6月13日に行って参りました出光美術館の会員向け水曜講演会の纏めをメモをもとにして書いて置きます。 多分、長くなると思いますが、自分用の備忘録ですのでどうかお許しを。 ご興味をお持ちの方は、是非どうぞ…
演題:「浮世絵の美と芸術−出光コレクションの名品から」
講師: 内藤正人氏(慶應義塾大学文学部准教授・元出光美術館学芸員)
浮世絵=版画、役者絵、美人画
一般的には、このイメージが大きいと思われますが、実際には数多くの肉筆浮世絵が存在します。 また肉筆浮世絵専門の画家も沢山おり、当時は知らぬ人はいない程有名だった画工達が、版画だけを「浮世絵」としていては浮かばれません。
教科書に「浮世絵」の代表作として紹介されている、菱川師宣の「見返り美人」も実は肉筆画です。 又このような上品な美人画は師宣の晩年の作であり、その生涯の全作品を見れば6割が「春画」なのだそうです。
(春画の展覧会というのは見たことがありませんが、これはこれで浮世絵の一大分野として、また人々を魅了した作品群として成人限定としてでも観覧可能になればと思います。 寧ろ海外では浮世絵=春画のイメージが大きいと聞いたことがあります。)
また最近国外からの里帰りなどで展覧会が度々開かれるようになった
「肉筆の」浮世絵が、版画の下絵、原画というのは誤りで、最初から
「絵」としての鑑賞を目的として描かれたものです。 従って、
浮世絵=役者絵、美人(若衆も含む)画、春画、風俗画、肉筆及び版画
ということになります。
若衆が鑑賞の対象であったことで、当時の男色がしのばれます。
先に「画工」と記しましたように、浮世絵を描いた絵師達は「本絵師」としては食べていけず、画才を生かして一般大衆向けに、工房の中心的人物の絵を元に、パターン化した絵を大量に描いていたのです。
(今で言えば、「ブロマイド」「グラビア」等に当たるものを描くイラストレーターとでも言えますでしょうか。)
本絵師として認められない画工達の作は、注文制作ではなく、最初
から安価に大量に売るためのもので「仕込絵」と呼ばれ、如何に優れた作であっても、落款はありませんでした。(後に人気作家となった者の作には有ります。)
<肉筆画も版画もある浮世絵師>(配布された資料とメモ等より)
菱川師宣:第一の功労者。生家は縫箔刺繍業。独修。弟子多数。
鳥居清信:元役者。
奥村政信:多才。浮絵創始者。版元も経営。
石川豊信
鈴木春信:多版多色摺の錦絵
磯田湖龍斎:春信の弟子。安永・天明の美人画をリード。
一筆斎文調:役者絵版画再生に尽力。
勝川春章: 宮川門下春水に師事。役者絵、美人画。北斎の師。
鳥居清長: 八頭身美人
喜多川歌麿(豊章):版元蔦屋と組んだ美人大首絵。
鳥文斎栄之:旗本出身。
歌川豊国:役者絵の名人。大衆好みで写楽を凌ぐ人気。
勝川春英
東洲斎写楽:謎多き絵師。僅か10ヶ月程の活躍で姿を消す。
歌川国貞:3代豊国
歌川国芳
葛飾北斎
菊川英山
渓斎英泉
歌川広重
蹄斎北馬:北斎の弟子
<肉筆画のみの浮世絵師たち> (聴講中のメモより)
懐月堂安度:絵馬屋出身の一派の中心。力強い太い線、豊満、大胆な
類型的美人画。絵島・生島事件に連座し島流し。
宮川長春:師宣の流れを継ぐ美人画。贋作が出るほどの人気。
川又常行:川又派の祖。当時知らぬ者が居ないほどの大人気
川又常正:常行共々、華奢で可憐な愛らしい美人画
歌川豊春:歌川派の祖。酒井抱一も模写した。
<上方の浮世絵師・絵師全体の一割程>
西川祐信:狩野派に師事。版本挿絵(絵本)画工。京美人。
月岡雪鼎:妖艶。上方春画の名手。見立絵。後に芳年に続く系譜。
祇園井特:遊郭経営。異才。妖艶奇怪
*注:( )内の緑色文字は、山桜の感想・意見等で、
内藤先生の講演内容ではありませんのでご注意下さい。
(つづく) 上記内容も暫定です。 追って加筆訂正を入れます。
また、展覧会レポは別記する予定^^;です。
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先日は浮世絵の定義と浮世絵師たちについての講演部分書きました。
続きましては、「浮世絵誕生の諸要素」についてです。
(配布されたプリントより)
1.近世初期風俗画・又兵衛*派・寛文美人画からの流れ
2.狩野派・土佐派・長谷川派からの流れ
3.奈良絵本等の物語絵本からの流れ
4.(版元・木版画という点から)
木版による文学書の挿図
・版画類からの流れ
