2005年11月16日
「伊万里・京焼展」
「色絵雉香炉」 野々村仁清 京焼
上野の改札で既に美術館の券を買う人の列…公園を歩きながら流れを読むと、
一番人気はマティス・ピカソ等印象派を揃えた「プーシキン美術館展」次いで「北斎展」。
あまりの人の多さにプーシキンは諦めた。北斎もお昼時には少しは空くだろうと、
同じ国立博物館内、建物自体が重要文化財「表慶館」で開催中の「伊万里・京焼展」
を先に観ることにした。
平日に、かくも着飾った大勢のご夫人方が上野に押し寄せるのは日常なのだろうか?
若しかしたら、紀宮様のご結婚のお祝いの流れだったのかもしれない。そういえば、
多くの人がとても幸せそうな表情をされていたのが印象的だった。
国内はもとより海外輸出までも視野に入れた量産の道を行った伊万里、一つ一つの
作品に作者の心技の粋を込めた京焼。それぞれの道でともに日本の焼物の世界を
高めあってきたその二つの流れを、比較しながら鑑賞することが出来た。
「染付吹墨月兎図皿」(左・伊万里)、吹墨でほぼ水平に傾いた三日月とその下で
跳ねる兎が描かれている。このように左側が大きく欠けた月では兎の姿は見ることが
できない。月の兎が降りてきて地上で踊っている、と見做して描いたのかな
と空想してみる。若し、描いた人がそんなことを絵に込めていたら何だか嬉しい。
「色絵輪繋文三足大皿」(右・鍋島)、溜息が出るほど完成されたデザイン。
空間の白、組み合わされた文様がきりりと美しい。レプリカでいいから欲しい!
文様自体のデザインでもその組み合せの妙にしても、日本は世界一だと思う。
尾形光琳の弟、尾形乾山の「色絵紅葉図透彫反鉢」(京焼) 外側の絵が前景、
内側の絵が後景となり、内外が一体となって立体的に一本の鮮やかな紅葉の木を
浮かび上がらせている。勝手に「飛び出す絵本様式」と命名。
左は「色絵月梅図茶壺」(仁清・京焼) 月梅図、というのに正面からでは
月と梅を一緒に見ることは出来ない。茶壷である故に、茶を出し入れする時には
上から覗き込む。右は、その茶壷を上から見た所である。
実際に用いる人のみが、その本当の隠された美を見ることが出来るとは、
お茶道具らしい演出だ。
銀で描かれた満月は時代を経て黒色を帯びているが、当時は銀色に輝く月と紅梅の
対比がさぞ見事であったろう。しかし黒い月もなかなか渋みがある。
あえて磨いたり復元したりしないのも、その為なのだろうか?
「銹絵水仙文茶碗」 同じ仁清でも、素朴でどこかはかなげな美しさ。
この白い茶碗にお茶が点てられた時、雪の下で春を待つ緑の息吹が感じられそうだ。
一番上の「色絵雉香炉」は、言わずと知れた「国宝」。
美術の教科書にも載っていたものが目前にあった。 震えた。 正に釘づけになった。
正面から見ると、雉は微かに首を傾げている。 動いた? そう思える命があった。
雌雉が石川県立美術館でこの雄雉の帰りを待っている。
<参照>
東京国立博物館: http://www.tnm.go.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00
石川県立美術館: http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/index_j.html
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キジ
Excerpt: 最近家の近くでよくキジを見掛けます。多分禁猟区(休猟区)になっているからだろう。画像のキジが今年生まれた若鶏なのかどうかは不明。餌を探しているのでしょうか。良く、オス、メス、一緒のところを見掛けるが、..
Weblog: E 日記 七
Tracked: 2005-11-23 19:58
「華麗なる伊万里、雅の京焼展」
Excerpt: 東京国立博物館で4日まで開催していた 「華麗なる伊万里、雅の京焼」展に行って来ました。 中島誠之助さんがこんな文章お書きになっています。 コイマリという発音は、なぜか人の心にやさしい..
Weblog: 弐代目・青い日記帳
Tracked: 2005-12-27 11:04
今日帰宅する予定です★
こちらにごめんね♪
またコメント書きにくるね♪
学びの旅、長かったね〜、お疲れ様。
帰途気をつけてね。電車などでのうたた寝は
風邪のもとだよ。寝るときはマスクつけるといいよん
って、もう帰っちゃったかな?
