2007年06月12日

未央柳と弟切草

     ? 1950.jpg
      ビヨウヤナギ(美容柳・未央柳)   オトギリ(弟切)草科 
     中国原産(日本への渡来は宝永五年(1707年)とされる)

? 1948.jpg 花を上から見ると、「花びらが巴形に並んでいる」オトギリ草科の特徴がよく分かります。同科にはそのまま「トモエ草」の名の草もあります。

 名前のビヨウ(美容)柳は、美しい花の咲く柳に似た葉の木の意味ですが、もう一つ当てられている漢字「未央柳」の由来は、白居易 (白楽天)の漢詩「長恨歌」の一節に因んで日本で名付けられました。

 「長恨歌」は玄宗(げんそう)皇帝と絶世の美女・楊貴妃の悲恋を
綴った叙事詩です。 玄宗は楊貴妃を寵愛しすぎた故に国を傾け
(楊貴妃=「傾国の美女」と形容されます)、ついに戦乱の中楊貴妃を
伴って落ち延びる途中、兵士達の怒りを鎮める為に已む無く楊貴妃を
絞首刑に処してしまいます。 やがて玄宗が宮殿に戻り妃を偲び… 

    帰来池苑皆依旧 帰り来たれば池苑皆旧に依る
    太液芙蓉未央柳 太液(池)の芙蓉(蓮)も未央(宮)の柳も
    芙蓉如面柳如眉 芙蓉は面(顔)のごとく柳は眉の如し
    対此如何不涙垂 此に対していずくんぞ涙垂れざらん

 中国渡来の比類なく美しく、そして「儚げな花」だからこそ、悲恋の
美女の姿と重なり日本人の琴線に触れ、このように凝った「日本名」が
付けられたのではないでしょうか。 
 中国名はもっと見たままの素直さで「金糸桃」と言います。

? 1951.jpg こちらは、日本でも中国名のまま「金糸」です。 花の形は梅そのものですし、文句なしにそのまま納得できる名前だったからでしょうか? 
 
 傾国の美女よりも少し可愛らしい町娘のようで、未央柳よりも生けるには花モチが良くて助かります。 長く枝垂れた枝の先に花を幾つか次々と咲かせます。
 
 話は横道に逸れますが、山口ももりさんのブログで盛り上がっているイギリス・スケッチ旅行記の中の「血まみれメアリ」に因んでオトギリ草の余話を。

 オトギリ草科のもう一つの特徴に「葉に散る油点」があります。
これは、葉を日に透かすとよく見ることが出来ます。(同科の外来種
ヒペリカムの仲間でも見ることができると思います。)

 この葉に浮かぶ黒い点々は、その昔、鷹匠・春頼が鷹の怪我を治す
秘伝の薬草の名を、他人に漏らしてしまったり殺した時に飛び散った血の跡と伝えられています。「オトギリソウ」とは怖ろしい名前です。 数年前、そんな名前の映画もありましたね。

 ヨーロッパでも同じオトギリ草の仲間、セント・ジョーンズ・ワート
(西洋オトギリ草)の葉に散る油点を、処刑されたキリストの脇腹から
滴った血の跡、又は、花びらを擦って出る赤い液も同様に、聖ヨハネ
(キリストに洗礼を施した聖職者、旧約聖書最後の預言者)が斬首された時の血とも、その血の中からこの草が生まれたとも言われています。 古今東西、人間の連想することはよく似ているものですね。

(St. John's =聖ヨハネの、Wort=植物、ですから、訳せば「聖ヨハネ草」となりますね。 聖ヨハネ祭(聖ヨハネの誕生日)の6月24日頃に花を咲かせ、お祭にも飾りなどに使われるのだそうです。 昔からハーブとして、又、最近では、抗ウツ剤としても注目されています。 薬草=毒草としての面もありますので、素人の勝手な使用は避けて下さい。) 


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posted by 山桜 at 00:00| Comment(12) | TrackBack(0) | 山川・自然観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お茶を少しやってますと、茶花の名前を覚えるだけで
必死です(泣)
しかし、このように由来など知識があると
2倍楽しいですね^^

黄色のお花の元気なイメージとは
ちと違うお話ですね><

Posted by さかもっちゃん at 2007年06月17日 21:43
未央柳、金糸梅ともに今年覚えた茶花です。
未央柳は近所にも結構植えられているのですが、こちらはもう花も終わり、といったところです。

巴形…言われてみると面白い花びらですね。
私は未央柳は儚げ、というよりは、精一杯上を向いてアンテナを空に広げていて、ひまわりのようにエネルギッシュなイメージを持っていました。

金糸梅も可愛いですよね。こちらは可憐なイメージです。

しかしオトギリソウの話は怖い…(>_<)
今夜眠れなくなりそうです…今度葉っぱよく見てみます。
Posted by みかん at 2007年06月17日 21:47
花に限らず
名前の由来というのは
面白いものです
それぞれの
結び付けられ方といいますか
想像
というものを許された人間の
楽しみといいますか
Posted by 幽黙 at 2007年06月17日 23:34
◆さかもっちゃんさん、おはようございます。
 お茶を始めて、お茶の世界には茶花を呼ぶ特有の別名が色々と
あることを知りました。 カタカナ名では使えないお花も和風の
お名前が付けばOKとか、縁起をよくする為とか、主題を示す為
とか、その理由も様々で面白いです。 金糸桃はキンシトウの音の
響きが嫌われたのか、それとも桃がいけなかったのかしら??