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1.近世初期風俗画からの流れ
都市景観図ともいうべき名所絵で江戸を描いたものは少なく、僅か10点程しかしられていません。 その中でも「江戸名所図屏風」には、2000人もの人物が、コミカルで生き生きとした姿で描かれており、後に「寛文美人画」と呼ばれる一人立ちの美人画の原型を見ることが出来ます。
こちらはその作者不詳の「江戸名所屏風図」より、かなり洗練されていますが、上は師宣の「遊里風俗図」、そして下は師平の「春秋遊楽図」の一部です。 師宣の「見返り美人」で有名になった、肩越しに振り返る美女の決めポーズは、こうした風俗画の中にも見られ、後に美人画の定番ポーズの一つとなったようです。
「く」の字型にシナを作って肩越しに振り返るポーズ…どうでしょう、今でも色っぽい仕草かもしれません。 鏡の前で試してみてから、ご主人・彼氏の前でご披露下さいね。 結果がどうあれ責任は取れません(笑)
役者似顔絵などもこの系譜に繋がるのでしょうか? どのカテゴリーに入るのかちょっと分かりませんでした。
←古川師胤「立姿美人図」
*岩佐又兵衛: 伊丹・有岡城主荒木村重の子
父・村重の織田信長への謀反により一族処刑
されるも乳母に育てられ母方の岩佐を名乗り、
江戸で絵師として活躍という数奇な運命を辿る。
2.狩野派・土佐派からの流れ
(この部分、メモも記憶も少なくて…)長谷川等伯の弟子たちの中に野に下り、浮世絵師となった者がいたそうです。
3.奈良絵本等の物語絵本からの流れ
伊勢物語などの有名なエピソードを当時の風俗で描く「見立絵」
4.木版による文学書の挿図から
版画で大量に作出することで、絵を手元に置きたいという庶民の要望に応えることが出来るようになりました。 江戸二大悪所と呼ばれる(吉原)遊郭や(歌舞伎)芝居小屋での遊楽の往き帰りに、求めることが多かったようです。
これで、一先ず講演会録はお終いにします。 またふと記憶回路が繋がったら、こっそり改定するかもしれません。
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ラベル:浮世絵
学生の頃、傘に、ここに載せてくださった浮世絵とそっくりの絵
を描いたことがありました。もちろんへたですが、
今でも実家の和室に飾ってあります。
展覧会レポも楽しみです。ありがとう。
版画と肉筆画では
絵師の意気込みや
考え方もそれぞれ
違ったなど大変
興味深いお話でした。
海外の絵画に大きな影響を与えたと聞くのですが、残念でなりません。
今日は朝から里山へ出かけており、帰路もかなり歩いたので
少々へばりました〜 記事の続きと展覧会のレポ、そして
ありがたい皆さまのコメントへのお返事は、明日元気回復
してからということで、どうかお許し下さいませ〜<( _ _ )>
小さな和傘に浮世絵の柄を描かれたのでしょうか?
素敵な趣向!ご実家でも大事にされて、きっと素晴らしい作
なのでしょうね〜拝見してみたいです♪
展覧会レポも他のことも書き残して置きたいことは山ほど
あるのですが〜時間の使い方を工夫して頑張りますね〜☆
Takさんもみえていらっしゃるだろうなぁ…と思いつつ、
「Takさんどこですか〜?」
と声を上げる訳にもいかず、あの熱心にメモをとられている
お方がTakさんかしら〜?などと色々と想像しておりした^^
私など、浮世絵には漠然としたイメージしか持っておらず、
目から鱗のお話がいっぱいでした。 写真なんて無い時代の
方が、ずっと美への感受性が豊かだったなぁと思います。
そう言いつつ、写真の恩恵にどっぷり浸かってますが…^^;
貴重な芸術の流出は寂しいことですが、却って海外での方が
大切にされ保存状態が良いことが多く、里帰り品の美しさに
目を見張ります。 よくぞ日本文化の親善大使を務めてくれた
と思い、ご苦労様、お帰りなさいと声を掛けてやりたいです。
また瀬戸物を包んでいた紙が浮世絵だったなんていう話も
聞きますと、それを捨てずに目を留めたヨーロッパの人々の
審美眼にも感謝ですよね☆
時代ごとの「美人」像の顔や体躯、またポーズの違い、
それに着物の柄や着方、髪の結い方など、絵としての楽しみ
の他に当時の風俗や好みを知ることが出来るのが、また
浮世絵の楽しさの一つだと思います。 表具も本当に色々で
面白かったです。 図版には表具が載ってないのが残念!
