんかしちゃったりして・・・
今度思い切って、念仏(呪文?)を唱えながら、月明かりに映し出される影の
シルエット、よーーくご覧になってみて・・ホラ〜ー。−;^^;
オンアボキャー ベイロシャノー。。。。
 ウソウソ、御免なさーいm--v 一生忘れられない思い出になりましたね☆
お陰でこちらまで、ワクワクドキドキ楽しませて頂きました。
Posted by 飛翔 at 2007年04月02日 20:55
益子の宮嵜です。ブログいつも楽しみです。
メールの苦手な私が、懐かしくて書きたくなりました。

能登半島の一人旅を若かりし頃しました。
そして、お寺のユースホステルに泊まったのです。
私のユースはどこだったのでしょう・・

広い広い、部屋の真ん中にぽつんと一枚のお布団
ここには猫はいませんでしたが、怖くて中々寝付かれなかったことだけを
鮮明に覚えています。

能登を歩いているとトラックのおじさんたちが
ねーちゃん乗りな、と声を掛けてくれ、
歩くの好きなんです、と返事していた若い私でした。
列車がなく貨物に乗せてもらい金沢へ。
親切な親切な輪島の人々。
山桜さんのお陰であの頃が走馬灯のようによみがえりました。

今、そこに義妹が嫁いでいます。
地震のこと気に掛けて下さってありがとう。
義妹達は被害が少なかったとのことでした。
きっと、きっと大変であろうにいつも明るい義妹です。

皆さんが早く避難所から出ることができたら良いですね。

おやすみなさい。


(宮嵜さんより嬉しいメールを頂戴しました。
 皆さまにもご紹介したく、お許しを得てこちらに掲載致します。

 みやざき窯の春の様子もどうぞご覧下さいませ!
 お気に入りリンク先にもありますがURLはこちらです。
 「暮らしの中に陶器を みやざき窯」
 http://www17.plala.or.jp/miya1224/     山桜 拝)  
Posted by みやざき窯の宮嵜さんより(山桜・代) at 2007年04月03日 08:35
◆宗恵さん、おはようございます。
 本当は日々手厚くご供養されているお寺は一番安心できる場
なのかもしれないのに、やはりお墓や仏像って畏れを感じて
しまいますよね^^;

 猫ちゃんはいろいろ宿りやすそうな動物です。
昔から化けるといえば狸・狐・猫…犬ってなんで化けないの
かしら? 気がいいというか能天気というか、いい意味で鈍感力
があるのかもしれませんね〜(^ー^* )
Posted by 山桜 at 2007年04月03日 08:48
◆普賢のゾウさん、おはようございます。
 Aちゃんとは北海道から九州までアチコチ一緒に旅しました。
計画は殆ど私なので、彼女は来てみてビックリ!!(@@;)ノノ
のことが多かったと思います。 道なき崖を下りながら、
「もうBちゃんとは旅行しない〜!」
とかなんとか言ってましたけど、結局その後も行きましたね^^;

 泣きたいほど辛かったり怖かったりした経験ほど、何故か時が
経つと、懐かしく何度も振り返る思い出になるんですよね。
それを知ってからは、生きるのが随分楽になりました^^
Posted by 山桜 at 2007年04月03日 08:58
◆飛翔さん、おはようございます。
 猫ついてきてるかなぁ?? どちらかというと狸顔なので
知らず知らずポンポコポン!と腹鼓を打っちゃってるかも〜
あ、でも、これは月明かりに関係なくです!(lll゚Д゚)アワワ

 >オンアボキャー ベイロシャノー。。。
これはご真言ですか? 飛翔さん、そちら方面も詳しいのですね!

 長々と綴った思い出を最後まで読んで下さり、こちらこそ本当に
嬉しいです。 ありがとうございました!
Posted by 山桜 at 2007年04月03日 09:51
本当に、凄い珍しい猫の体験をなさいましたね〜
猫の目は暗闇でひかると聞いたことがありますが、
あたり一面ギラギラと光っていませんでしたか〜(笑)
Posted by 青い流れ星 at 2007年04月03日 20:06
◆青い流れ星さん、こんにちは。
 猫たちはスヤスヤと眠っていたので、光る目は見なかった
ように思いますが、なにせ遠〜い記憶ですから…^^;

 そうそう鎮守様の境内の辺りに住んでいる狸の目は光ります!
狸って実物は結構精悍で迫力がありますので、なかなか睨み
返せず立ち竦んでしまいます。 猫なら睨み勝ちできるのに!
Posted by 山桜 at 2007年04月04日 10:03
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