「牧野記念庭園・記念館」 に出かけました。

地元の方に愛されているお店らしく、あっという間に次々と席が埋まり、上品な年配の奥様が「いつもの」と、お昼からギョーザ+生ビールで寛いでらっしゃるのを見て羨ましく思いましたが、ここでビールを頂いたら、もう炎天下を歩けませんのでぐっと我慢。
さて、満腹になって出発。 駅前の道を真っ直ぐ行くと、間もなく一目であそこだなと分かる牧野記念庭園の森が見えてきました。


「草を褥に 木の根を枕 花を恋して五十年」(遂には九十四年)
「何時(なんどき)までも 生きて仕事にいそしまん
また生まれ来ぬこの世なりせば」
庭園奥の記念館では、下記の巡回展示を公開中。 先ずは暑さ凌ぎに館内へ

【高知県立牧野植物園からの巡回展示】
牧野式植物図への道 T―種の全体像を描くために―


左【シコクチャルメルソウ】1902年「大日本植物志」牧野富太郎
右【サクユリ】1902年「大日本植物志」牧野富太郎


左【ヒメキリンソウ】1889年「日本植物志図篇」牧野富太郎
先生、ンを書き忘れたんですね。人間味が垣間見れて、いいなぁ
右上【植物啓原譯文」宇田川榕菴(ようあん)著 牧野富太郎訳
右下【コシアブラ】1880年 牧野富太郎
(画像は戴いたパンフレットに掲載されていたものです)
なかなか高知県まで行けない私にとって、原画を間近で見られる貴重な機会でした。 かねがね植物の本当の姿を知る為には、隅々まで観察してその姿を掴みとるスケッチが一番と思っていました。 写真を幾らとっても、歩きながら観察した積りになっても、通り一遍の記憶となってしまいます。 長い時間をかけてよくよく観察して描いている内に、何故その形になっているのか、どうしてそういう仕組みになっているのか、植物が自ずと教えてくれるように思えます。 植物と語り合いながら姿を映していくのは至福の時です。
牧野先生愛用の筆記用具も展示(一部復元物)されていて、なんとあの細密な植物画が全部毛筆で描かれていたことに驚きました。 細い部分には、鼠の毛三本で出来た筆も使っていたそうです。
そして今や目のピントがあやふやになってしまっている私からすると、牧野先生の視力の良さは正に驚異です。 会場にいらした係の方に伺うと、
「先生は視力で困られたという話がなくて、とても目が良かったようですよ。 掛けられているのは老眼用のメガネだそうです。」
とのお答えでした。 知りたい見たいという好奇心でもって使っていれば、目も応えてくれるということでしょうか。 私ももっともっと外へ出て、生きた植物や自然をこの目で見続けたいと思います。
書斎や資料室が丸ごと書屋館内に保存されています。






「牧野先生(の等身大パネル)と一緒に写真を撮ろう! 」のコーナー。 どうですこの無邪気で人懐っこい笑顔! 誰もいないのを幸いに何テイクも失敗しつつ、何とか牧野先生に負けずに笑顔でツーショットを撮りました。 いやいや、とても敵いません。 あんな心からの笑顔は今の私には無理でした。 写真はこの点、実に正直です。
書斎の縁に一緒に座ってお話もしました。
「お聞きしたいこと、いっぱいいっぱいあるんです」
と言ったら、嬉しそうに、
「実物と、私が生涯かけて記録し残したものをよ〜く、見て下さいね」
と聞えたような・・・。



嘗てはこの棚にぎっしり詰まっていた資料や標本は首都大学東京牧野標本館、高知の牧野資料館等に寄贈されています。

こちらにお住まいだった頃の邸宅敷地内のジオラマ


ご愛用の採集道具 何処から飛んで来たのかトンボが・・・
冷房の利いた館内でたっぷり展示を楽しんだ後、庭園の観察に出ました。


【イヌホオズキ?】ナス科 【ウバユリ】ユリ科


左【ノダフジ】マメ科
フジには、この野田フジと山フジがあって、巻き方が違います。 それを右巻き左巻きと表現すると、上から見てか下から見てか? とヤヤコシイことになるので、この頃はZ字型巻き、S字型巻き等とも言います。私はそれもピント来ないので、野田フジは「ふ」の字=S字巻き、山フジは「ヤ」の字=Z字巻きと憶えています。 野田フジの蔓の部分が「ふ」の字の真ん中ように左上がり右下がりの形に見えるからです。
右【アンズ/杏】バラ科
梅に近い仲間ですが、樹肌は随分違うのですね。 初めて認識しました。

【スエコザサ/寿恵子笹】イネ科
家守りし 妻の恵みや 我が学び
世の中のあらむかぎりや すゑ子笹 (結綱子)
発見した新種の笹に、自分では好きなこともせず、貧窮しながらも研究を支え続けた奥様の名前をつけています。


【ダイオウショウ(マツ)/大王松】マツ科
【ヒメウツギ/姫空木】アジサイ(前ユキノシタ)科ウツギ属


【ヤブラン】キジカクシ科ヤブラン属


【ムラサキ】ムラサキ科ムラサキ属 これは種子です。



【ヘラノキ/箆の木】アオイ科シナノキ属
分布は近畿以西ですが、牧野邸にある珍しい木であることから「練馬区の木」とされているそうです。

【イイギリ/飯桐】ヤナギ科イイギリ属 別名ナンテンギリ/南天桐
大きな葉に食物をのせたことから飯桐の名が、またこの実が赤く熟して葉が落ちた後も良く目立つ為、南天桐の別名があります。


【オトギリソウ/弟切草】オトギリソウ科
【ヤマシャクヤク/山芍薬】ボタン科 実


【スズラン/鈴蘭】キジカクシ科 青い実 やがて赤く熟します
【アオイスミレ/葵菫】スミレ科 葉が葵に似ていることから
花の少ない季節でも、いろいろ楽しめました。 巡回展は、後期の8月11日〜10月9日もあるので、また訪ねてみたいと思います。

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最近は、文語体が読みにくいので現代語訳も出ているようですね。 どんな風に表現されているのでしょう。 私もこの低気圧性耳鳴りが治まったら、先ずは家にある本を引っ張り出してみます。
ようこそお越し下さいました。 コメントありがとうございます^^
キジカクシというとアスパラガス(オランダキジカクシ)を思い浮かべますが、なるほど花がスズランに似ていて実が赤く熟すところも同じです。
昔はユリ科の守備範囲は広かったですよね。 ネギの仲間もネギ科に分かれて、昔に覚えて頭に沁み込んでいるものを変換し直すのは、持っている図鑑も古いのでなかなか大変です。
50年前の牧野図鑑を後生大事に携帯している身にには、まるで浦島太郎のようです(笑)
私も同じ浦島太郎です。 一つ一つ上書き保存していってますが、古い記憶を変換するのは老化した脳では厳しくて…
ふと不安になって調べたら、APGIIでは「ネギ科」だったのですが、最早古かったです。。。ガーン!
APGIIIでは、「ヒガンバナ科ネギ亜科ネギ属」だそうです。
まぁ、これは納得できる分類でしょうか。
脳への新しい刺激と思って受け入れていくしかないですねぇ(@@;)