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朝の連続テレビ小説「らんまん」で「トガクシソウ」をめぐり、不穏な動きが出てきましたね。
ところで、
「トガクシソウって?」
調べると「トガクシショウマ」の別名でした。
トガクシショウマは、ずっ〜と憧れて続け、今年の6月、色々なご縁が重なって初めて綺麗に咲いている様子に出会えたばかりでした。(ドラマの中の教授たちも花の標本を探しあぐねていますね。)出会えた年にドラマで話題にもなるという不思議なご縁に感謝して、もう一度、今年の写真を集めてご紹介しますね。
トガクシショウマ/トガクシソウ
(戸隠升麻/ 戸隠草)
Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô
メギ科トガクシショウマ属
2023.06.06 尾瀬
雪解け水から生まれた妖精・・・長い花柄の先で俯き咲く可憐な姿。いつまでも、ずっと見ていたい・・・
メギ科の花の意匠を凝らした造形の美に惚れ惚れします。
蕾の基部に見える小さな萼片3枚は開花時には落ち、残りの萼片6枚が花びらに見える部分として残ります。
本当の花弁は真ん中の雌しべ・雄しべを囲み小さな釣鐘状に丸を描いている部分。
俯いて咲いているので、はっきり撮しづらくて・・・下のスマホ写真なら、ご覧になれますでしょうか。
日本固有種で、本州北部・中部の多雪地帯、落葉樹の林床を好み、適地であれば地下茎を延ばして群生するようですが、人目につく場所では盗掘に遭ってしまうのか、なかなか自然界ではお目にかかれません。どうか彼女たちが大好きな場所で、この先もずっと咲いていけますように・・・。
盗掘するような業者は、売れてお金になれば後は枯れようがどうしようがお構いなしです。私達に出来る事は、目を光らせる守ること、そして決して「買わないこと!」です。
全姿は高さ50cm程、意外に大きくしっかりしていて逞しい!
左は、最初にみつけて気落ちした花の終わった株。
「葉だけでも出会えて良かった!」
と思い直していたら、その後に、上の写真の花々に出会えて、一瞬、言葉を失いアワアワしました。
右は、花が落ちた後の若い果実。白く熟すのだそうです。
「破門草事件」
「らんまん」でこの後描かれる?かもしれないので、先を知りたくない方は読まないで下さい。)
東京大学教授 本草学者 伊藤圭介(1803-1901)の孫、
伊藤篤太郎(1865-1941)が、この事件の主人公。
東京大学植物学教室に出入りを許された在野の植物学者。
1875年 叔父の伊藤謙が戸隠山でトガクシソウを採取、
小石川植物園に植栽。
1883年 伊藤篤太郎、露の植物学者マキシモヴィッチに
標本を送る。
1884年 東大教授 矢田部良吉(1851-1899)戸隠山で本種採取
小石川植物園に植栽。
1886年 マキシモヴィッチ、ロシアの学術誌
「サンクト・ペテルブルク帝国科学院生物学会雑誌」に
Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim.
メギ科ミヤオソウ属の一種として発表。
(T.Itô ex Maxim.は、伊藤の代理でマキシモが登録の意)
1887年 矢田部はマキシモヴィッチに標本を送り、鑑定を依頼。
1888年 3月 マキシモヴィッチは、
「本種をメギ科の新属である考えYatabea japonica Maxim.
の学名をつけたいので、正式発表前に花の標本を送れ」
と回答。
この動きを察知した伊藤は、叔父が最初にみつけ、自分が学名をつけた植物の属名が新属名として矢田部教授に献名されることに怒り焦る。
1888年 10月 伊藤は、英の植物学雑誌
Journal of Botany, British and Foreign 誌に、
新属 Ranzania T.Itô を提唱、
Podophyllum japonicum T.Itô ex Maxim. (1887) を当属に移し、
新組合せ名 Ranzania japonica (T.Itô ex Maxim.) T.Itô (1888)
として発表。
マキシモヴィッチによる Yatabea japonica Maxim.は、伊藤の発表の後塵を拝した為に無効。矢田部教授は怒り、伊藤篤太郎を植物学教室の出入りを禁止した。このことにより、トガクシソウは「破門草」という不穏な別名を持ってしまった。
属名 のRanzania は、伊藤が尊敬する江戸時代の本草学者 小野蘭山に献名されたもの。
伊藤篤太郎は、「日本で初めて学名をつけた人物」
トガクシソウは、「日本固有種で、日本人により学名を付けられた最初の植物」
牧野富太郎は、「日本で2番目(1889年)に学名Theligonum japonica Okubo et Makinoをヤマトグサにつけた人物」
(学名の中にあるOkuboは、あのオオクボさんかな?)
ヤマトグサは、「日本固有種で、初めて日本人の手によって記載され、日本の学術雑誌に発表された植物」
マルバマンネングサは、「マキシモビッチにより、牧野に献名され、初めて日本人の名がつき発表された植物」
ということでしょうか。間違っていたらご教示ください。
尚、「らんまん」では、それぞれのモデルの人物名は、
伊藤篤太郎→伊藤孝光
牧野富太郎→槙野万太郎
矢田部教授→田邊教授
となっています。
学名に用いられている Ito、Makino は、役名でも変えられなかった訳ですね。一方、Yatabeが無効となってしまったので、矢田部は田邊教授に・・・
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お寿恵さんは、本当に良くあのような研究一筋の人を支えてくれました。奥様だけでなく、周りの沢山の人が支えてくれたということは、確かな才能と努力と実力に加えて、人間としての魅力があったのでしょうね。とても人なつこい笑顔をされてますもの。