梅雨の或る日、花屋の店先で寂しげに売れ残っている姫睡蓮の鉢に
後ろ髪を引かれた。弱弱しそうな小さな葉が、雨に打たれて水面(みなも)に
揺れていた。品種名もない黄色の姫睡蓮。在来種の未草の白い花を思わせる。
「今年は無理でも来年咲けばいいかな」
それぐらいの気持ちだった。 ザーザー振りの雨の中、大きな買い物袋の他に
ぶら下がった透明のビニール袋。水をたっぷり含んだポット鉢のズシリとした
手応えに軽い後悔の念・・・。
梅雨の間それは、地道に羊の足型の様な葉を増やしてはいた。が、どうせ
咲きはしないと、花への期待は薄かった。それが、何時の間にやら葉芽とは
明らかに違う花芽をもたげ、あっという間に膨らんで、今日、唐突に開花した。
台風一過の朝11:00の不意打ちだった。
真夏の太陽が映りこんだ様なまばゆい花。
睡蓮鉢の前に屈み込み、光を集めて咲きゆく花を眺めながら、ふと考えた。
睡蓮の和名は未(ひつじ)草。
『未の刻(午後2時頃)に咲くので未草と呼ばれる』とは良く知られた由来だが、
実際に開花したのは午前11時頃・・・。
いつも驚きの自然観察眼を見せてくれる我が古(いにしえ)のご先祖様たちが、
この様ないい加減な命名をされるだろうか? 上記の由来を掲載している方達も
一様に『しかし実際には午前中から開花する。』と但し書きを付けてはいるが、
この由来に疑問を呈してはいない。
本日の観察では、午前11時頃から開花し始め、午後1時頃「満開」となった。
(「トリビアの種」の一分咲き〜八分咲き〜満開 の評価を思い浮かべてしまう^^;)
未の刻とは、「午後2時頃」ではなく、午後1時から3時位までではなかったか?
従って『未の刻頃満開に咲き揃うので・・・』なら少々納得かも。
一方「睡蓮」=睡(ねむ)る蓮、こちらは成る程!で、もう午後4時には固く
花びらを閉じ、寸分乱れずきちんとガクも閉じ、まるきり朝見たままの蕾の状態に
なって眠ってしまった。
私には、この花の特徴としてこちらの早々と眠る生態の方が非常に印象的だった。
古(いにしえ)の人々はどうだったのだろうか?
漢字は後から適当なものを当てたとして、「ひつじ」の意味を考えてみる。
a.眠る=ひとみをとじる=ひとじ=ひつじ
b.日の翳り(閉じ)と花の閉じをかけて=(日)ひ・(閉じ)とじ=ひつじ
私はb.の日の翳りと共に閉じる「日閉じ=ひつじ草」が気に入った。
敢えて「羊」ではなくて「未」の字を当てている所からして、未の刻に盛りを迎える、
@『午後1時から3時頃時満開説』 が有力かと思われるが、
天地(あめつち)と共に暮らしたい私としては
A『お日様の翳りと共に眠る草説』 を世に問うてみたい気持ちである。
2005年07月27日
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こんな発想をなさるなんて。
今まで眠っていた私の頭の中のある部分がぐわんと、
大きなスプーンでひっくりがえされたみたいな衝撃
を受けました。
お気に入りリンク先の「自然観察の部屋」のカラスウリ掲示板でも・・・
↓
323. 木枯らす瓜? 山桜 2005/07/14 (木) 09:59
あまりにも茂って巻き付いている木を覆っていると、
ふと、カラスウリは「枯らす瓜」かと思ったりして。
そうなると、黄カラスウリは、「木枯らす瓜」?
すみません、ただの言葉遊びの類です^^;
あんまり芽が出ないもので・・・笑
楽しいページですね、素晴らしいデス。
ご来臨戴きまして光栄、恐縮ですm(_ _)m