2008年02月27日

石垣りん「かなしみ」

       「かなしみ」  

                 石垣 りん

   私は六十五歳です。

   このあいだ転んで

   右の手首を骨折しました。

   なおっても元のようにはならないと

   病院で言われ

   腕をさすって泣きました。

   『お父さん

    お母さん

    ごめんなさい』


   二人ともとっくに死んでいませんが

   二人にもらった体です。

   いまも私はこどもです。

   おばあさんではありません。


     *     *     *



 甘く感傷的な恋の詩より、

 傷ついて病んで血を流す叫びより

 今は年を重ねた人の

 亡き父母への

 詫びのかなしみが胸に迫る。


 お父さん、お母さん

 二人が笑うと

 とても嬉しい。

 私は二人のこどもだから。 
 


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posted by 山桜 at 00:00| Comment(7) | TrackBack(0) | 俳句・和歌・詩 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日、鹿児島・知覧の特攻平和会館を見学してきました。
残された沢山の手紙を読みましたが、
写真の顔をじっと見ることができませんでした・・・
Posted by 酒徒善人 at 2008年02月27日 18:44
お父さん お母さん 
僕を生んでくれてありがとう。
何とか真面目に六十五歳まで
平穏に生きてこれたのですが
これからは分からない
何が出来るとも言えないのですが
これで いいのだろうか?と
誰かの叫び声が聞こえるのです
私もやはりお二人と同じ血なのだ
お父さん お母さん ごめんなさい
Posted by 青い流れ星 at 2008年02月27日 20:30
染み入ることばだけれど、
こんなに素直にいえたら
なんてステキだろう。。。o(⌒0⌒)o

深く感じ入る詩ですね。。。
Posted by やゆよ at 2008年02月27日 22:12
りんりんと心に沁みる石垣りん 奮太

石垣りん様の詩
いづれも
はつとさせらるるものあり
いとすばらし

頓首
Posted by Akahito〜友部丹人 at 2008年02月27日 22:35
りんさんは、ウチのオキヨさんと同じ年。
時に両親の夢を見て泣いてしまう日もあるのだそうです。

親が子を思う気持ちは深く
子が親を思う気持ちは切ないほど一途。
(そうでないことが当たり前になってはいけませんよね)

Posted by 爽子 at 2008年02月28日 09:04
◆皆様へ
 石垣りんさんの詩への思いを寄せて下さり、
ありがとうございます。 <( _ _ )>

 皆様それぞれの思いは、そっと、そのままに…。 

 今回、私のコメントは差し控えたいと思います。
 (胸がいっぱいで書けなくなってしまって…すみません。)
Posted by 山桜 at 2008年02月28日 13:35
◆ご来訪くださった皆さまへ

 今から13年も前に書いたものが、人気記事のトップに来ていて、今更乍ら、生き続ける「石垣りん」さんの詩の力に圧倒されています。

 この間に、私も父を失いました。長く膝を患っている今の私を見て、父はとても心配していることでしょう。

 お父さん、お母さん、ごめんなさい。

 生きている母の、そして今も見守っていてくれる父の笑顔を見るために、この病を跳ね飛ばしてやりたい。
Posted by 山桜 at 2021年05月28日 10:03
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