2007年07月22日

風林火山

  風  其疾如風  その疾(はや)きこと風の如く   
  林  其徐如林  その徐(しず)かなること林の如く
  火  侵掠如火  侵掠(しんりゃく)すること火の如く
  山  不動如山  動かざること山の如し


 <!WARNING! スミマセン…熱気&長文にご注意あれ!>  

 今年のNHK大河ドラマ「風林火山」http://www3.nhk.or.jp/taiga/は傑作です! ここ何年も、若者狙い?女性狙い?そんな大河ドラマが続いていて、見たり見なかったりしておりましたが、この「風林火山」は見逃せません。 録画してでも見たい。 録画したものを又何度でも見直したい。

 主人公・山本勘助(内野聖陽)は隻眼で片足を引きずるという風体の無骨な主人公。 武田信虎に恨みを抱きつつも次第にその嫡男・晴信/後の信玄(市川亀治郎)の器に魅かれ、諸国を遍歴しながら身に付け磨き上げた兵法によって、武田家の軍師に取り立てられ、晴信の天下取りに向けて邁進します。 一方自らの軍略で征服した諏訪の姫、由布姫(柴本幸/柴俊夫&真野響子の娘)にも無償の愛を注ぎ、晴信と由布姫の子・勝頼を跡継ぎにと画策…この辺りの展開は余り好きではないのですが、勝頼の子役の「かんしゅけ!」は可愛いです。

 先週の28話と今週の29話は、勘助の活躍こそあまりありませんでしたが、2大重臣の死、晴信の転換期と、特に見ごたえがありました。

 晴信は負け知らずの戦の中で次第に負けを怖れ始め、多くの家臣領民の犠牲を強いる可能性の高い村上義清(永島敏行)との戦へと、はやります。 板垣信方(千葉真一/実父に厭われ父の愛情を受けずに育った晴信の父親代わり・武田家譜代の重臣)は、死を覚悟の上、人の情けを失い始めた晴信を身を挺して諌める為、影武者を仕立て先陣を切って乗り込み、最後の最後まで晴信を思いつつ壮絶な戦いの末、大往生します。

 先に同じ様に武田家を憂い、味方に裏切りを疑われながらも単身村上義清の首を討ちに乗り込みながら寸での処で失敗、追手に全身を矢で射られて討ち死にした甘利虎定(竜雷太)と、「直ぐに会おう!」と約束を交わした冥土で再び会うことが出来たでしょうか…。 嗚呼、この両雄の名前には、晴信の実父・信虎の名が一文字ずつ入っているのですね…。 (よく見直してみたら、他の重臣達にも信か虎、どちらかが入ってるようです。^^;)

 板垣を演じた千葉真一さん、正に渾身の演技! 板垣と共に燃え尽き、これをもってアクションスター「千葉真一」としては引退を決意されたそうです。 圧倒的素晴らしさでした。 最早、板垣信方と千葉真一は一心同体です。 

 戦に向う前、板垣が晴信に戦勝の祈りを込めて揮毫を促したのが、

  南無諏方南宮法性上下大明神

それを目にして満足そうな板垣の、
 「これで、お館さまの勝ちでござ〜る!!」
慈愛に満ちた明るく力強い声と顔が脳裏に焼き付いて消えません。

 この晴信の祈願を記した旗を仰いだ時、嘗て勘助の策謀により心ならずも武田の支配下となった諏訪勢も、遂に晴信を心より信ずるようになりました。 諏訪城代でもあった板垣の、晴信、そして領民への大きな遺産でした。

 板垣・甘利を失い、尚も生き残った最長老の諸角(もろずみ)虎定(加藤武)が、一身に天からの雨を受けながら、
「それがしは恥ずかしき限りっ…不覚をとり申した〜わぁあ〜〜っ!!」
と絶叫する場面も心に残る名シーンでした。 
死に場所は(歴史上)知ってるけれど、爺、長生きしてね。

 また、戦の後、晴信の正室・三条夫人が晴信にかけた言葉も私の心には、印象強く響きました。

 「如何に堅固な城に籠もろうと、そこにお立ちあそばすお前様にお情けが見えなければ、六十余衆?の大名の軍勢に取り囲まれるより わたくしは心細い思いにございます。」

 そんな力の入った場面が続くかと思えば、「新選組!」では最後の将軍・徳川慶喜を腰の引けた好演で魅せ、今は消臭プラグのCMの「殿」として一部でカルト的人気を誇る(今井朋彦演じる)小笠原長時が、またしてもゆる〜い殿キャラで笑わせてくれます。
 「煽るな煽るな!」(笑)
(殿、敗走時の鬼太郎チャンチャンコは何処から〜?? 爆笑)
そして、高遠頼継(上杉?さん)の脇役とも思えぬ妙に力の入った演技も壺。
 「おのれおのれおのれおのれおのれおのれぇ〜〜・・・!」(笑)