 弟切草のお話は人を怖がらせて、大事な薬草を無闇に摘まれない
ようにするため?とも思っています。
Posted by 山桜 at 2007年06月18日 10:39
◆みかんさん、おはようございます。
 未央柳は私の子供の頃の憧れの花の一つで、その頃の古い
図鑑には大きな花丸がつけてあります(欲しい花に○をつけて
いたので^^;) 丁度子供の目先で咲くこの花が金細工の
ように輝いて見えたのを覚えています。

 盛りと咲いている時は、みかんさんが仰るように太陽の光を
受けて輝くエネルギッシュな花のイメージもありますね^^
ただ、その薄い花びらと細い金の蕊の命が儚くて、すぐに
しなしなと萎れてしまうのが、美人薄命の感を漂わせるのです。

 血液は死や穢れのイメージの一方で生命の源をも意味しますから、
忌花というよりも重要な植物の証拠であるとも言えると思います。
ただ、きっとオトギリ草は茶花には用いないのでは…?と想像します。
 
 安眠を妨げちゃったかな〜ごめんなさい!
 
Posted by 山桜 at 2007年06月18日 10:56
◆幽黙さん、おはようございます。
 そうなのです! ものの名前には様々な時代の土地の人々の
思いや言い伝えなどが潜んでいて、本当に面白く興味が尽き
ません。 これまでの本などにこう書いてあったからと、
そこで思考停止をせずに、自分なりにもっともっと突き詰めて
いけたらいいな〜 新しい発見があると嬉しいな〜と思っています。
Posted by 山桜 at 2007年06月18日 11:02
花の世界も大変奥が深いものがあるのですね。
絶世の美女・楊貴妃の花があるとは知りませんでした。
薬草=毒草の名前のついた由来など奥が深〜い。(笑)
Posted by 青い流れ星 at 2007年06月18日 23:18
◆青い流れ星さん、こんにちは!
 絶世の美女とは、また時代につれ変わるのでしょうね。
ミス・インターナショナルに選ばれたミス・ジャパンは、
若さ一杯健康的な美人ですが、楊貴妃はどんななタイプの
女性だったのでしょう…?
Posted by 山桜 at 2007年06月19日 13:01
おとぎりそう・・・・o( ̄▽ ̄)o
そうなの?何だかドキドキしちゃうお話だね。
そういうのは、お話の中だけにしておきたいよ☆
世の中のニュースは怖いことが多いものね☆
Posted by やゆよ at 2007年06月20日 22:49
◆やゆよん、おはよ〜!
 怖い話だけど、怖くないと乱獲予防の効き目が無いから、
こういう話はショッキングな位がいいのかもしれないね〜

 ドクダミなんかも、臭いしこういう名前だし毒があると
思って触らない人もいるものね。 今の世の中には全然
それが抑止力にならない鈍感というより無感動?な人が
増えているのが怖ろしい…
Posted by 山桜 at 2007年06月21日 10:50
こんにちは。
暑くなりましたね。

「オトギリ草の由来」ためになりました。

茶花なんですか。知りませんでした。

白楽天といえば、虞美人草の故事も有名ですよね。
この花も茶花のようです。

オトギリというと、私は信長や信玄をイメージします。

油点は返り血を想像させます。

毒草というのは何かといわくが付くものですね。
Posted by 普賢のゾウ at 2007年06月28日 16:50
◆普賢のゾウさん、こんにちは。
 未央柳や金糸梅は茶花に用いられますが、流石に弟切草は×かと。
例外もあるようですが、原則として毒草、強香花、縁起の
良くない伝えのある花、やがて食べられる実を結ぶ花などは
避けることになっています。 桜の花も利休さんはお好みで
なかったようで…(゜―Å)

 古来、優秀な弟を亡きものにする話は多いですね。
弟切草の話も案外秘伝を漏らしてまで薬を他の人(鷹?)の
役に立てようとした徳の篤い弟を葬ったということかも…?

 虞美人は確か項羽の愛人だったような〜?(ウロ覚え^^;)
Posted by 山桜 at 2007年06月29日 10:41
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