コメントなんて後でいいから無理しないで、
ゆっくり休んでね〜(^0^)/
私は、陶器が好きですが、詳しくも無いです。
でも、この品々の美しさは解ります。
私は、洋食器ですが、ロイヤルコペンハーゲンの
クリスマスプレートの収集が趣味だったこともあります。
今は、家族の記念プレートだけ残しております。
亡き父母の分も。
>雌雉が石川県立美術館でこの雄雉の帰りを待っている。
なんだか、切ないような・・・
写真をみてたらどうしても本物がみたくなって
今日もまた行って来ちゃいました。上野。
凄い人でしたね〜。もうひたすら雉のみに
ターゲットを絞り、他は断念。
丁度国立博物館の庭園が公開されていたのでちょっと
覗いてきました。建築も素晴らしいなぁと
思ったら吉村順三展のポスターが、、ついでに
芸大美術館にも足を運び、吉村順三展に、
やはり空間が大事だよなぁ。と
思い、和風の部屋作りに思いをはせながら、、
帰宅して撃沈したのでした。
来年はもう少し和を取り入れたいです。
私もただただ好きなだけ^^
改めてこうして写真だけを並べてみても
つくづく美しい。私は戴けるものなら絶対に
ダイヤモンドより珠玉の焼物がいいです⌒☆
雌雉は振り返って雄の方を見ているかのような姿なんですよ〜。
石川県立美術館のURLを本文に追加したのでクリックして見てください♪
おおっ、もう一度上野行ってきたんだね!
ここを読んで一人でも見に行く気になってくれたなんて
すっごく嬉しいよ〜(*^▽^*)
やっぱり写真では一面からしか分からないものね。
平べったいお皿にみえて、裏には面白い足が3つついてたり、
月梅図茶壷のように上からは別の表情見せたり…
吉村順三、いいなぁ! 教えてくれてありがとう!
空間とか間とか、日本人にとってはとても大切な感覚で
身体に染み込んでいる感じかな。
日本のアニメにもそれがあるし、そこがディズニーとの違いだよね〜
ブログに行ってらっしゃいの書き込みありがとうね!
お蔭様で無事に帰宅しましたよん☆
仁清さんの作品をこれだけ一度に
拝見できるなんていいよねo(⌒▽⌒)o
常設でちょこちょこ観るのとは印象が違う!
個人的には柿右衛門様式ではなくて
柿右衛門さんのものも観たかったな♪←よくばり
だって仁清さんの作品に圧倒させられちゃうんだもん(笑)
初代の柿右衛門さんの作品はどこに行けば沢山
拝見できるの? 今ネットで探したけど、あんまり
見つからなかったのよ…( ; ; )
でも柿右衛門さんが個人の作家としてちゃんとしたのは
多分12代以降くらいみたいよ。
有田の博物館に11代くらいからは書いてあるみたいで、
それ以前は様式とあって、それを特定?するのは
鑑定人さんって事なのかな?
私自身があんまり見たことないから、
様式っていわれるとモヤモヤするのよね(ははは)
柿色を再現した柿右衛門さんって言うお名前と
その様式は何となくイメージにあるけど、私も
良く知らなくて…^^;
この機会にちゃんと調べてみようかな(*^∇゜)v
また楽しみな宿題が増えちゃった♪
振り返って見ているのですよね。
わ〜凄いです。
こんな一級の美術品に
そう言う、生きているものの
魂が吹き込まれたようで、
なんとも言えないですね。
離れ離れだと、何だかそんな気がしてきますよね〜^^
どちらにしても、あま〜い愛情ではなくて、どこか毅然とした
高貴な愛の形?のようで、踏み込んではいけないような
近寄りがたさも感じてしまいます(^▽^;)
この雉には奥さん?もいるんですか?
ブログって(ネット)為になるな〜!!
美しいものを見て美しいと思える心と、
時間を持ちたいものですね。
本日は沢山のコメントありがとうございました。
雌の雉の方は、石川県立美術館のURLをクリックして
ご覧になってみて下さい。
ネットの中のお父さんとは好きなものが沢山一致していて、
いつもHP拝見するのが楽しみです♪
http://taka10.fc2web.com/niki/togeiniki/togeinikiFrameset.htm
(ブログでないので、ダイレクト飛びませんが、↑の17.6.14の記事に感想を書いています。)
「お父さん」と似たHPです。どうぞよろしく。
私は逆に「水仙茶碗」のように素朴な仁清を初めて拝見しました。
最初に見た作品の印象は強いものですね。
また同じ好みの方の輪が広がって嬉しいです^^
さく陶さんのサイトも楽しく拝見させて戴いております♪
TB頂いておきながら
お返事が遅くなってしまって申し訳ないです。
「色絵輪繋文三足大皿」(鍋島)のデザイン性の高さはあらためて驚かされます。
この展覧会、北斎展と同時期に開催されなければ
かなり話題になったでしょうね。。。
素晴らしい展覧会でした。
わざわざTBのお返事恐縮です(^^;)
お出掛けはお仕事と思っていましたが素敵なバカンスだったんですね♪
北斎展やプーシキン展に人が流れたお陰で、素晴らしい展示の割りに
ゆったりと見られたのは幸いでした^^
ブログを始めたお陰で、見てきた展覧会の記録を残せ、
また同好の方たちと感想を言い合えると言う思っても見なかった
素敵な場所を得ることが出来ました。嬉しいです。
Takさんの素晴らしいサイト、まだまだ全貌をつかんでいませんが、
ゆっくり拝見させて頂きたいです。
美術に興味のある方、必見ですよ!是非上のコメントの
Takさんのお名前をクリック、またはTBを辿ってご覧になってみて下さい。