 すみません、最後はしんみりと…

 父の如く慕う板垣を失った悲しみの中、晴信は母・大井夫人の諌めや三条夫人の言葉も受け、

 「わしは生涯、我が甲斐に城を建てぬ」 と亡き板垣に誓い、

   人は城 人は石垣 人は堀 情けは味方 仇は敵なり

と絞り出すように歌を詠みます。 すると、どこからともなく板垣が着物にも兜にも愛用し身に付けていた勝虫(蜻蛉)がついと現われ、板垣の幻と変化し・・・

 『若、良き歌にござりまするのぉ!』 

 そう言いながら、にこやかに舞い踊ります。(その扇にも勝虫!)
晴信は、嗚咽しながら…

 「板垣、そちはわしを褒めてくれるか?
  わしは、わしは、そちを褒めぬ。
  何故死んだ! 何故死んだ! 何故死んだ! 板垣〜っ!」

 晴信の慟哭を耳にしながら夕日を仰ぐ晴信の眼前を、あの勝虫が飛び去ります。 大恩人でもあり大きな支えでもあった板垣を失った勘助の悲しみも同じでしたが、泣いている時間はありません。 来週は、ガックン演じる長尾景虎(上杉謙信)が〜楽しみです♪(当方、新潟の血が濃厚ゆえ〜)


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ラベル:NHK
posted by 山桜 at 00:00| Comment(23) | TrackBack(0) | 映画・ドラマ・芸能 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
山桜さん、判ります。

歴史に「もし」は禁句ですが、信玄があと3年も
長生きをしていたら、日本はまったく変わってい
たでしょう。勿論、信長、秀吉、家康はなく王政
強く出てきたかも知れません。

反対に短期間で戦乱の国になり、他国に滅亡され
た可能性も否定は出来ませんが。

魅力的な人物です 武田信玄。
Posted by 鎌倉とんぼ at 2007年07月24日 20:14
こちらのページ、未読でした! 嬉しい〜〜!
ご案内いただけ幸せです!

圧巻!ですよね! 大好きです風林火山。

今からもうひと仕事するので(珍しいでしょ。笑)
のちほどゆっくり拝読します。
ありがとう! 山桜さん!! 

Posted by まり at 2007年07月24日 21:33

先程は失礼いたしました。つい興奮してしまい。笑
この熱い心をどう表現したら良いのか歯がゆい日々でしたが
こうして山桜さんにブログに書いていただけてこの行き所の
なかった想いが落ちつきました。ありがとうございます。
最初から最後の1行まで全て、代弁していただいた様にその
まま、私が書き留めたかったことであります。
どうしても、台詞を残しておきたくて、台本が手に入らない
か探していました。笑

ところで
>(当方、新潟の血が濃厚ゆえ〜)
私も同じです。秋田で驚き今度は新潟。
嬉しい不思議です。

風林火山、これから先も本当に、楽しみですね。
Posted by まり at 2007年07月24日 22:29
山桜さん、こんにちは。

風林火山がおきに召したようですね。

女性で風鈴崋山がお好きとは?間違い、風林火山。偏見かな?
ビックリしました。

Posted by 武蔵野閑人 at 2007年07月24日 23:24
何だかんだで見てない私・・・
手に汗握る演技・・・見逃しちゃった(TT)

でも、さくらんの勢いのある文章を
見てるだけでも迫力あるね!←えっ?
Posted by やゆよ at 2007年07月25日 00:15
歴史ドラマも、山桜さんのように、熱く真剣に見てもらったら作者やNHKも大喜びですよ。勘助が一番喜んでいるでしょう。

大河は好きなのですが、正直に言うと今回の風林火山は見たり見なかったりなんです。先週は内容や迫真の演技に見入りましたが…。
やゆよさんの仰る通り、山桜さんの迫力ある解説に引き込まれた感じです。
Posted by 糺ノ森人 at 2007年07月25日 01:39
昨夜ようやくまとめて見ました。

