何といっても、日本にあれば国宝級の至宝が明治維新や大震災や大恐慌の中、異国へ脱出し保存状態よく現在まで生き延び里帰りが叶ったのも、審美眼に優れたフェノロサやビゲローや岡倉天心のお蔭で、人がその生きた時代に成すべき使命・ご縁の連鎖=運命の奇跡を考えました。
先ず、至宝の恩人、ビゲローの肖像(伝小林永濯筆)や岡倉覚三(天心)像(平櫛田中作)がお出迎え。
天心先生のお顔って、拝見するたびに誰かに似てる…と思うのですが、誰かがビシッと浮かんでこなくてモヤっとします。 今回、遊行七恵さんのブログで「現在のジュリー説」に、『確かに〜(笑)』とハタと膝を打ちましたが私の中の「あの人」ではないのです。 誰だったかな〜??
パンフ掲載の注目作品が目白押しの中、一番最初に強く心に留まったのは、まるで昨日の「金環食」が仏の姿へと昇華・化身したかのような「一字金輪像」でした。 画像は「文化遺産オンライン」でみつけましたので、興味のある方は下のURLをクリックし、リンク先ページへ飛んでご覧ください。
【一字金輪像:鎌倉時代】「文化遺産オンライン」より
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=38241&imageNum=1
光の中に浮かぶ透明感のある美しい仏様です。 日食というと、何か不吉な予兆のように感じられてぞわぞわしていた心が、この仏様の像を拝見できたことですうっと和らぎ救われました。 ぜひ、画像を大きくしてご覧ください。

【普賢延命菩薩像:平安時代 12世紀中頃 】
病を消し生命力を増すという菩薩さまへ…切なる祈りを込めて。
三頭の象さんが片っ端から病根を引き抜いてくれそうな…。
【吉備大臣入唐(にっとう)絵巻:平安時代 12世紀後半】
http://www.boston-nippon.jp/highlight/02.html
(↑ 展覧会HPのこのページで、柱の陰からこそこそ覗き見やら、お空をひとっ飛びやらのオモシロシーンを垣間見られます。 本当に日本人ってオモシロ好き・笑い好きですよね〜♪)
遣唐使・吉備真備が入唐直後に幽閉された楼閣で、以前唐で客死し今は幽鬼となった阿倍仲麻呂に会い、その霊力の助けを得て、唐人の出す難問に立ち向かっていくという物語絵巻。 大河ドラマ「平清盛」で活躍中、山桜贔屓の松田翔太さん演ずる後白河法皇が制作させた絵巻コレクションの一つだそうです。
<若狭国松永庄(現在の福井県小浜市)の新八幡宮⇒酒井家に伝来⇒大正12年(1923)売りに出されるが、大震災や大恐慌で9年間買い手つかず⇒昭和7年(1932)ボストン美術館所蔵>

【絵巻平治物語・三条殿夜討巻:鎌倉時代 13世紀後半】
こちらはその後白河法皇が絡んだ「保元の乱」の三年後、源平争乱の幕開けとなった「平治の乱(1159)」での藤原信頼・源義朝軍による後白河法皇拉致と三条殿焼打の様子。 その約100年後の制作でもとは15巻近い大作が、現在は3巻と切断された色紙状態の数葉のみ現存。
<三河国西端(しばた 現在の愛知県碧南市)の本多家に伝来?⇒美術市場に放出⇒フェノロサの手を経てボストン美術館の所蔵>
武士の雄叫び、刀と刀のぶつかり、馬の嘶き、炎のメラメラまで聞こえてくるような活写絵巻です。 吉備真備の絵巻のような妄想力満載ものとは違い、とても想像では描けそうにありません。

【屏風松島図:尾形光琳 江戸時代 18世紀後半】
静謐に浮かぶ松島の島々と逆巻く荒波。 光琳らしく図案化された中にもなお生き生きとした躍動感があります。 津波もこのように絵の中に封じ込められたら、少しは大人しくしていてくれるでしょうか。

【鸚鵡図:伊藤若冲 江戸時代 18世紀後半】
はっきりとした色合いや精緻に描き込まれた若冲の絵は苦手だけれど、この初期の作品は絞り込まれた構図で、鮮やかな止まり木?に真っ白な鸚鵡が清楚に浮かび上がり、撫で撫でしてヒマワリの種でもやりたくなる愛らしさです。

【虎渓三笑図屏風:曽我蕭白 18世紀後半】
廬山に隠棲した東晋の僧・慧遠(えおん)を尋ねた陶淵明と陸修静。 三人で話に夢中になっているうちに、慧遠が渡らぬと決めていた俗世への架け橋をうっかり越えてしまったことに気付いて大笑している場面だそうで、見ているこちらまで思わず噴出してワハハな気持ちになってしまいます(笑)

【雲竜図(襖絵):曽我蕭白 18世紀後半】
襖から剥がされた状態でボストン美術館に渡り、このたび修復され公開が叶った作品。 本来は頭と尾の間に胴体部分があったらしい。 それが欠けた為に却って迫力が増しているように思えるのはミロのヴィーナス的効果でしょうか。 蕭白の描くものには、それぞれの個性や思いが表情として良く表されているようで、この龍もどこか自分の持つ破壊的な力を持て余し困惑しているようにも見えました。

【模様小袖白綸子地松葉梅唐草竹輪:江戸時代 18世紀】
他の作品にも言えますが、恐らくボストンに渡らないでいたら、このような美しさでは現存していなかったことでしょう。 日本の美を愛し完璧に保存していてくれた彼の国の人々に感謝です。