朝の連続テレビ小説「ひよっこ」では、今、ビートルズ・ファンの宗男さん(主人公みねこの叔父)が活躍中ですね。 顔や姿は似てないのですけれど、髪型とかファッションとか洋楽ファンな所とか、何となく若い頃の主人を思い出し重ねて見てしまっています。
宗男さんは、子供の頃はお兄さんの後ろに隠れているような大人しい子だったのに、少年兵として戦争に行き太平洋戦争中最も無謀で凄惨、殆どの仲間を失ったインパール作戦から戻って来た後、笑ってばかりの妙に明るい性格になっていたという・・・その理由に泣かされました。
少年兵の宗男さんは「斥候」として敵国イギリス軍の偵察に赴き、途中、顔を黒く塗った同じ年頃のイギリス少年兵に出くわしますが、その少年は仲間に何か伝えるとニッコリ笑って去って行きました。 同じ少年兵同志、何か心に通じ合い戦いたくない気持ちが生じたのでしょうか。 その時、宗男さんは自分もニッコリ出来なかったことが悔しくて、「どうせ拾った命、これからは自分も笑って生きていこう!」と思ったのだそうです。
私はこの話を聞いて、このイギリス少年兵はボーイ・スカウトの隊員だったのではないかと思いました。 私はガール・スカウト所属で、似たような話を聞いていたからです。 「アンノウン・ソールジャー(無名のスカウト兵)」と呼ばれる、スカウト仲間では有名な話です。
「アンノウン・ソールジャー(無名のスカウト兵)」
太平洋戦争末期、日米の激闘が繰り返されていたある南洋の島で、1人のアメリカ兵が日本軍と戦闘を交え負傷し気を失い倒れていた。 気付いた時には仲間は引揚げた後、突撃してくる日本兵の銃剣が喉元に迫るのを見て、再び気が遠くなりかけた瞬間、彼は無意識のうちにボーイスカウトの三本指を立てる礼(三指礼)をしていた。 再び目覚めた時にはもう誰もおらず、木の枝にぶら下がっている小さなメモに気付くと、英語で、こう書いてあった。
「自分もかつてはボーイスカウトだった。 世界中のボーイスカウトは皆、兄弟だ。 3つの誓いを表す3本指を見てスカウトとしての気持ちが甦り、傷ついている兄弟である君を殺すことは出来なかった。 手当をしておいた。 1日も早く回復してほしい。 幸運を祈る!」
この実話では、助けたのは日本兵、助けられたのはアメリカ兵ですが、スカウト精神を持った兵士であれば、他にもきっとあったであろう話だと思います。 私でも、宗男さんの小鹿のような怯えた目を見たら、ニッコリ笑って逃がしたくなります。
そもそも「ボーイ・スカウト」を直訳すれば「少年斥候」という意味であることは、戦争アレルギーの日本では、余り知らされていないと思います。 今はもう「斥候*」の意味も分からない人が多いでしょう。 軍隊色の強い言葉なので、スカウト運動発祥地のイギリスでは、少女たちは「ガール・スカウト」の呼称は用いず少しソフトに「ガール・ガイド」と称しています。 日本のスカウト運動は、アメリカ経由で入ってきたので、男子と同じ呼称を望んだアメリカ女子の心意気のまま「ガール・スカウト」を用いています。
*「斥候」:本隊の移動に先駆けてその前衛に配置され、進行方面の状況を偵察しつつ敵を警戒する任務を遂行する兵士のこと。 転じて、現代の少年少女のスカウト活動は、自然と共に生き、常に自分を高め人に役立つことを心がけ、人々を正しい道に先導する役割を担える存在であろうとする活動、と私は認識しています。
2017年07月04日
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時代背景から、多分戦争が絡んでいるとは思いましたが、このような話は実際に少なくはなかったと想います。
無名のスカウト兵の実話、詳しく教えて頂き有難うございました。
宗男さんが奥茨城へ戻ってしまい、ちょっと寂しい週末です。
主人も笑い顔の中に色々なものを包み込み、抱えながら生きていたのだろうと今更ながら思います。 それは隠していたのではなく、それが彼の生き方だったのであり、その丸ごとを私はずっと愛しているのだと思います。
かく言う私も「スカウト」ってどういう意味だろう?と思って、辞書を引き「斥候」と言う言葉にぶつかりちょっと驚きました。 連盟の研修でもそんな事は教えてくれなかったからです。やはり軍隊用語を避けたい気持ちが、あるのではと思います。
同じような少年兵同志だったことが幸いですが、どちらも少年兵を斥候に使っていた理由を考えてしまいます。