見る前に読まなくてよかったです。

感想は全く同感です。年齢的な共感もあるのでしょうが・・・。
Posted by 吉野山人 at 2007年07月25日 11:13
風林火山。見ております。
私も大好きです。特にこの2話は圧巻でした。
昔の侍魂は素晴しいですよね〜
それに比べて、今の日本を動かす人間の程度の低いこと。
これでは駄目ですよね〜150年前のひとより数段劣っております。
私には、その様に映りました〜。
Posted by 青い流れ星 at 2007年07月25日 11:48
◆鎌倉とんぼさん、こんにちは!
 最初の頃は晴信(信玄)がイメージと違う上に、台詞が
舞台役者臭の強い大仰さで苦手だったのですが、どんどん
良くなって…というか、あれもこれも演技の内だったのでしょうね。
 台本の良さに加えて、熱演が熱演を呼び、演者間の渾身の競い
合い?も火花が散るようで見応えがあります。 今では全体に及ぶ
台詞の明瞭さが嬉しいくらいです。

 惜しい人は、何故そう早く亡くなってしまうのでしょう…?
良い所で寿命が尽きたからこそ、後のちまで人気者であり
続けられるということもありますけれど^^
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 14:31
◆まりさん、こんにちは!
 ご賛同戴けて、とても嬉しいです!ありがとうございます♪
 もうこの1週間あまり、心の内に湧き上がる感動・熱き
思いを書きたくても書けなくて、悶々としており・・・
とうとう抑え切れずに寸隙を縫って書いてしまいました〜
スッキリ〜 \(^O^)/ その上、まりさんにそのように
喜んで戴けたなんて、思い切った「甲斐」がありました〜♪

 まりさんも新潟県人の血が流れていらっしゃるのですか?
私は雪国の遺伝子を打ち消す程の南国の血も混じっている
らしく、七難アラワル〜ですが・・・(。。;)
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 14:43
◆武蔵野閑人さん、こんにちは!
 小さい頃から父と一緒に大河ドラマは見続けて来たので、
歴史物語が自然に好きになりました^^; 中井貴一の
信玄も最初ナンダカナァ…でしたが、名作となりましたね。
信玄公は演じて貰えるのを喜んで役者にのりうつられる
のでしょうか〜? 
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 14:47
◆やゆよん、こんにちは!
 どうも見逃しやすい時間帯なのよね〜 私もウッカリする
ことがあるので、もう最初から衛星放送版の録画予約をして
おくんだ〜♪ 勿論8時からの本放送も見て、録画もまた
見るんだけどねっ☆⌒(*^∇゜)v

 もし興味があれば、再放送が土曜日の確かお昼過ぎの
1時頃からあるよん^^
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 14:51
◆糺の森人さん、こんにちは!
 見たり見なかったりだと、この物語の本当の面白さが
分らず勿体無いのですよ〜 何しろきちんとした伏線が
随所に張られてきており、それが見事に生かされていくので、
これまでの過程を把握してないと・・・

 家人は多忙でなかなか続けて見ることが叶わず、とうとう
ハグレテしまいました。 いくら私が力説しても馬の耳に…
代わりに娘を引き込んでいます^^ 娘の好きな谷原さんや
佐々木さん、ガックン(Gackt)、そしてあの殿などイケメン?
揃いですから〜♪♪ 
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 14:58
◆吉野山人さん、こんにちは!
 ず〜〜っと怒涛の忙しさでしたものね・・・お疲れ様でした!
ネタバレを読まれる前に28,29話と続けてご覧になれて
よかったです〜アブナイ・・・台無しにしてしまう所でした!
実は私、甘利を疑っておりました。 今までも晴信を快く
思っていない伏線が張り巡らされてましたし…見事に騙され
てしまい、なんともイージーなファンです凹

>年齢的な共感…

 えっと、登場人物の誰と山人さんの年齢的共感??
も、もしかして、わたくしと…? 光栄です☆⌒(*^∇゜)v
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 15:06
◆青い流れ星さん、こんにちは!
 そうですね〜昔は「人を育てる」ことに重きがおかれて
いましたから、「人としてとるべき道」「己の心に恥ない道」
「人生哲学」が貫かれていたように思います。

 それなればこそ「自分の命を生かす死に方」もできようと
言うものです。 どこぞの自殺とは大違いです…
Posted by 山桜 at 2007年07月25日 15:12
少し前、吉野山中を彷徨ったときに“村上義光”の墓に参りました。
調べてみると「風林火山」に登場している村上氏と関係があるのだとか・・・
私も毎週見ています。
http://syutozennin.blog.ocn.ne.jp/e411y/2007/07/post_3395.html
Posted by 酒徒善人 at 2007年07月25日 22:25
◆酒徒善人さん、おはようございます!
 毎日ブログを拝読させて戴いておりますのに、あまりコメント
を残せずにいて申し訳ありません。 この吉野の村上義光の
墓前兜のお話は面白く、村上義清との繋がりを調べてコメントを
書いた積りでしたが、残っていません! 又ポカをやって
しまったようですね…凹