展覧会への搬入・搬出など裏のお仕事も大変ですよね。
お疲れ様です。なかなか京都まで行くことが出来なくて、
ももりさんやお弟子さん方の作品を生で拝見できず残念です。
中学2年の時、担任が美術の先生でもあり、大きな「写楽」の絵を皆で描いて、
パズルを作りました。
美術の時間は嫌いではありませんでしたが、あんなに楽しかった時間は
ありません。色使いも構図も生徒に任せ、嬉しそうに私達を見守っていて
下さった先生の笑顔と供に、大切な記憶として留まっています-☆
ヨーロッパを始め、海外の人々にとって、日本の浮世絵は、とても美しく、
なんともエキゾチックだったろうな〜ぁ!と想像します¥^^¥
やっと先程、続きを書き終わりました〜^^;
私も体育祭の時に飾る大パネルで、写楽の鬼二を描きました!
飛翔さんはどの絵を描かれたのでしょう? また共通項が
増えましたね〜☆
この頃の着付けはゆるゆるひらひらと何だか楽そうですね〜
柄も色袷も大胆で、江戸の園芸ブームを反映するような様々な
植物の絵など、当時の流行が分かって面白いです。
詳しくは展覧会レポに書く予定…なのですが〜^^;
まるで天女のようです。
これも「くの字」効果でしょうか?
この時代の着物のまとい方を見ると今の着物は窮屈すぎる
かなぁ…という気もします。 浮世絵美人は主に遊里の女性
なのでこうなのかしら? 次のレポの中にある北斎の美人
の襟元にはフリル、そして重ね着風でもあり、今風?先取り?
あの頃の方が、ずっとずっとお洒落だったかもしれませんね!
「くの字」鏡の前でやってみました…
結果、とても人には見せられません凹
動植物のアウトドアー派の山桜さんと思っておりました。
この度は、浮世絵の美なのですね。
でもよく考えてみると、花の美もひとの美しさの美も
自然の美の本質は同じもの。納得で〜す(笑)
花の美も 浮世絵の美も 虹のよう
>あれ〜新参者で最近しか知りませんが・・・、
今読むと少し可笑しいですよね〜
新参者はこのブログに最近接した私のことなのです。
言葉足らずでしたね〜
申し訳ありません。お許しあれ〜。(笑)
先のコメント、確かに拝見し、お返事も書いた積りに
なっておりました〜申し訳ありません〜(><;)
>あれ〜新参者で最近しか知りませんが・・・、
ちゃんと仰る意味が分りましたよ〜^^v
美術大好きなんですよ♪ 見たもの全部はとても書けて
いませんが、時々美術展レポなども書いてま〜す♪
右サイドバーの「カテゴリ」から[美術館など]をクリック
して頂ければリストアップされますので、お時間があれば、どうぞ〜^^
山桜さん、こんばんは!
美しい浮世絵が沢山、拝見できて幸せです。
ありがとうございます^^。
和室の傘をあらためて久しぶりにみてきました。
がっかりしました。^^;
そっくりなんて書いてしまって浮世絵師たちの苦笑いで
責められる様な気分になってしまいました。すみません!
自由に傘に絵を描いて良いという課題だったので、
中学で浮世絵を真似して描いたのは私だけだったので
物珍しくて飾られ、良き想い出として心に残っていたのですが
現実は厳しいですね。
その内また余裕ができたらチャレンジしてみたいと思います。
(トップページに一瞬、アップしておきましたので、薄目細目
でサラッとご覧いただけたら幸いです。笑)
わぁ〜嬉しい! ありがとうございます♪
えっ、一瞬なんですか…未だ間に合うでしょうか!?
早速拝見しに参りますね〜=3