 義光・義隆親子は親王をお守りして亡くなっていて、義清は
弟の流れのよう? 途中でよく分からなくなってしまって…
義光(てる)と義日(てる)は同一人物ですか?
Posted by 山桜 at 2007年07月26日 09:48
 よくぞ書いて下さいました-☆
この名調子!!山桜さんは、素敵な講談師♪お茶の扇子も活躍ですね。
な〜んちゃって^^。私も久々に見応えのある大河ドラマに満足です!
 最初は余りピンと来ずに、連休明け位から、友人の熱意に押され見て、
すっかりはまってしまいました。
 最初は、歌舞伎役者のオーバーとも取れる言い回しに違和感を感じた事もあり
ましたが、どうしてどうして素晴らしい説得力。あの訴える力は並々ならぬものが
ありますね。どの役者さんも素晴らしい。あの柴2世は、ご両親の良いとこ取り!
目に力があり、由布姫にピッタリ!!仰る様に伏線が生きていますね-☆
登場人物は、皆覚悟の決まった生き方で、脚色ドラマと言えども史実。
 いま、週一のこのドラマで、心を立て直しています*^^*
Posted by 飛翔 at 2007年07月26日 14:00
>まりさんも新潟県人の血が流れていらっしゃるのですか?

はい。私の父に^^。

ご丁寧なレスポンス、ありがとうございます♪
Posted by まり at 2007年07月26日 21:38
◆飛翔さん、こちらにもありがとうございます!
 よかった〜飛翔さんも「風林火山」ファンなのですね〜!
内野聖陽さんでは、山本勘助には細くて綺麗過ぎると思い
ましたが、今では勝頼に「爺」と呼ばれる程の貫禄に…
晴信もお髭を貯えてからは、風体も整って声も低くどっしり
して来て、大分落ち着きましたね。(見馴れたこともある?)
何しろ、最初の頃はもう晴信が喋り出す度に、娘と一緒に
大爆笑〜!で、ドラマの筋もなにも台無しでしたから^^;

 由布姫、硬質・理知的な美しさでいいですよね!
最近の女の子に欠けているものを持っていて好きです。
でも殿方にはちょっと不人気のようで、瑠美姫の方が人気??
どの女性もそれぞれ素晴らしくて、男性陣に負けていない所
も気持がいいです。 はぁ〜次回も楽しみだわ〜♪
Posted by 山桜 at 2007年07月27日 12:02
◆まりさん、こんにちは!
 父上様が新潟で、旦那様が秋田、育った土地も近くなんて
本当に不思議なご縁ですよね〜 ネットってどうしてこう
いうことが多いのでしょう。 似たもの同士を呼び合う力が
倍増されるのかな〜嬉しいです☆
Posted by 山桜 at 2007年07月27日 12:07
山桜さんがそうおっしゃるのなら、もう少し、性根を入れて見なくっちゃ。ダラダラ見ていましたから。でも、ちょっと演技がお芝居向きで、オーバーなような気がしてひいてしまいます。私の好きなのは、由布姫・・・ゾッコンです。
 私が感動したのは、井上靖「天目山の雲」武田勝頼の最後をえがいています。でも、もうちょっと忘れてしまっていますが・・・
Posted by 山口ももり at 2007年07月28日 09:37
◆ももりさん、こちらにもありがとうございます!
 場にあったお芝居ってありますよね〜 私も流石に
あの晴信の演技には途中脱落しそうになりました。

 市川亀治郎さんは歌舞伎の舞台も務めながらの大河収録。
人間業ではないと言われる程のハードスケジュールの中でも、歌舞伎
では一人4,5役はざらなので、役柄の切り替えなどは問題ないのだ
そうです。 そう言い切る自信、あの演技にも表れているようですね。

 人に何と言われようととうとう彼のやり方を貫き通し、遂には
周りの方が彼の演技に引き込まれてテンションが上がっており、
彼の演技が浮かなくなってきたような…脱力系の男子が増える中、
熱血男っぷりが新鮮で元気を貰えています。

 そんな暑苦しい(笑)画面の中、氷の演技の由布姫が清涼剤。
女性には人気なのに、男性にはどうも不評のようですが…。
見かけの艶っぽさに惑わされていて、ああいう女性の魅力が
分らないようではいけませんよね〜フフ(^ー^* )
Posted by 山桜 at 2007年07月28日 11:08
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